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第8講 銘柄選択4 材料の影響度をみる

目次

海外要因を常に考える 

材料とは何か。これは企業の将来の業績や株価形成を左右する物理的、心理的な要素を指す。具体的には第7講で紹介したが、新製品・新技術、会社の経営方針、資本移動、配当政策、会社同士の提携、金融政策、経済政策、政治体制、金融庁の行政、取引所の規制、国際会合、国際市況、為替動向、各国の政策、国際紛争、天候、事件・事故などである。これらの材料は企業の業績を左右する要素を含むものと絡み合って、株価は形成されていく。

材料は大きく分けて、業績に強く影響するもの、株価の需給に影響するものに分けられる。業績に影響するものは   で表した。もちろん、すべての企業に業績に影響するものばかりではないが、業種によっては影響を強く与える。

例えば、3月から米国のイラク攻撃が始まった。国際紛争である。すでに、攻撃は数ヶ月前から予想されていたために、攻撃によって、石油価格や金などの国際商品や海運市況の上昇で石油株、金鉱株、海運株などの関連業種の株価を刺激していた。また、米国へのテロ攻撃を警戒して、米国内の消費低迷を予想してドルを売ってユーロを買う動きもみられドル安という為替変動による影響によって、輸出関連企業の株式が売られる事態を呼んでいた。

海外関連の材料や国レベルの材料が飛び出すと連鎖的に他の材料を刺激するという事態を生む場合があり、これらの材料は一つ一つ独立したものではないことも知っておく必要がある。例えば、米国がドル安政策を打ち出すと円高になる。日本の企業は構造的に海外依存型になっており、輸出関連企業は米国へ輸出すれば、売り上げが減少し、利益も薄くなる。一方で、国内産業型では食品は原料の穀物類、畜産品などが輸入に頼り、住宅も建材、木材、樹脂製品も海外、繊維も原材料の石油、羊毛、綿花も海外依存などであり、輸入コストが安くなるため、原材料面での収支は良くなる。また、日本国内がインフレ状況であれば、ドル安は歓迎され、金利低下を呼び込み買いが買いからの資金流入が促進されて、株高を招き、消費を促進させるなどの効果が見込まれる。このように産業全体が海外に依存している日本にとって外国の金融政策や経済政策は企業業績に与える影響が大きい。ここ30年間は一貫して円高傾向が続いており、輸出企業は絶えず為替差損との戦いが続いている。最近では中国への工場進出はじめ、米国、欧州などへと生産拠点を置き始めており、円高に対する対応もかなり進んでいるため、一時期のように円高要因の受ける影響は少なくはなっている。しかし、為替だけでなく、今後は中国や中東などの情勢が新たな海外要因として急速に影響力をもつようになりだしており、日本企業の国際化の進展に伴って、常に、海外の情勢は目を離せなくなっている。

イラク攻撃などはその好例だが、中国で流行の疫病のSARS(新型肺炎)は進出企業に深刻な打撃を与えようとしている。今後、北朝鮮で起きうる紛争や自衛隊のイラク派兵が原因となって日本でのテロ行為の可能性などはこれまでにない影響もでる恐れが考えられる。

為替動向について、もう少し触れてみたい。これは円高や円安によって株価が大きく左右されるために、重要な材料である。一般的に円高は輸出企業にとってマイナスであり、国内産業でも海外製品が安く入ってくるので、デフレ圧力がかかるために、好ましくないとされている。ただ、国内の景気が良くてインフレが進行しているときには歓迎されて、買われるケースがある。また、円高は金融面で緩和を意味するために低金利が促進され、為替差益を狙って海外からの資金流入が入りやすくなる。それによって、金融市場が活発化することになり、株式市場や債券市場にはプラス作用を引き起こす。逆に、デフレ下の円高はデフレ圧力を助長し、国内景気を悪化させ設備投資も萎縮させ、賃金の低下作用を引き起こすために、消費も伸びないなど景気への悪影響をもたらす。しかし、金融面では余剰効果が強まり、不況下の株高を演出することにある。その場合の物色対象は主に、国内産業の低位株、大型株が活躍する

ただ、02年、03年のように銀行の健全性に問題が続いている場合には株式市場への資金流入は限られる。銀行が低金利状態であっても融資を制限するためである。安全性を極端に重視するので、債券相場にのみ、資金が流れる構図になってしまう。この流れを断ち切り、株式市場に資金が入りやすいように金融政策や政府の対策が一刻も早く実現することが望まれるわけだ。

