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第5講 銘柄の選択1 市場の支配者を特定せよ

2020 3/28
目次

時流に乗る投資家は誰か

株式市場では上場銘柄の株価が刻々と変化をみせている。大きく上昇するもの、また、下落するもの、変化のないもの、さまざまな動きがみられる。こうした動きに投資家はため息をついたり、儲かったといってはバカ騒ぎをする。

全体の相場が下落したり、上がったりしても、すべての銘柄が必ずしもそれに比例するというわけではない。よくよくみれば、下落相場の中でも上がっている銘柄が必ず存在している。逆に、上昇相場でも下落銘柄はある。

 今年の相場は4月から10月はじめまで、日経平均は7600円から11200円まで45%上昇している。

バブル崩壊後92、95、98年にそれぞれ底入れし大きく反発する場面があったが、これほど短期間に45%も上昇することはなかった。その意味では今回の急騰は13年続いた低迷期からの本格的な脱出相場ではないかとみられている。

 そういう相場の中でも半導体銘柄のNECが2.8倍、銀行株のUFJが6.7倍、情報通信のソフトバンクが5.7倍(いずれも2003年安値から10月高値との比較)というように凄まじい上昇をした銘柄がある一方で、薬品株や食品株は下落もしくは低迷が続いている。

 このように全体の相場が上昇してもすべてがそうなるものではない。その要因はさまざまな条件が複雑に絡み合って形成されるものであり、ひとつの条件が良くても上がるというものではないのだ。

 4~10月までの上昇要因を簡単に説明すると、世界的な低金利を背景に外国人が中心となって、欧米に比べて相対的に割安となった日本株を積極的に買ったことが上げられる。それまで、日本株は金融不安が続いていたため、敬遠されていたが、積極的に公的資金を投入して金融不安を阻止する姿勢が確認されたことがキッカケになった。日本の国内景気は、医療費の大幅アップ、年金負担の増加、リストラで給与所得者などの可処分所得の低迷などが続き、消費不振や失業率の高止りを誘発し内需の盛り上がりは見られない。輸出の好調、先端製品の積極的な設備投資がそれをカバーしなんとかGDPはプラスになっているが、景気の回復感は生まれてこない。内需での盛り上がりは財政出動が困難な状態にある上に、消費税の大幅増税が見込まれるなど期待しづらいのが現状である。したがって、設備投資と輸出を促進するために、金融緩和と円安政策を維持せざるを得ない。

 幸い輸出先の中国、米国の景気が好調となっており、その政策は期待通りの展開になっている。それに4~6月、7~9月の企業業績はリストラ努力も加わって回復の道をたどりだしている。しかし、9月中旬から円安が円高に変化したことで10月以降の景気動向が懸念され始めている。

 外国人は春先から大量買いし始めたのは輸出好調のハイテク銘柄、続いて、金融不安が遠のいたことで大手銀行、ゼネコン、不動産、証券、流通などのかつてバブル崩壊で売りに売られた銘柄を次々に何倍にも買っている。更に、輸出、設備投資の好調を反映して中国向け好調の鉄鋼、工作機械、建設機械なども買っている。

 株式は基本的に企業業績の好調さが大きな判断材料になっているのは否めない。そこに、各企業の独自の材料(配当の増減とか、新製品などの動向)が加わって評価されていく。更に、相場全体の話題性、テーマなども刺激する。すなわち、中国が話題となれば、それと関連する企業などがより買われる、というように業績以外の要因も挙げる際には大きな威力を発揮する。

 日立建機という会社がある。これなどはその典型的な銘柄である。業績好調、中国輸出関連という流れに乗って4月の600円から8月には1400円台まで買われている。業績好調、テーマに乗った代表銘柄だ。上がってみれば「なるほど」と思うが、建設機械のメーカーであり、イメージがゼネコン不況と重なっていたために、なかなか人気が集まらなかった。実際、02年3月期には連結経常利益は113億円の赤字であった。それが03年3月期には一転して98億円の黒字に転換し、04年3月期には180億円を見込んでいる。中国の道路建設、工場、ビル建設に建設機械が大量に利用された結果がこうした急激な業績の好調につながったわけだ。

 テーマと業績がかみ合った場合には株価は大きく化ける。それは後ほど

説明していくが、それに目をつけて実際にその銘柄を積極的に買ったのは誰だろうか。いわば、その銘柄を演出した投資家が後ろにいなければ、大きく株価が化けることもない。業績やテーマなどの株価刺激材料をくわしく知ることは大きな問題であるが、もう一歩踏み込んで、それを仕掛けるのは誰かを知ることも投資を成功させる上で重要なことなのである。

