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第4講 投資資金はどうする

2020 3/28
目次

全投資額で買うな

株式投資はどのくらいの資金を用意すればよいのか?時々聞かれる。現在、その気になれば1万円未満で買える銘柄はあります。例えば、ホクシンなどという銘柄は140円前後と低位にあるにもかかわらず、100株単位で売買できるので、1万4000円で買える。しかし、財務状況は累積損98億円を抱え、1株当たりの純資産は78円に止まっている。もちろん、無配である。2004年3月期は回復を見込んでいるが、この実態では時価の水準でも割高といえるだろう。1万円台で買えるものの、推奨はなかなかできない。ただ、1万円台でも買おうと思えば買えるため、株式投資もパチンコ資金でできることになる。

株式投資を始めるために「最低、これだけの資金は必要だ」というような額はないが、筆者は現在の日経平均1万円台の相場水準にあっても、100万円の金額は用意してほしい。それは次のような理由による。

単純平均株価は10月14日現在で410円になっている。一単位1000株とすれば、一銘柄の購入資金は40万円以上必要になる。100万円ならば、2000株買えることになる。ひとつの銘柄を買う場合には一度に資金全部を買うことは大きな冒険になる恐れがあるために、全力投球は勧められる投資方法ではないと筆者は考える。そりゃ、買うと同時に急騰でもすれば、最高に効率の良い投資になるが、なかなかそんなタイミングの良い投資チャンスはめったにあるものではない。むしろ、買ったとたんに下落するという不愉快な経験の方が多いようだ。銘柄の選択に絶対の自信があったとしても、反落はある。その時のために、30~50%程度の資金を

常に用意しておかなければならない。いわゆるナンピン買いか、あるいは、別の魅力のある銘柄を買う場合に備えるためだが、信用取引の場合には担保資金以外にそのくらいの資金を用意していなければ、損金処理が発生した場合にはたちまち、次に買いたい銘柄があっても買えなくなってしまう。したがって、100万円の投資額ならば、常に、30万円以上は現金を置いておくことである。金額が1億円あってもその方針は同じである。

その余裕の資金の使い方は中でも、買った銘柄が順調に上昇し、利食いに大きく接近したが、今、少し待っているときに、別の有望銘柄が見つかった時にそれを買う資金に利用することが望ましい。

それはこうだ。資金100万円をもち、A銘柄を300円で2000株を買ったとする。60万円の投資額になる。目標値を350円に置いていたところ、340円になった。ところが、以前から注目していた250円というB銘柄の動きが良くなってきた。そういう時に1000株を買う資金にする。こういう場合は高度な判断力が要求されるので、A銘柄は目標値にこだわらず、利食いして乗り換える作戦をとることがよい。相場全体が戻り基調にあるか、全体が上昇局面のときに有効な作戦。A銘柄を売却した時点で更に、1000株を追加買いすることもよい。この作戦はタイミングを失うことなく次々と銘柄を選択し参加できるメリットがある。ただし、銘柄の中身にもよる。相場の流れにのる材料や収益見通しの良い銘柄などであれば良いが仕手株のような内容のない銘柄がたまたま上昇した場合にはそういう行動をとってはならない。

また、逆に、A銘柄が買い値よりも30円ほど下落して、投げるには惜しい水準にある時にB銘柄が見つかった場合にも応用ができるが、あまり、好ましい応用とはいえない。A銘柄が下落状態にあるときには、それを一旦処分してから買うのが筋であるし、それが安全な投資方法である。

資金に余裕を残しておくことはどういう展開にもついていけることになり、結果として、冷静な判断を常に維持しながら作戦を敢行できるわけだ。一気に全額を投資すると利食いの時にはよいが、買い値よりも少し下がった位置で売却するにも意外と損失が大きくなり、損切りや見切りをするにもなかなか踏ん切りが付かない。B銘柄を見つけても買うに買えない。そうこうしているうちにB銘柄がスルスルと上がりだし、A銘柄が一段安になるという最悪のケースになる。「あの時に乗り換えておけばよかった」と悔やむ結果になる。この経験をもつ投資家はほぼ全員だろう。資金の余裕は決断もすばやくできて、チャンスを的確にものにできるという大きなメリットがある。100%上がることが分かっているのならば、一発で全額投資は大成功する。しかし、どんなに上がるといわれても100%はないのであり、投資額を常に、70%以内で留めて、リスクを軽減することを忘れない投資を心がけることである。