円安相場はどうだろうか。円安は輸出の増大を促進し、設備投資も盛り上がり、輸入品の増加も続く、賃金もアップし、消費も盛り上がる。その結果、金利上昇を招く。金融面では引き締めになるのだが、企業収益が増加しているために、業績を評価する展開になり、国内企業の資金や個人の資金で株価は上昇する。その場合の物色対象銘柄は小型株、ハイテク企業などになる。相対的に低位株や国内産業の大型株は上昇幅も小さくなる。

不況下の円安の場合にはどうか。これは国内が不況のため、円安によって、輸出が増大することになる。国内では、輸入物価の上昇などインフレ圧力がかかるが、消費は大きく落ちない。高金利で国内産業は停滞が続く。株価は輸出関連株や小型の値嵩株などが活躍する。

以上は通常の円高、円安状態の中での景気や株価の物色対象を説明したのだが、海外の要因によって、必ずしもそうした動きをするとは限らない。

例えば、円高で国内不況期のときにはデフレ圧力がかかりやすいが、アジアや米国が好況の時には国際商品の上昇がみられる。そうすると円高によって、輸入物価は抑制されるはずが、海外の原油や非鉄金属などが高騰したりすると輸入物価は大きく押し上げられ、国内でもインフレが進行する。不況下の物価高となって、金利が上昇することになり、本来の円高状態の姿を変えてしまう。そのような場合には株価は低位株物色よりも小型の材料株などが動きやすい。高金利状態になり、資金が株式市場に流入しづらくなるため、少ない資金で短期で値幅をとる動きがでやすいためである。

このように、海外要因はいくつかの要素が複雑に絡みはじめると基本的なパターンから外れることがしばしば起きる。その都度、株価がどう動くのかについて、常に、冷静に判断が要求される。

政策は大きな刺激材料に

政府が決める政策や行政指導は関連企業を大きく刺激する。例えば、03年10月に施行される東京都のディーゼル車の排気ガス規制だが、これを前に、運送業者は大型トラックの買い替え需要を積極化させている。バブル時に大型トラック(4トン車以上)の年間生産は19万台だったが、毎年ジリ貧状態が続き、01年には7万台まで減少していた。それが、02年の後半からこの特需が発生し、02年には9万台まで生産が回復している。その結果、トラック大手の三菱ふそう、いすゞ、日野、日産ディーゼルなどの業績は軒並み回復。いすゞなどはその年に生産の縮小などリストラを進めていたが、急きょ増産するという劇的な変化を呼んでいる。その結果、03年3月期の決算では日野が連結経常利益3.5倍という大幅な増益を演じ、04年3月期も74%増益を予想している。

 株価も02年9月2日の259円を底にほぼ一貫して上昇を続け、03年11月6日には659円の高値をつけている。03年1月からでも230円幅の上昇になっている。その間、特に02年後半の全体の相場は下落傾向を強めており、完全に逆行高を演じたことになる。

 トラック専業メーカーの中でも一番好内容なものが人気集中するのだが、内容の厳しいいすゞや日産ディは上げ幅も50円、100円程度と大きな差になっている。

同じ好材料の中でも、何でも良いわけではない。やはり、買う場合には一番、内容の良い銘柄を選択することが条件になる。トップ銘柄を選べということがある。市場の人気テーマによって、いくつかの銘柄の中から買う場合には必ず、業界トップの銘柄を買えという意味である。すでに、述べたが、トップ銘柄の株価が値がさだからと言って水準の低い同じ業種の銘柄を買うことはしてはいけない。自分の資金に合わせて株を買うなと第4講で説明している。相場に合わせないとしっかり値幅がとれないのである。二番手銘柄は上昇幅も小さく、下落するのは一番早いということになり、「安物買いの銭失い」になるのである

政策銘柄として、電力会社が03年4月から新エネルギーを発電の一部として採用しなければならないというエネルギー新法が施行された。これによって、新エネルギー、つまり、風力発電、太陽光発電、バイオマス発電、地熱発電などが実用化されることになる。この中で発電コストが低く、容易に設置できるのが風力発電。