材料を巨大資金が買う

 先に、株価の決定要因は多くの要素が絡んで決まっていくものと述べた。その中でも大きな要素は業績である。しかし、必ずしもそれが正しく反映されるとは言えない。市場の流れや社会の動きにマッチして、かつ、好業績の銘柄が早い動きになるのである。日立建機の例がそれに当たる。そして、それを動かすのが、市場を支配する巨大な資金である。そのため、資金力の巨大な勢力が市場をどうみているかで買われる銘柄や売られる銘柄の趨勢が決まると言っても過言ではない。

 巨大な勢力。軍隊ではない。あくまでも投資家としての勢力である。いわゆる機関投資家の勢力と呼んでもよい。機関投資家とは国内外のファンド、

銀行、生保などの金融機関、証券会社などを指す。彼らは個人、企業、年金、国家などから資金を預かって、運用をする。株式に限らずあらゆる金融商品に国内外を問わず投資している。その時々に最も有利と思える株式だとか、債券、為替、国際商品などに敏感に反応して運用を続けている。巨大なファンドになると数十兆円にも及び、途上国などに向かうと国家の経済を大きく左右する影響力をもつ。日本の公的年金資金などは「ネンキン」などと親しまれ外国人には巨大な資金として認識されている。外国でもヘッジファンドなどと呼ばれる投機資金が有名だ。激しく資金移動を起こすために、しばしば、混乱を招いている。

 国内の機関投資家や外国ファンドは日本の市場でも中心になって株式を売買する。機関投資家といってもそれぞれ同じ運用をするとは限らない。優良株主体や大型株主体、小型材料株主体など彼らの得意な銘柄群に従って活躍銘柄が違ってくる。また、その時々の経済環境や景気状態によって、投資対象も変化させていく。時の流れの変化に応じて運用も変わっていくといってよいだろう。

 巨額の資金で市場に参入してくる彼らの動きは情勢の変化によって投資方針が変わっていくのであるが、常に、市場のテーマ性、活躍銘柄を決定する役割を担っていることには変わりはなく、重大な存在であり無視はできないばかりか、一挙手一投足の動きをマークしなければならない。

 そのため、市場でどういう資金が中心になっているのかを知ることと彼らの得意な運用銘柄は何かということを知らなければ、投資成果を挙げることは難しい。つまり、時流に乗っている銘柄とは時流を左右する機関投資家は誰かを知ることと同じ意味になると言っても過言ではないのである。自分はこの銘柄が好きだからと勝手に決めても確かに成果は挙げられるかも知れないが、効率よく成果を挙げることには疑問が残る。株式投資は資金を効率よく配分し、投資成果を早く挙げることが重要なのである。そのために、市場に最も、影響力のある主体を知って、先手先手と手を打っていくことが効率の良い投資作戦ではないだろうか。それは別の言い方をすれば当たり屋にチョウチンをつけて早い目早い目に利食いを徹する投資作戦をせよ、ということになる。

主役の銘柄に素直に乗れ

 株式投資で重要なひとつとして、相場の中心人物になってはいけないことだ。個人投資家の中には「会社四季報に大株主として名前を載せてみたい」などと憧れをもつ方もおられる。もしも、それが目出度く実現した場合にはどうなるであろう。少なくとも、それが実現できるのは大手の企業では難しいので、二部株などの小型株になる。発行株数2000万株以下の銘柄で名義上位に掲載されるとなれば、5%で100万株という計算になる。永久株主になりたいのであれば、別であるが、手放したい場合にはどうなるであろうか。もともと、二部銘柄は人気が集まっている時には出来高も30万株とか、時には100万株できることもあるが、それ以外の時には10万株未満が常である。そこへ売りをかけることは思うように売れないばかりか、値を崩すことになる。ましてや、大株主が売りに回っていることが分かれば、小口の投資家が我先に売ってくる。その結果、意外な安値をつけることになりかねない。買った値段とはおよそかけ離れた値段で売らざるをえなくなってしまう。大量買いした後の売却は割があわないことになる。昔から株式投資は姿をみせないで黒子に徹しなければならないといわれているのはそういう意味なのである。誰が買っているかがわかってしまうと手の内をみせたようなもので、売り逃げることが難しくなる。誰だか分からないうちには、資金力も不明だし、イメージも不明、いつ買ったのかも分からない。分かるのはその銘柄の材料だけなので、材料面での判断でこの銘柄はこの辺りまで買っても良いなどの相対的な判断がされる。それにはチョウチンがつきやすい。そして、黒子に徹した仕掛け人はいつの間にか売り切ることができる。

