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第7講 銘柄選択3 業績も中身をみよ

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好業績をまず重要視

銘柄選択をする方法は考え出せばキリがない。名前が良いからとか、コード番号がなんとなく気に入ったとか、親戚が勤めている、大きな会社だから潰れないだろう、自分の趣味の商品を作っている・・・など身近な関係を投資銘柄に挙げる人もいる。それはそれで投資家が納得して選んだ銘柄であり、別段、それはいけないということもない。しかし、資金運用として一定期間に最大の収益を上げようと考えるならば、適切な銘柄選択とはいえない。あくまでも趣味の世界であって上がる銘柄の選択としては好ましくない。

銘柄選択は1か月とか、6か月などという期間を設定して、その間に、利息よりもはるかに大きな利益、例えば、3割程度の上昇が可能で、比較的リスクも少なくして実現できるものを探しだす投資行動である。銘柄選択2で紹介したように業績の劇的な変化を創造するヒット商品をもつ銘柄などはその代表例になる。上昇幅が非常に大きく、上昇期間も長いために、投資のチャンスが何回もある。活躍銘柄の王道である。しかし、なかなかヒット商品が次々にみつかるものではない。ほんの一握りの銘柄だけがその対象になるだけで、他の銘柄は対象外になる。しかし、活躍銘柄はヒット商品をもつもの以外にもいくつもみられる。その際にも、仕手筋介入による急騰銘柄を除いて、好業績銘柄の中から銘柄を選択することが絶対条件である。

なぜ、好業績にこだわるのかだが、株主に利益配分できるかどうかが株式の基本になっているためである。それは第1講で触れている。会社は企業に出資した投資家に出資の証として株式を発行する。その出資資金で商品を製造し、販売することで利益を得る。その利益を株主に配当などの形で還元する。そのためには利益が常に得られなければ、株主への利益還元はできない。必然的に投資家は利益還元の高い会社へと投資し、投資効率を高めようとする。したがって、業績が毎期好調でしかも、高収益会社へは資金が集まりやすくなる。そういう銘柄の株価の価値は当然、高くなる。

そのような背景によって、業績が銘柄選択の際に最も重要視されるわけだ。第6講のヒット商品をもつ銘柄はその業績を大幅に向上させたために、株価の価値も急激にアップするという理屈になる。

この基本を株式投資をする場合に決して忘れてはならない。どんな銘柄を買うにせよ、絶対的な条件は業績が好調であることを外せない。ここでいう業績だが、実績を挙げた好業績ではないことである。つまり、過去の業績ではないことである。あくまでも、未来に対してである。3月決算発表が5月に行われる。発表は前3月期の内容である。その発表が50%増益であっても、株価は反応しないことがある。反応する場合には前3月期が予想以上に好調だった場合である。予想された範囲であれば株価に織り込んだ後になり、確認されただけで終える。次の業績がどうかに関心が集まっていくのである。つまり、来年3月期の業績見通しになる。すなわち、先ほどの前期50%増益の銘柄でも、次期の見通しが10%減益であれば、逆に、売られるというパターンになってしまうのである。また、前期が赤字であっても、今期の見通しが大幅黒字転換になるようであれば、株価は強く刺激されることになる。

最近では決算発表の少し前に前期の業績が予想よりも大幅に良かったり、悪かったりした場合には増額修正や減額修正という形で先に発表するケースがみられるようになった。過去の業績が株価に影響を与えるケースはそうした途中での収益の大きな変化が起きた場合にみられる。予想よりも良かった場合には株価は大きく反応を示す。逆に、減額修正の場合には売られるというパターンになる。要するに、過去の業績であっても株価に織り込まれていない時には反応を示す。例えば、日本CMKは2004年3月期の業績見通しを連結経常利益24億円と5月に発表していた。ところが、上半期を終了させた時点で一気に56億円と修正した。それを発表する前日の株価は711円だったが、翌日から3日間ストップ高を続け、一気1011円までつけた。更に、4日経つと1139円まで買われた。このように大きな増額修正があれば直ちに株価は敏感に反応する。したがって、銘柄を選択する際には、どんなことがあっても、まず、業績はどうなのか、また、それは株価に織り込まれているのかどうかを常に判断することを絶対に忘れてはならない。