自分の資金に合わせるな

株式投資を始める際に、所有資金をまず、用意する。当たり前のことだが、すでに、説明したように金額はいくらでも良い。それに応じた投資作戦を展開すれば良い。しかし、「100万円の投資資金だから100円の銘柄を選んでたくさん買おう」という発想はよくない。自分の資金を基準にした銘柄探しは感心できない。銘柄の中身をあくまで吟味して、それに資金を合わせて投資することが絶対的な基本姿勢である。自分の資金に合わせて銘柄を探すことは本末転倒である。

昔、自分の選んだ銘柄が予想通りにならないことに腹を立てて、「相場が間違っている」と叫んだ人もいた。相場はどんな形で値がついても常に正しいのである。一時的に行き過ぎた場合には必ず株価は修正軌道し、なるほどという株価形成をするものなのである。あくまでも「相場がおかしい」のではなく、「あんたがおかしい」のである。したがって、自分の思った展開になったと感じた時点でその銘柄から降りることを考えることにことたことがない。常に、安全を考えるという基本姿勢に従順になっておれば、決して大きな失敗や塩漬けなどという事態には陥らないで済むのである。そうした点を常に、気つけて相場に臨んでほしいものだ。

だから、100万円の投資家は100円銘柄ばかり探すことをしないで、500円でも、1000円でも動く相場の中から選んで買うことが一番なのである。100株や1000株しか買えなくても良いのである。たまたま、100円以下の銘柄が人気を集めている時には、それこそ、少ない資金で株を買おうと決めた人には資金に合った銘柄を買ってもうまく流れに乗ることができる。しかし、市場の人気の方向が値がさ株に向いたときには、低位株の方がたくさん買えると思ってその中から銘柄を選んで投資するといつまで経っても自分の買った低位株が動かない。

100万円で投資するならば、例え、1000円の銘柄が人気の流れに乗る場合には躊躇なく、最低単位であっても1000円の銘柄を選択して買うことが望ましい。最近では100株単位で買える値がさ株も多く、投資金額の全額を投入せずに、700株(70万円)程度までに止めて、資金に余裕をもった買い方ができるようになった。

株式市場は自分の都合に合わせて決して動いてくれない。そんなことが可能ならば、誰も損する人はいない。あくまでも、株価はあらゆる経済現象を織り込みながら形成されていくのである。都合に合わせて投資を続けていると、投資チャンスに乗れないばかりか、いつまで経っても投資成果が上がらず、ぼやいてばかりいなければならず、株式投資を続けることで、ストレスを溜めるばかりになってしまうのである。そして、ついに、先ほど指摘したように「株価が間違っている」などと自分の間違いを株価の責任に転嫁するわけのわからないことを言うようになる。

株価は人為的に操作しても、一時的には思い通りになる。しかし、結果的には万人が「そうだろう」と思う株価で落ち着く。仕手株などはその典型だ。

バブル前後に、街の金融業が証券融資に進出するブームがあった。株券を担保にした融資をする場合には時価の70%が通常の取引きであるが、仕手筋にそれをうまく利用されて街の金融業が何件かつぶれることがあった。つまりこうだ。本来、100円の実力しかない銘柄を仕手筋は無理やり1000円まで買いあがる。そして、1000円で株価を維持させる。大量にもった株券を市場で売ろうとしても、平均価格700円で売却することは不可能になる。そこで、時価の70%で融資する金融業に持ち込む。彼らは市場での出来高を見ずに自動的に融資する。チェックするのはその銘柄の財務内容だけだ。株価が支えられて維持していることはチェックしない。まんまと仕手筋は株券を資金に変えることに成功する。その後、株価は200円くらいまで急落し、金融屋は大損をする。

その当時、筆者はある金融業者から持ち込まれた銘柄はどのくらいの掛け目で融資すればよいのかとの目効き役を頼まれたことがある。あまり、実態を重視しすぎて、2掛けなどというと持ち込んだ仕手筋は他の業者にいってしまうので、そこそこの掛け目を出さないといけない。3.5掛けなどという微妙な掛け目を提示して始めて商売が成り立つ。結構骨の折れる役目だったが、その金融屋はなんとかつぶれないで証券金融業を営むことができた。

仕手筋が全盛期の誠備の加藤氏が本州製紙を5000円まで放り上げる途中では証券金融が大流行で掛け目も過熱気味。一時は100%の掛け目を出すところもあった。しかし、仕手株が崩れだすと一気に金融屋はつぶされたものだ。

このように、人為的につくられた株価は維持できるものでもなく、必ず、株価は現状を表す水準で落ち着くものだ。あくまでも、株価形成はその時代を反映した環境の中でそれに関連した刺激材料をもつ銘柄だけが、注目を集めて動くもので、人為的な要因でいくら持ち上げても限界がある。したがって、自分の都合に合わせた投資作戦はよい結果を得られないことになる。投資金額も例外でなく、銘柄に合わせて投資をすることを心がけるべきである。