 中心人物が分かると大物の仕手であれば、最初はチョウチンがついて、ドンドン株価は上がるが、上がりきった後、株価がもたつきはじめるとチョウチンも引っ込み、「仕手は売ってくる」との警戒感が強まり、仕手の思うように株価維持がしづらくなる。支えるたけで精一杯になり、遂には、資金が続かなくなり、それが売り方に読まれるようになってある日突然、急落しそれまでの儲けを一気に失うことになる。そのようなパターンでつぶれていった仕手は筆者の知る限りゴマンといる。株式投資で成功するためには絶対に買い方の中心になってはいけない。あくまでも、チョウチンに徹することが大事なのである。

 仕手に止まらず、その時々の主力の機関投資家にチョウチンをつけることでも同じことが言える。主役につけ、という作戦が重要なのである。

主役で物色対象も変化

戦後、日本の株式相場は主役の特徴によって大相場を形成するスターがそれぞれ違って発展してきた。1958~61年の日経平均471円~1829円の大相場は個人投資家によって投資信託ブームで実現したものだ。利益成長を好む投資信託が主体となったために、その当時爆発的な売り上げを伸ばした白黒TVの家庭電器メーカーの株価が人気の主流を占めたものだ。松下電器が59~61年にかけて50%額面増資を3回することで人気が沸騰し、60年にはわずか半年で株価倍増になった。早川電機(現在のシャープ)も58~61年にかけて、3回倍額増資を実施しており、家電メーカーが伸び盛りの時期であった。 その後、1961~65年までは額面増資のやりすぎにより、需給関係が崩れ、低迷期になるが、67~73年まで続いた日経平均1250~5359円までの大相場は国内法人と外国人の主役によるもので、住宅、自動車、家庭電器の相場に始まり、ゼネコン、金融株、大型鉄鋼、化学、資源株などが大幅に上昇する相場になった。外国人が好む自動車、家庭電器、金融株、国内法人が好むゼネコン、大型鉄鋼、化学、商社、不動産、資源株などと色分けされたが、この時期には外国人と法人という2つ巨大な主役が重なったために、スケールの大きな相場をつくり、初めて、一日の出来高10億株を超える商いも成立している。世にいう「過剰流動性相場」である。

その後、第一次(73年)、第二次(78年)と石油ショックを経験し、相場は低迷期に入るが、79~89年まで空前の相場が続く。低金利と円高を背景とした大金融相場である。事業法人、金融法人が主役となった大きな相場で、活躍株は不動産、電鉄、大型電機、大型化学、大型商社、大手銀行など内需関連の大型株が中心であった。この時期を「バブル相場」と呼ぶ。

この大相場以来、全体の相場は今日に至るまで下落傾向を続けているが、その間、外国人だけが一貫して買い姿勢を強めて、市場でのシェアを高めていく。外国人買いの国内機関投資家の売りという構図が出来上がり、現在では市場の売買のうち外国人のシェアは60%を占める。完全に市場の主役は外国人となり、いやでも、外国人の好む銘柄以外は期待をもてないという状況になったのである。

外国人が相場をつくる

極端な外国人買いの商状になったのは、99~2000年に展開した情報通信中心の大相場である。かれらの手がけない市況関連株や国内関連は業績好調であっても、大きく買われることがなく、情報通信株であれば、たいした収益を出さなくても、株価が暴騰する一方的な相場になった。その象徴がソフトバンクや光通信でスタート値から20倍以上も買われる場面があり、ソニー、ローム、村田製作、京セラなども3~5倍に化けている。対照的に99年に業績が比較的に好調だった医薬品株は終始小動きに展開していたのは外国人がそのセクターに関心をもつことがなかったためである。しかし、2000年初頭には情報通信株が相次いで、天井をつけると外国人はバイオにホコ先を向けるようになり、宝ホールディングはじめ医薬品銘柄が軒並み上昇することになる。宝ホールディングは1月安値の1680円から3月には3260円という高値を短期でつけている。情報通信でつけたパワーをそのままバイオにぶつけた相場だった。

このようにその時の市場を支配している投資家が狙う銘柄は彼らが手がけてから倍以上に化ける習性がある。スタートからいきなり、急騰しても十分に買っても幅が取れるのである。この時に、「もう大きく上がったから怖い」などと昨日までの株価と比べてしり込みしてはいけない。

また、「急騰した銘柄は乗りづらいので、2番手の出遅れ銘柄を買おう」とい考え方もいけない。上がるのは本命銘柄だけだということを肝に銘じることだ。2番手、3番手は上げ幅が小さい上に、下落し始めると本命銘柄よりも早く下落する。