変化率の大きいものを狙え

好業績であれば、すべてが大きく株価を押し上げるのかというと残念ながらそうではない。株価の位置を大きく変えるのは業績の変化の大きさが決め手になる。変化とは赤字から黒字に一気に転換する劇的な好転の場合、増益基調でも30%とか、50%増など大きく伸びるケースを指す。そういう時には株価は大幅に上昇する。例えば、大阪2部の東洋機械金属(6210)。この会社は02年3月期には連結経常欠損10億1900万円となった。しかし、03年3月期には一転して同5億8000万円の黒字転換している。更に、04年3月期には20億円と実に3・4倍増を見込んでいる。この欠損で02年10月には全体の相場の悪化をモロに受けて166円の安値をつけた。しかし、03年3月期の中間決算発表段階で収益見通しを増額してから局面が一気に変化する。

02年11月には166円を安値に368円、03年12月には455円、1月には492円の高値をつけていく。その後、382円まで調整した後に4月には524円の高値をつけている。5月には34年ぶりの公募増資を実施し、今年中には東証2部上場を目指す。公募増資のクリーン期間が明けた6月から株価の上昇に加速がつき、9月にはついに1200円まで上昇した。10ヶ月で7・2倍まで買われたのである。その後、株式分割を実施して11月現在では800~900円の間で落ち着いた動きを示している。

収益力の上昇を考慮に入れると決して高い水準まで買われたとは言えず、上値の余地を残しているようにみられる。

同じように赤字から黒字転換で大きく化けた銘柄は津田駒工業(6217)にもみられる。01年11月期には連結経常欠損9億5700万円、02年11月期には8億3200万円の黒字転換となった。それによって、01年む12月には株価54円であったが、02年5月には317円まで買われた。実に、6倍弱の上昇である。その後も中国からの織機需要の旺盛さから03年11月期には同利益は21億円を予想し、株価も300円台をキープしている。

このように、赤字から黒字転換する場合には債務超過や累積損が膨大でない場合には株価は大幅に買われる習性がある。劇的な変化を株価は評価するのである。

また、劇的でなくても景気全体が不況期でほとんどの業界が減益見通しの時に増益を見込める銘柄や業種は買われる。03年3月期では自動車、鉄鋼、紙・パルプが好業績の業種であった。日産が人気を集めたり、自動車部品株も買われた。鉄鋼では新日鉄が堅調な展開になったり、鉄鋼専門商社の阪和興業が上値を追いとなるなど逆行高を演じている。しかし、全体の低迷相場の影響を強く受けて相場を出し切れない銘柄も目立った。紙・パルプの大手、王子製紙は逆に相場は下落傾向を続けるなど好業績が反映されないケースもみられた。これはその時々の需給関係が影響したものだ。

需給状況が強く影響

好業績なのに売られる。そういうケースもある。それは業績好調にもかかわらず、①予想通りの決算が発表された場合、②突発的な事故とか、トラブルの当事者になった場合③市場の物色流れに合わない銘柄で増益率が低い銘柄④市場の需給関係が悪い時に増資を行った場合⑤大商いで天井を打って需給関係が悪化している時、などのケースが主に考えられる。

①はすでに予想された段階で株価に織り込まれるために予想通りであれば材料で尽くしになる。すでに、先に説明した通りである。②ケースはしばしば医薬品株にみられる。一例を挙げれば、02年の三菱ウェルファーマがその典型。脳保護剤「ラジカット」が脳梗塞患者に大きな効果を発揮するとして、年商300億円を超す売り上げを期待され、30%以上の連結経常増益を見込めるとされていたが、20年前の血液製剤がC型肝炎になったとして訴訟問題が話題になった。それが懸念材料になって「ラジカット」による好業績は評価されず、株価は反落し低迷が続いた。このように、増益見通しであってもトラブル、事故などが原因になって売られるケースもある。この場合には企業は社会の一員ということを抜きに考えられないことを示したもので、業績好調の前に社会規範をしっかり守らなければダメだということを教えたものといえる。しかし、その問題が一過性で済む場合には改めて増益を評価する展開へと進む。事故事件がどれくらい長引くのかを判断する必要がある。