1㌔㍗当たり9円で太陽光の5分の1の発電コストである。したがって、電力各社は風力発電の設置に前向き姿勢を示している。また、政府はその促進のために国立公園、港湾内での設置も可能にする法律規制の緩和を実施することを決める。これによって、風力発電の設置会社が注目されるようになっている。日本風力開発(2766、マザーズ、1株)である。03年3月に公開されたが、3月24日に安値45万円の後、6月には97万円までつけて、この政策を歓迎している。業績も全国で風力発電の設置が進むにつれて、業績も急向上し、今期は経常利益5億3000万円と前期比3・1倍を予想している。また、同じ関連の酉島製作所(6363)もその中で注目される。03年3月期は減益、04年には連結経常利益は横ばい見通しにあるが、一時的に人気を集めた。

政策によって株価は強く刺激されることはしばしばみられることであり、材料としての重みが大きいことをしっかり頭に入れておくことが大切だ。昔からの故事に「政策に売りなし」と言われており、材料の重要性を意味していることになる。

材料は必ずしも買われない

 業績に将来、大きな変動を及ぼす材料は株価を刺激するものであるが、時代のニーズに合わない材料が飛び出した場合には株価へのインパクトは全くない。材料というのは基本的に投資家に夢を与えるものでなければならない。できないことを可能にしたり、売れないと思っていたものが売れたり、ほしいと思うものを大量に供給したり・・・などのことを実現できた会社を評価するのである。

 新製品の大ヒットや新技術、更にはないものねだりを評価するのはそのためである。デジカメのヒット、制がん剤の開発などで株価が買われるのはその好例である。

 ずいぶん古い例になるが、1973年頃に石油ショックが起きた。その当時、石油を輸入に頼る日本経済は大パニックに陥った。何しろ、それまで1バレル4ドルだった原油が12ドルまで上げられたのだから、関連産業ばかりではなく、日本の製造業、サービス業を問わず、価格上昇が一気に起きるために、低価格を武器に外貨を稼いでいために「日本経済は売りだ」という見方が海外投資家に広がり、株価は急落したものだ。

しかし、その中で資源株だけが活躍した。帝国石油、日本石油、日本鉱業などの石油開発銘柄や三井鉱山、住友石炭、北炭などが賑わいをみせた。石油開発に進出した帝人、伊藤忠なども資源株として活躍している。1978年の第二次石油ショック後の1980年辺りまで、全体の相場低迷したものだが、次第に石油上昇による経済の新価格体系が浸透し、同時に、政府の不況対策が効果を発揮するにつれて、全体の株式も落ち着きを1983年ころから取り戻しはじめ、資源株人気も下火となっていき、ハイテク銘柄などが活躍をみせていくようになる。

そうした資源株が下火になった頃に石油開発を進めていた成果が現れてくる。伊藤忠が大規模油田を発見とか、日本石油や帝国石油も開発中の油田規模が大きいとか天然ガスが大量発掘したなどのニュース(材料)が飛び出す。ところが、その発見も株価に反応しない。逆に、売られることになる。その理由は石油がなくて困っている時ならば、ないものねだりで関連会社の株は買われるが、すでに、石油供給は安定状態になっており、材料にはならないのである。むしろ、需給バランスを崩すとことになり、売られることになりかねない。いわゆる、「あまりものに値なし」というわけだ

このように、好材料は常に、好材料というわけではない。その時代が要求する夢を満足にさせてくれる製品や技術、政策、対策などの材料が飛び出した場合には好反応を示すのである

したがって、材料が飛び出したときには株価に飛びつかず、時代を反映する材料かどうか見極めてから売り買いを決めること。

分割、増配で大きな変動

資本の変動や配当の増減は株価に大きな影響を与える。先に説明したように株価は会社の収益の稼ぎ具合によって、基本的に決まっていく。先ほどカラ説明している政策や為替などで企業業績に影響を与えるものほど株価の上げ下げを大きくする。資本移動や配当などはそれこそ、株主への影響は非常に大きく株価の行方を決める重要材料になるわけだ。

稼ぎの度合いが配当の増減に直接関係してくるのは当然であり、また、製品の需要が増大して設備を拡大しなくてはならない場合には通常、資本を増大させる。その際、株式を新たに増やすために株価の価値は希薄される。つまり、需給関係は悪化となり、通常、その分だけ株価は下落する。このように増資や増配は株価を大きく変動させるが、必ずしも、予想されたような結果にはならない。それが株価の不思議というか、怖いところである。

