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第12講 投資戦略3 指標の有効的な使い方

目次

日経平均の意味するものは

銘柄選択をして、「さあ、買おう」という最後の意思決定はロウソク足のチャート(以後、チャートと呼ぶ)などでタイミングを計ることで、見送りや買いなどの決断を下すことになる。チャートについては次の13講から簡単に説明することになるが、それ以外のチャートや指標、指数についても売り買いなどの判断には重要な役割をしている。そうした指標、指数について基礎的な知識をもっていることも投資成果を上げるためには欠かせない。いくつかの指標、指数について説明をしていく。

 ただ、挙げていくそれらの指標、指数にあまり、こだわりすぎて、それらを主体にした投資戦略を立てることは危険である。日経平均の上げ下げを気にする余り、個別の業績の変化を無視して売り買いを見送るようなことはすベきではない。総合的な事柄を判断して決めるのである。業績や材料、時の流れを重要視することによって個別銘柄を選ぶのである。日経平均の上げ下げ見通しもその判断に含まれるのであって、日経平均だけで売りや買いを見るものではない。

最近では日経平均連動型の投資信託が普及したことで、業績の良い銘柄も悪い銘柄も日経平均と連動するケースが目立ってきている。そういう投資信託は無責任な運用をすることを語ったようなもので、それならば、投資信託の運用者は必要なくなる。誰でも運用ができるわけで、投資信託を買う必要もない。自分で日経平均に採用されている銘柄で時価総額の大きい銘柄を数銘柄選んで売ったり買ったりすればこと足りる。最近になって、こうした連動型には批判が集まっており、評判も良くない。やはり、企業業績の良し悪しを判断することによって株価は上下するものでなくては不自然といえるだろう。

余談だったが、指標だけで銘柄選択は左右されるものであってはいけない。チャートについても同じことが言える。それだけで株が儲かるということを豪語するチャーチストがいるが、これは詭弁以外の何ものでもない。「ケイセン屋、線を引き引き、足をだし」という川柳が昔から言われているとおりである。業績などのファンダメンタルズをあくまでに銘柄選びの絶対的な基準を外してはならない。そういうことを頭に入れながら、指標や指数の特色などを参考にしてチャートをみて売り買いを決めることを知ることである。

 まず、日経平均について説明する。正式には日経平均225種平均と呼ぶ。一部上場の225種類の銘柄の株価を対象に指数化したものである。一般に、株価が高いとか安いなどと言われるのはこの指数をみて言う。歴史的に取引所が開設されて以来の指数のため、連続性があるために、使用されている。しかし、2000年4月に大幅な入れ替えが行われ、それまでの動きとそれ以後の動きが大変化を起こし、連続性が途切れてしまった。すなわち、水産、鉱業、建設、繊維、石油、窯業、非鉄などの銘柄を大幅に削って、電機、自動車、小売、銀行、通信、サービスなどの業種を多く採用するという大改革を敢行した。低位株を減らして、値嵩株を多く入れたことになる。特に、電機は19銘柄から28銘柄に大幅に増加させた。これは、前年にIT相場を演じて、大幅に上昇した銘柄を多く採用したことになり、そのあと、下落の一途を辿ったものばかりであり、これ以前の日経平均よりも下落ピッチが早まるという皮肉な結果を招いた。

TDK    17200円→3810円

アドテスト  27940円→3710円

太陽誘電   9100円→ 875円

アルプス   3500円→ 1154円

セコム    22150円→2655円

以上は新規採用された銘柄の99年~00年の高値と03年の安値である。わずか、3年で5分の1や10分の1にまで下落している。一方の削除された銘柄は青木建設など倒産銘柄があるものの、そのような極端な下落を示した銘柄は少ない。それまで、日経平均は年に数銘柄の入れ替えをしていただけに止まり、自然な連続性を維持していた。したがって、大幅な入れ替え以後、ハイテク銘柄の当落時には大きく反応する特色をもつ指数に変わってしまった。

 日経平均が大きく下落したといっても、必ずしも全体の相場が下落したとはいえなくなり、指数としては正しく市場の動きを示すものではない。むしろ、TOPIX(東証株価指数)や単純平均が全体の相場の流れを良くあらわすものとして注目を浴びるようになっている。TOPIⅩは時価総額の加重平均を加味して表したもので単純平均は全銘柄の単純平均。この2つの指標を加えて相場をみることによって、全体の相場は正しくみることができる。

 例えば、日経平均が高くてTOPIXが小幅高に止まった場合、値嵩株が高くて大型株はそれほど買われていないことを意味する。逆に、TOPIXが高くて日経平均が安い場合には、金融株、大型株などが高くて、ハイテク銘柄は物色されていないことを意味する。また、単純平均が高くて、日経平均やTOPIXが安い場合には日経平均に採用されていない小型株や材料株の人気が高いことを意味する。このように、それぞれの指標のもつ意味を理解してみることによって、何が今の相場で買われているのかが分かる。