④、⑤は需給に絡んだ問題である。

需給関係というのは株価形成の上で極めて重要な意味をもつ。株価は極端な言い方をすれば、需給関係が良好でなければ上昇幅も期待されるほどではない。さきほどの王子製紙は03年3月期の業績は連結経常利益で倍以上を計上した。ところが、株価は02年5月に692円の高値をつけた後、相場は下落を続け、03年4月には423円をつけている。その間、あや戻しはあるものの、業績が評価された形跡はない。

その理由は需給関係の悪さにあった。大手銀行が企業との持ち合い解消を進めることと不良債権処理のために保有株式の売却を一貫して続けている。王子製紙の大株主はみずほ、三井住友、新生銀行などが上位に並ぶ。

その売りを個人投資家向けに3600万株割り当てることにしたが、完全な需給好転にはつながっていない。結果的に金融機関の売り圧力が業績とは関係なく続いたことが下落の原因であった。しかし、それが峠を超すと株価は回復に向かい03年8月には700円まで上昇し業績好調を評価している。

 需給は個別銘柄の事情だけでなく、全体の相場の需給の好悪で好業績であっても、買われるものと買われないものに分かれる。03年の前半の相場を例に挙げるならば、資金の市場への流入資金は個人投資家、法人の自社株買い資金、公的資金に限られていた。資金の流出は金融機関、法人、外国人になっている。流入資金のうち、積極的に上値を買うのは個人の資金だけであり、後は、下支え資金にすぎない。

つまり、株価の上げ下げの躍動感は個人資金が主体になっている。つまり、個人好みの銘柄の需給関係が良いことになり、大型株や国際優良株など外国人、金融法人などが大量にもつ銘柄は需給関係が悪くなる。したがって、好需給の個人投資家が好む銘柄の中で業績のよい銘柄を選別していくことが投資成果を挙げられるという理屈になる。もっとも、03年の5月以降は外国人が毎月、猛烈な勢いで買いはじめ、10月には全体の相場の底上げ現象をつくった。支配者は外国人となったのである。

 この見方は第5講の銘柄選択1、「支配者を特定せよ」で説明している。その時に市場を支配、つまり、買いの主役は誰かを見つけ出して、その動きに先手をとっていく意味である。個人投資家の好みは低位株と小型株である。小口の資金を運用しているために、数をこなすには低位株、値幅を狙うのは足の速い小型株という感覚で銘柄を選択する習性がある。

 二桁銘柄がわずかの日数で何割も上昇する。短期売買ではこたえられない魅力である。しかし、中身は債務超過とか、営業利益がでていても有利子負債が過剰にあるとか、業績が赤字などの理由で二桁に甘んじている。そういう銘柄は人気の最中に倒産することも否定できない。また、高値で買ってしまうとすぐに元の水準にまで戻ってしまう。元ならば良いが、更に、下へ言ってしまうこともある。業績を無視して需給だけで売り買いすれば、そういうこともおこりうる。いくら、需給が良くても業績を無視してはならないのである。

 好業績を持続している銘柄は人気化して需給関係が悪化しても、調整期間に入った後でも元に戻らず、むしろ、正しく評価された水準まで上昇するキッカケになることもあり、短命に終わることもなく、何回も買われるチャンスが訪れる需給と業績が噛み合い、更に、材料が加われば完璧な上昇相場を形成する。すなわち、買うチャンスも利食いチャンスも何回もある。したがって、需給だけの二桁銘柄には決して手をださないことだ。

 需給に関しては業績だけにこだわらず、どんな相場のときにも良い状態なのか、悪い状態なのかを判断して投資を決める。また、悪い状態であっても、展開次第では良い状態にも変化することがある。それをある程度予想できるように状況の変化には常に、深い関心をもつことだ。

 一例を挙げてみよう。信用買い残が一方的に買い長にある場合、一般的にみて、需給関係は悪いと考えられる。しかし、将来の業績を押し上げる製品をもっている。そこに眼をつけた外国人が積極的に買いに入ったとする。現物で外国人は買い上がるため、上昇する過程で買い残はどんどん減少していく。それに対して、カラ売りはつれてドンドン増加していく。そのうち、信用の買い残と売り残は拮抗するようになり、需給の好転へと変化したことになる。