増資の場合。公募増資と株式分割の場合について説明する。1970年以前、株式は額面50円時代が中心で、額面増資が中心だった。発行済み株式の2割無償増資とか、5割有償増資などという方法で資金が集められた。1000株株主を例にすれば、2割無償は株主が資金を払い込む必要がなく、200株分をタダで貰えることを意味する。5割有償は株主は500株分に50円の額面分を掛けて25000円企業に支払うことを意味する。この場合その分だけ株式が増加したことによる株価の修正が行われる。500円の株価は単純に1.2で割り416円に修正される。5割ならば1.5で割り333円となる。額面のために集められた資金はすべて資本に組み入れられることになる。

これに対して、無額面時代の現在は発行株数と価格があらかじめ決められる。例えば、200万株、500円というようにして合計10億円資金を集める。無額面の方が額面方式よりも発行株式数が少なくて資金を多く集められる利点がある。それだけ、配当負担が少なくなったり、金融機関からの借り入れを返済することで財務コストが安くなる利点がある。そのため、収益力に自信をもつ企業は高株価策をとる。広く投資家に実態を知ってもらうために、自社の広報としてIR活動などに積極行動をとるのはそのためである。

この増資は時には買い材料、時には売り材料になる。株式市場の需給関係が悪いときには売り材料になり、資金の市場への流入が多い好需給の場合には売られず、むしろ、大きく買われる。そんな時にはその企業のもつ成長性と深く関係してくる。高い成長の場合には買われるが、低成長の場合には下落するキッカケになってしまう。市場の需給と個々のもつ成長性で増資後の展開は決まるといっても過言ではない。

昨年の相場のように銀行が持ち合い解消売りや不良債権処理で株式を売却し続けているときは株式需給は悪化の状態ということができるだろう。そのようなときに大量の増資などをすれば、必要以上に株価を下落させてしまう。そのため、企業は増資を敬遠してゼロ低金利を利用して普通債などの発行で資金調達を行ったり、ユーロ高をみて、ユーロ建ての資金調達が目立った。

今年の4~9月のように株式需給が良好な場合には公募増資などを実施しても株価は下落せず済む。このようにその時々の金融状況を見極めながら有利な資金調達(調達資金の低コスト化と株価低下のリスク軽減)を企業は常に実行しているのである。

配当の場合にはどうだろうか。かつては収益を挙げても、減益であってもいつでも1株5円の配当の時代があった。最近は配当性向(最終利益の何%が配当になっているかを表したもの)を重視するようになり、高収益を上げた企業は高配当するようになりつつある。

増配は株価を押し上げる効果を発揮する。増資のように株式の需給を左右することがなく、株式の価値を高める作用を起こすためだ。そのため、株式を増加させる株主優遇の株式分割よりも増配による優遇策を望む投資家が多い。しかし、株式需給が良い場合には分割が喜ばれ、株価を刺激する。需給環境をよく見据えて判断する必要がある。

事件・事故は売られても戻る

企業はあらゆる場所であらゆる活動をしている。したがって、トラブルを引き起こしたり、また、巻き込まれたりする。工場が爆発したり、台風で操業不能に陥ったり、欠陥商品を大量にだし回収騒ぎになったり、薬害事件を起こしたり、食中毒を起こしたり、大量の不良債権が発覚したり・・・などいろんな事件、事故がおきる。ケースにもよるが、概ね、相場の世界では「事件投げるな、事故売るな」という故事がある。一時的に業績悪が起きても企業の根幹を揺るがすことのない場合には株価は戻りも早いということだ。ただ、経営を揺るがす事件は別。最近では雪印の中毒牛乳事件や日本ハムの牛肉を政府に不正に買い取らせた事件が挙げられる。雪印は3年前に事件を起こし、その後は売上げ半減、大幅な赤字を3期連続計上し、いまだに立ち直りのメドがない。日本ハムも事件後、大幅な減益に見舞われたが、今期は50%経常増益を見せているものの、利益は01年3月期の2分の1に止まっている。高収益の日本ハムが低収益に転落した。

株価は600円台にあった雪印は一時、99円まで売られ、その後、持ち直し280円まで03年5月には戻している。日本ハムは1500円台から事件直後には741円まで売られたものの、03年2月には1250円台まで戻した。雪印は経営の屋台骨を揺るがす事件になったために、株価も業績も戻りが鈍いが、日本ハムは回復の可能性が高いとの読みで戻りが大きい。 事件は一時的に大騒ぎになるが、経営への中期的な影響を考えて冷静に対応することが望ましく、会社側の事件や事故の対応の仕方によって結果的には大きく違ってくる。投資家自身が狼狽してはならないのである。

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