全財産を投入しない

株式投資には資金は限定されないと説明したが、すべての自分の資産を投入してはいけない。例えば、預貯金を1000万円もっているとしよう。その金額すべてを投資に回してはいけないという意味である。投資額は緊急の資金に必要ないと考えられる金額でなくてはならない。投資しはじめて、すぐに、資金が必要になったりして変動させると集中した投資ができなくなる。なるべく、最初に決めた資金で運用することが望ましい。

昔から財産の3分割と欧州では言われている。現金、金、金融商品をそれぞれ3分の1に分けるというものだ。日本ならば、現金、不動産、金融商品というところだ。それに従うと1000万円ならば、300万円を株式投資など金融商品に当てることが理想になる。金融商品でも債券、株式に分けられる。債券を100万円に当てると株式投資の分は200万円になる。全財産の5分の1に当たる部分が株式投資になる。しかし、「自分は300万円しかない。5分の1ならば60万円になってしまう。その程度しか投資できないのか?」という疑問をもたれそうだが、金額が大きくなればなるほど5分の1に近づけることが望ましいわけで、現金所有が1000万円以下であれば、3分の1程度で投資をしても問題はない。要するに必要な資金は投資資金にしないで、いつでも自由な資金を投資に当てることでよい。

だが、こういう例はいけない。住宅資金のために500万円を置いていたが、株式投資で増やしてから住宅購入資金に当てようという場合。これは絶対にしてはいけない。株式投資は以前から言っているようにリスクを伴う投資行動であり、大切な住宅資金を株式投資に回すなどはもってのほかである。住宅以外でも嫁入りのために貯めた資金、入学準備に必要な資金などもそれに当たる。嫁入りの資金などを株式に投入して、失敗でもしようものなら、一生娘さんから恨まれる。絶対にだめな資金である。このように何か買う目的で貯めた資金を株式投資に回すことはご法度である。あくまでも、フリーな資金を用意することを心がけることである。そうした自由な資金を確保して投資に臨むことになるのだが、第3講で説明したように計画を必ず立てて、その時の感情を抑えて冷静に相場を判断する姿勢で投資作戦を進めることを頭に置くことを常々、忘れてはならない。

しかし、そうはいうものの、人間は感情の動物であり、そのように心がけていても、熱くなってしまうものだ。特に、自分が徹底的に調べて銘柄に惚れ込んでしまった場合だ。成長性があって、時流にも乗っている。しかし、株価がまだ割安だと思って投資作戦を断行したにもかかわらず、買っても買っても下落続ける。そのうちに、投資金額の限度まで買ってしまった。つまり、決めた投資資金が一杯になった。しかし、株価がまだ底入れしない。もっと買いたい。そんな時、貯金を下ろしてでも、更に、買おうという衝動に掻き立てられる。資金のお代わりをしようというのだが、そうした資金を投入し株式投資をした場合には取り返しがつかない。追加資金も基本的には禁じ手である。最初に投資した資金を守らなければ、ドンドン資金が膨らんでいき、損金が膨らみだすと必要な資金がなくなり、生活に支障を起こす最悪の事態を起こしかねない。特に、退職金などはもってのほかである。仕事を持っている場合ならば、収入も入り、損金も少しづつ修復可能だが、退職金を失うと年金以外に収入源がなく、生活が危うくなる。そんなリスクは絶対に避けなければならない。投資資金を追加してはならない理由である。

惚れた銘柄を追っかけて資金が底を尽いた場合には損切りをしてでも、建て直しを図ることである。特に、信用取引で追いかけた場合には一回目の追証を待つまでもなく、方針を変更する。つまり、敗北宣言をして身軽にすることである。

株式投資は男が女(逆も)を追いかけることに似ている。惚れた方が負けである。トコトン女性に貢いだあげくに金がなくなり、金の切れ目が縁の切れ目で、ハイさようならと捨てられるのがオチである。いくら良いとおもった銘柄でも、冷静に計画性をもって、見切りと利食いの価格や期間を決めて、株価がその目標に到達すればちゅうちょなく処理をすることである
 意地を張って、資金をどんどんつぎ込むことなどは決してしてはならない。筆者の友人はそれによって、何もかも失いかけた経験をしている。