 今年の3つの指標をみると相場の展開を良く表している。

 日経平均、TOPIXともにほぼ同じ動きをしている。これは金融株、大型株、ハイテク銘柄などのメジャークラスの銘柄が年初から軒並み国内外の投資家から売り対象になったために、同じ展開になったものと思われる。それに対して、単純平均は02年12月24日を底にして、戻り歩調をみせている。再度、3月17日に底入れの後、一貫して上昇を続けている。これは新税制を前にタンス株券を個人投資家が昨年内に売却をした後、新年から買いに転じたためである。そして、イラク戦争前に手仕舞い売りをした後、再度、買いに転じた。いわゆる低位小型株が全体の相場低迷を尻目に買われる相場が年初以来続いていたことを表している。

 しかし、5月20日からハイテク株が急伸しはじめて、追随するように大型株も上値を追い始めると日経平均、TOPIXの上昇ピッチが早まる。5月20日から6月9日までの上昇率は日経平均11.5%、TOPIX8.9%、単純平均5.0%となっている。明らかにハイテク株が買われて、大型株が追随する展開になって、その他の銘柄は一服ないしは上げピッチが鈍ったことを表している。

 このように、指標の特色をよくつかんで、何が買われて、何が売られているのかを把握するためにはこの3つの指標は注意深く見る必要がある。

 また、NT倍率というものがある。これは日経平均をTOPIXで割ったものである。6月10日のNT倍率は10.11倍になっている。これは倍率が開くことによって、日経平均の加熱度を計る目安になっている。倍率が高くなれば実態よりも株価は買われすぎていることを表し、低いと日経平均が割安に放置されているとの判断になる。基準となる倍率は相場の時々によって、変化するため、12倍だからどうだとか、14倍だからどうだとはハッキリいえない。ただ、先物相場の世界ではこれをひとつの物差しとして割高、割安の判断にしているため、重要な指標ではある。個人投資家にとってはそれほど意識してみることもない。

PER、PBRは重要な指標か

しばしば、PER(レシオ)が何倍、PBRが低いなどという。現在の株価をみて、割安なのか、割高なのかを判断する指標である。PERとは株価収益率。一株当たり最終利益(EPS)に対して株価は何倍買われているのかを表したもの。PBRは純資産倍率と呼ばれる。最近では株主資本倍率と言われる。企業のもつ資産から負債を差し引いた純資産を発行株数で割ったものが1株純資産。それを株価で割ったものが純資産倍率である。一般に解散価値と呼ばれるもので、最低株価価値になる。1倍で解散価値と等しく、それ以下だと株価は大幅に割安となる。下値のメドに使われるのだが、最近の株価では1倍以下の銘柄が非常に多く、割安ではなくなっている。その原因は表面の資産状況では純資産がどれだけあるのか分からないことが理由だ。例えば、棚卸資産を正しく評価しているのか、不動産の評価は本当は含み損になっているのではないか、などデフレ不況下では資産の本当の中身に疑問が持たれている。それが、純資産1倍以下でも買われない理由である。中には0.2倍とか、0.3倍などという異常な低水準の銘柄もごろごろころがっている。その意味では現在の相場ではこの指標を基準に銘柄を選ぶことはできないことになる。経済状況が好転して本当の中身が正しくみられる状態になるまではPBRは参考にする程度でよい。

 一方、PERはどうだろうか。株価は企業の収益力に応じて決まっていくものであるが、それは過去、つまり、実績の収益ではなく、これからの一年の収益見通しや未来の収益見通しについて評価されるものである。したがって、前期の決算で1株利益が30円あっても、今期の見通しが10円になるのであれば、株価は売られる。逆に、前期が10円で今期見通しが30円であれば大きく買われる。将来、株主にどれくらい利益配分されるかという期待が高い銘柄ほど高く株価は買われるのである。

 一部市場の平均PERは24倍(12月4日現在)になっている。前期、今期ともに1株利益が30円あって、株価が300円ならば、PERが10倍になる。平均PERよりも低いことになる。そうすると割安だから、買い余地があるということになるはずだ。日経の投資相談の欄ではしばしばそれを理由に割安で買い余地があるという判断をする。

これは、一見、納得できるような判断であるが、正しくない。一般的にいつも安定した高収益会社のPERは低い。万年、割安株という表現が使われる。

次の成長商品がない場合にはいくらPERが低くても買えないのである。この辺りを勘違いしないで投資判断をすることだ。あくまでも、近未来の収益見通しを株価は評価していくのである。

前期が赤字、もしくは1株利益が10円と低いが、今期には30円にも跳ね上がる見通しにある企業は同じだろうか。株価が200円だとする。前期ではPERは20倍、今期見通しでは6倍台になっている。しかも、大幅な増益を見込んでいる。

また、現在の収益が低くても、収益の拡大が大幅に見込まれる製品や技術を開発した銘柄は現状のPERが高くても、平均PERよりもはるかに高く買われる場合がある。そういう時にはPERにこだわらないで、その製品の価値で判断することである。過去の低収益はその際、無視される。