当面は個人も主役に

このように、市場で主役が誰なのかを知って、彼らが集中的に狙う本命銘柄のみチョーチンをつけることである。そうしたことを踏まえて、今年は誰が支配者なのか。金融機関、投資信託などのかつての主役はパワーを失っている。年初から外国人は期待されていたにもかかわらず、欧州、米国勢ともに2月くらいまで売り越していた。企業は自社株買いを続けているが、銀行株の売りを支えるだけで、積極的に他の銘柄を手がけることはしない。

後は公的年金の買いが目立つ程度である。この資金は全体の下値を買う消極的な資金のため、自ら相場を形成していくことはしない。残されたのは個人投資家である。個人投資家は昨年に、今年の証券税制の改正の前に価格の分からないいわゆる「タンス株券」を11~12月にかけて約1兆円売却。新税制が施行された1月から10%の譲渡益課税に損金参入が認められるようになったために、株式売買がしやすくなった。

しかも、ゼロ金利時代にあって、収入を得られにくい景気状況では運用が限られている。株式は相次ぐ下落相場の中で配当利回りが全銘柄平均で1.4%と長期国債利回りの0.6%を大幅に上回る利回りになっている。

こうした背景によって、個人投資家は株式投資への参入が年初から目立っていた。

個人投資家の金融資産は昨年(2002年)で1390兆円になっている。そのうち、株式は93兆円とわずか6%にすぎない。ほんの1%の保有率をアップさせるだけで、13兆円の資金が市場に流入することができる。この資金は企業の自社株買いが2002年度で約2兆7000億円、持ち合い解消売りが5兆円、年金基金解散からの代行返上の売りでも2兆円などの規模であり、この金額はいかに巨額かが分かろう。

動きやすくなった個人投資家が12月から信用取引ベースで買い越しを続け、3月はやや売り越しになったものの、他の機関投資家と比べれば買い傾向は強い。まだ、大きなエネルギーにはなっていないために、低位小型株や一部の好業績小型株が活躍するに止まっている。しかし、今後も個人投資家は買い姿勢を強めていくものとみられ、個人好みの銘柄は水準を上げていくものとみられる。2003年の前半の主役は個人となったわけだ。

政策面で目新しい動きがない間は個人頼みになるが、市場にインパクトを与える政策がでてくれば、これまで、様子見を決め込んでいた外国人が改めて買い出動することになれば、外国人が主役になるために、彼らの好む銘柄にチョーチンをつけていかなければならない。

外国人に続き国内勢が参戦

今春からの相場は外国人が主体となって上昇傾向をたどっている。わずか半年の間に6兆円にも及ぶ買い越しとなった。その間、国内の金融機関などの国内期間投資家勢は一貫して売り続けている。年金基金の代行部分

の返上売り、銀行の企業の持ち合い

解消売り、不良債権処理のための株式売却が続いたためである。それらの売りがざっと4兆円あまりで売りの大部分を占めた。ITバブルの99年には約9兆円も年間で外国人は買い越したが、03年6ヶ月間でそれに匹敵する買い越しを演じたことになる。

 このように外国人の一手買いによって相場は押し上げられたが、10月に入るとそうした需給に変化が表れ出した。売り一方だった国内の機関投資家の売りが細ると同時に投資信託などは逆に買い越しに転じている。

 今後、今年前半で大幅に売りこした国内機関投資家勢が買い越しに転じる可能性がある。ちょうど、IT相場が外国人が初め仕掛け人になった後、99年後半から投資信託が中心になって上昇相場に拍車をかけたことがあった。今後、それと同じような方向性が考えられそうだ。そうした需給のよさに対して、政策などの材料がどのように変化していくのかが焦点になる。

 国内は財政緊縮を優先させており、積極的な財政支出を期待することはできない。輸出の伸びやデジタル製品、自動車の設備投資などで景気は回復見通しに変わっているが、ここへきて、円高基調が輸出港長に影を差す懸念がでてきている。円安と金融緩和は日本の景気対策の2本柱であり、円高の動向は注視する必要がある。そこへ、衆議院選挙が行われているが、小泉政権への批判が表面化すれば、相場に波乱を呼び込むことになりかねない。

 そうした懸念をある程度相場に織り込むまでは日経平均は1万円と1万1000円までのボックス相場で終始することになりそうだ。金融緩和が続いているため、相場が大きく崩れる懸念は薄く、外国人が狙う好業績銘柄などをマークすることが望ましい

(第5講終わり)

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