バブル時の大きな仕手株相場として有名な本州製紙の相場があった。先ほど仕手相場の例として挙げた銘柄だ。友人は仕手株が好きで、筆者が「仕手株には手を出すな」と何回も注意していたにもかかわらず、「大丈夫、大丈夫」と言って、聞く耳をもっていなかった。本州製紙が1000円、2000円と上がっていく過程ではさすがに当初は慎重に売り買いしていたため、全額を投じないで対応していたが、3000円以上に株価が上昇すると強気になって、全額投入だけで収まらず、信用取引も積極活用するほど熱くなった。そして、5000円に近づく頃には全部売りをかけようとした。ところが、気配を確認すると4950円辺りにビッシリと買い物が入っているのをみたとたん、売りを引っ込めて、逆に、大量の追加買いを入れてしまった。これが運命の分かれ道であった。方針通りに売っておれば、億単位で儲かったはずなのに、買いを入れたことで地獄の入り口に入ってしまったのだ。5000円をつけた後、一転して株価は急落、1000円安、2000円安と下落していく。

 その彼は3000円を割り込むとどうしても必要な資金に支障をきたすために、3000円で泣く泣く投げざるを得なくなった。平均コスト4500円程度で10万株以上を買っていたので、1億5000万円以上の損になった。しかし、結果として1000円を割れるまでそれほど時間がかかっていないために、そのまま、粘っておれば、完全にパンクしていたことになる。ある意味ではその必要な資金のために、助かったことになる。

 以後、彼は株式相場でも仕手株には一切、手だすことがなくなった。当然だろう。このように、資金を全額投入することは大きな危機を呼び込み、対応ができなくなる。安易に追加資金を投入すれば、損をドンドン拡大させていく。そりゃ、上昇相場の時には大きな効果が発揮されるが、そのくせをつけると下落相場の時には取り返しのつかないことになるのだ。したがって、基本ははじめの投資額をなるべく守って臨むことを心がけるべきであろう。

 どうしても、追加すると決めた場合にはその勝負が終わったあとで資金を元に戻す意思の強さがほしいものだ。資金については個人によって、事情はいろいろであり、一概にこれが必要な資金ということ難しいと思う。しかし、どんな理由から資金をもってくるにせよ、投資資金ははじめに決めた金額を守り、ましてや、すでに、後のない資金で株式投資をすることは禁じ手である。それだけは必ず守ることだ。株式投資はリスクを負うが、危機を背負うことはない。そんな経験ばかりしていると自分の本業がおろそかになり、いたずらにストレスをためるだけだ。生活を賭けてまでするものではないのだ。やはり、株式投資は楽しさの中にスリルを味わう感覚で臨むことが理想であろう。そのためには資金をどれだけにするのかは重要な意味をもつのである。

買いコストゼロを目指せ

投資資金はいくらでも良いと言ったが、そうした資金で株式投資をする場合、どのくらいの資金まで第一目標とするのか。年間、1割でも、2割でもいい。とおっしゃる投資家が大多数だが、そのうち、調子に乗って稼ぎだすと無尽蔵に稼げるのではないか、と錯覚を起こすものなのである。筆者は株式投資での究極の目標は買いコストゼロとしている。

100万円の資金を用意して株式投資をはじめたとしよう。いくつかの銘柄を何回か売買し、損や得を繰り返しながら、投資金額と同じ100万円の利益を得られたとする。つまり、2倍になった。この時点で買いコストゼロと呼ぶのである。「2倍くらい」と笑われるかも知れないが、ここで重要なのは元の100万円を達成時点で引き落とし預貯金に回すのである。そして、元の100万円から改めてスタートするのである。「折角、投資資金が潤沢になったのに何で元の資金まで減らすのか」といわれる。これもリスクを軽減させる方法なのである。はじめの資金が100万円ということは100万円分増えたことで、その分を元に戻すことは今後、万が一にも相場で大きく損をして半分の50万円になったとしても、信用取引で100万円マルマル損をしても、実質的には損がないことになる。ちゃんと元の資金は預貯金の中で静かに眠っており、無傷の状態にある。最悪の事態に陥ることないのである。つまり、安全圏に自分を置いて株式投資を続けることができる。

 もちろん、魔が差して増えた部分の100万円がゼロになるくらいの損をしても、1からやり直すことも可能になる。投資資金が元のままで新たにはじめることができるわけだ。

 このように株式投資での第一目標は買いコストゼロになり、そこに到達するまで頑張ることが重要なのである。

 資金が潤沢にあるからといって、無制限に株式投資資金を投入することは断じて避けることである。大金持ちでも見事に相場で財産を失った例は筆者がいやと言うほど見てきた。肝に銘じて資金は自由なものだけで株式投資をすることである。それを守れなければ株式投資を決してしてはいけない。(第4講おわり)

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