つまり、新製品の開発に成功して来期から収益が大幅にでることが分れば、将来の利益と比較してPERは判断されるものである。現状の収益が低くて、PERが平均より高くてその際、無視してもよい。特に、万年低PERに甘んじていた銘柄が次の有力新製品を開発した場合には相当高い水準まで買われ、高PERまで評価されることがある。

このように、PERは現在の状態で論じるのではなく、将来の収益がどうかということで高い、安いという判断をすることである。

その他の指標も参考程度に

その他の指標として、よく使われるものとして、新値3本足、サイコロジカルライン、移動平均線、ストキャスティク、一目均衡表などが一般化されて、パソコンによる株価の売り買いのタイミングの判断材料として重宝がられている。これらの指標は右肩上がりの上昇傾向の場合には比較的参考になるが、保ち合い圏に入ったり、下落相場が続いたりすると判断を狂わせることもしばしば起きる。参考にはなりにくい。そのため、宗教信者のようにのめりこまないことが肝心である。また、これらの指標を常に、全部参考にするのではなく、ひとつかふたつに決めて徹底的に参考にすることが望ましい。そうすることによって、その指標のクセなどが理解できるようになり、買い信号がでても逆に売られる「だまし」などについて対応できるようになる。

筆者はこのような指標はみる程度で買いや売りの決定にはあまりとらわれない。すなわち、買いのサインが出る前までに判断を決めなければ意味がないと思っているためである。大抵、買いサインが出た時には、一旦目先的な天井を形成することが多く、しばらく利食いは難しい結果になる。また、このような指標で投資成果が上がるのであれば、大手証券会社、大手ファンド各社などは損失などでるはずがない。個人の小さなパソコンとは比較にならないコンピューターを持っており、複雑な投資指標などもいとも簡単に算出できる。それでも、投資成果が上げられずに苦戦するのは指標というものがいかに頼りにならないかを示すものであろう。先ほども言ったように「ケイセン屋、線を引き引き足を出し」の川柳の通りなのである。

指標やこれから説明に入るチャートは決して株価の先行きを決定的に導いていくものではなく、あくまでも過去のデーターをもとに流れを表して、それを元にして今後もそうなるであろうということを予想するだけのものである。株価は過去と同じ動きを決してしない。上昇がしばらく続けば、今度は保ち合いが続いたり、下落に転じたりして、それまでの動きとは全くのうごきになるケースがほとんどである。それに、今後の予想についてはチャートではなくて、個々の企業の業績や製品の動向などが決めることと良く理解することを何回も繰り返して言うが、忘れてはならない。

さて、指標の説明に入る前にやかましくこれまでの投資戦略の基本について言った。それではこれらの指標について説明をしてみる。

新値3本足とは株価の大引け値が高値を更新するたびに行を変えて記録していく。高値が止まっても抜くまでは記録しない。また、反落した場合には3本前の高値を割り込んだ場合には陰転となって、安値を更新するたびに記録していく。そして、3本前の安値を上回った時には陽転となって、また、高値を更新していけば記録していく。これを新値3本足という。

(図8)。これは天井とか大底などを見る場合に役立つとされているが、しばしば陽転とおもったら、すぐに陰転したりする、いわゆる「だまし」が多い。これをカバーするために、5本足とか10本足などを記録することがあるが、あまり、長いと結局は売りチャンス、や買いチャンスを失うことになりかねない。個別銘柄の投資には余り役に立たない。日経平均などの指標に応用する程度。

サイコロジカルラインは直近の12日間をとって、値上がり日は白(勝ち)、値下がり日は黒(負け)というようにして、12日間で白がいくつ、クロがいくつかとみて、相場の過熱感をみるための指標。過熱感のあるときには10勝2敗などになり、陰の極には1勝11敗というようになる。9勝以上を加熱、3勝以下を安値圏というようにみる。

相場の格言では上昇の芽は総弱気の中で生まれ、迷い続きの中でつぼみとなり、安心の時に花が咲き、総強気の時には枯れていくと言われる。その心理をサイコロジカルラインは短期的に表しており、ひとつの参考になる。

移動平均線とストキャステックは一目均衡表で集約できるので、一目均衡表で説明する。(図9)この表は①、26日間の高値安値の中値を表す基準線、②、9日間の高値安値の中値を表す転換線、③、終値を26日間遅らせた遅行スパン、④基準線と転換線の中値を26日先行させた先行スパン上限、⑤過去52日間の日々高値安値の中値を26日先行させた抵抗帯下限、⑥、④と⑤の間のゾーンの抵抗帯、⑦、毎日の実線の⑦つで構成される。

この表によって、買い転換は3つの原則で表される。転換線が基準線を上に抜く、26日遅行スパンが実線を上に抜く、株価が抵抗帯を突破する。

比較的的中率が高いことで投資家の間では信者が多い。上昇相場での判断材料では役に立つ。

このような指標をうまく使いこなすことによって、投資成果を上手に挙げて頂きたい。

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