 また、上値に大量のシコリが残っている場合、なかなか上値を追っていくのは難しいとみられる場合、通常ならば買いは見送られる。しかし、業績を増額修正するなどのこれまでにない好材料が出現すると一気に局面は変化し、上値のシコリもとれてしまう。需給関係の好転を意味し、こだわりを捨てなければならない。

このように需給が悪い状態でも状況次第では好転へと変化することもがあり、その時々に応じて需給状況の変化があることを常に頭の中へ入れておかなければならない。

 需給を左右するものは業績の変化、将来の業績を押し上げる材料の出現が挙げられる。材料は新技術・新製品、資本の移動(合併、買収、提携、増減資・分割)、株主政策(増減配、優待)、国際要因(為替変動、国際商品市況、国際紛争、国際会合、各国の政策)、政治体制、国の政策、取引所・金融庁の各種規制、天候、事件・事故などが挙げられる。こうした材料はそれまでの需給関係を一気に変化させる要因になる。材料が与える影響については次の第8講で説明していく。

 業績が好調というのは基本的に株価を左右する上で重要な要素であるが、常に、好業績だからといって株価は上がるものではない。それは需給との組み合わせと市場の流れに合致する材料をどれだけもっているかで大きく上がるのか、小幅上昇で止まるのかが決まる。

 誤解してはいけないのは業績を無視して、材料だけや需給だけで銘柄選択した場合には上昇しても一時的に買われてもいつの間にか元の水準に戻ってしまう。つまり、持続性に弱いわけだ。それに対して業績面で好調という条件を満たした場合には持続した上昇を期待できる。その辺りを考慮して銘柄を選択しなければならない。

 業績、材料、需給それに時流が重なったときには株価は大相場に発展する。どれが欠けても大きな相場にはならない。強引に仕手筋が相場を押し上げようとしても、人為的なものは限界があり、仕手筋がからむ銘柄には手を出さないことである。これも是非、頭の中に焼き付けておくことだ。

高収益低成長は上げに限界

さて、業績のいろんなパターンの説明に戻ろう。好業績は株価形成の上で絶対に欠かせないものとの説明を続けてきた。高収益だが、小幅の増益を毎期繰り返している銘柄はどうだろうか。食品、医薬品、小売りの業種にはそうした銘柄がいくつかみられる。食品株を例にとれば、ヱスビー食品、キューピー、ハウス食品、カゴメ、アオハタ、加ト吉、日清食品などだ。いずれも高収益で小幅増減益を繰り返している。こういう銘柄の特色は確実に収益を上げられる強い商品をもっているが、それに代わる新製品がでていないために、高収益低成長に甘んじているわけだ。いわゆる成長時代が終わり、成熟商品となって安定期に入っている状態にある。

株価は先に指摘したように将来の利益成長を織り込んでいくものである。成熟商品で利益が構成されていることは利益がいくら確保しても株価の魅力は薄いとみるべきなのだ。ただ、現在のように不況期の真っ只中にある場合には不安要素が少ない分だけ関心が集まりやすい。そのために、株価は全体が下落を続けている中にあって、大きく値崩れすることがない。ボックス相場を維持できる。

 外国人投資家が成熟企業は新しい分野に積極投資をしないのならば、ぬくぬくと収益を内部留保せずに株主に高配当すべきだと痛烈に経営姿勢を批判する。その通りである。もしも、配当を現在の2倍以上にすれば、投資妙味も膨らむために株価は上昇することが考えられる。

したがって、高収益低成長の銘柄は割安だとして、積極投資を考えないことである。

逆に、低収益高成長の銘柄はどうだろうか。ヒットする商品が飛び出し、現在は収益が低く、高レシオに買われているが、3年先には大きな収益が出せると予想できる銘柄だ。これは現在のレシオを無視してよい。全体の平均レシオが10倍の時に、15倍とか20倍に買われても、3年後には収益が追いついてきて、10倍程度になる。その意味では決して割高とはいえないのである。

しばしば、大手の経済紙に投資相談として、高レシオの銘柄について、割高だと解説して投資行動を慎むようなことを言っている。それは大きな間違いである。成長性が限界の銘柄ならば、高レシオであるが、今後、高収益を見込めるのであれば、高く買われて当然なのである。株価は過去を評価しないのである。将来の収益増大に対して評価するのである。

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