MENU

第10講 投資戦略1 買い姿勢のツボは?

2020 3/28
目次

投資価値の揃うことは

これまで説明してきたのは主にファンダメンタルズ(企業のもつ基本的な要因)の面からの売り買いの選択方法であった。第10講からはそれにチャートと需給を加えた場合での売り買いのタイミングに重点を置いて説明する投資戦略編に入る。チャートだけの説明は前後するが、12~13講で集中的に解説することにする。

 何回も言うが、銘柄の選択をする場合に重要なことは銘柄の投資価値を計ることが第一で、それから、需給やタイミングを考えて決める。そのどれが欠けても投資作戦は成功したとはいえないのである。チャートだけで銘柄推奨する評論家が大勢いるが、いかにも、急騰につぐ急騰を明日からでもするようにもっともらしく説明しているが、「画竜点晴を欠く」を正に地

で行ったようなものである。何といっても、投資価値が現時点でどの程度あるのかをまず、知ることである。業績の伸び率、材料、会社の意識などを知るのである。

 一例を挙げるならば、筆者は来年(2004年)前半にかけて「アーク」という銘柄が大幅高するとみている。

先ほどの上昇条件をすべて備えているばかりだけでなく、1万円銘柄の条件をも兼ね備えていることが理由である。それはこうだ。

 まず、業績。今3月期の連結経常利益は当初55億円と予想していたが、9月中間決算時に63億円へと前年比44%増に修正し、1株利益も207円から232円に修正された。更に、来期も100億円を予想し、連続大幅増益を見込んでいる。1株利益も415円に躍進する見通しである。低成長期にそれだけの増益を見込めるのは事業内容が市場拡大を見込める分野で独占的な存在にある。すなわち、新製品の試作品を大手自動車メーカー、IT、家電、パソコンなどの大手各社からアウトソーシングされる。近年、そうした業界は新製品ラッシュが続いており、絶え間なく同社に試作品の依頼が舞い込む。04年3月期の業績は63億円と44%増益を見込む。それだけの数字をみれば平凡な伸び率だが、01年21%増、02年57%増、03年42%増と続いた後の44%増である。更に、05年の予想では58%増の100億円を予想している。これだけ連続的に高い成長を続ける銘柄は稀である。そして、05年には1株利益は400円を超える。こうした業績好調に加えて、会社側は金型企業の買収を05年に狙っているようで、その資金を資本市場から調達を考えているとみられる。そうすると、高株価は欠かせない戦略になり、1万円以上でのファイナンスが実現する可能性が高い。したがって、6000円台の水準は魅力がある。業績、会社側の姿勢では投資価値は申し分ない。後は需給関係とタイミングということになる。需給も03年11月に外国人とみられる売りが約100万株でて、7450円から5540円まで下落した。その売りが切れた後に、別の機関投資家の買いが舞い込みはじめており、需給は好転している。タイミングを計るチャートも売られた5540円の水準でも一目均衡表の雲に入り寸前で止まり、それから急反発し、25日移動平均線を11月28日に上回り、同時に新値3本足が陽転した。そして、12月2にはゴールデンクロスを示現している。

 このようにアークは典型的な上値を追う材料が揃っており、投資価値の大きな銘柄として挙げられるわけだ。なかなか、そういう銘柄はザラに見当たらないが、それ以外の買いのシグナルを暗示するパターンを紹介していく。

無風状態の買いは

買いの姿勢を高めるケースは多々ある。2つの対象的なケースでの買いを説明してみる。全く、無風状態、すなわち、同じ株価の位置に長く停滞しているケースと突然、大きく放れた急騰した場合での買いをどのようにするのか、について説明する。どちらの場合も買いと判断を決めるのには比較的勇気がいるものだ。

無風状態というのは一定の幅で小さく何日も何ヶ月もその間で行ったり来たりしている相場のことを指す。いわゆる、往来相場と呼ばれる展開を続ける銘柄のことである。1ヶ月や3か月などの場合、1年や3年という長期間にわたる場合もある。1年以上の状態の特色は①業績に大きな変化がなく、市場人気からも見放されている、②大相場がかつてあって、その後、下落に転じて落ち着いた状況になりながら需給の調整が続いている③市場性が薄く株価形成の形を成していない・・・などの場合だ。これらは底値にへばりついている場合が多く、時には更に下放れることもある。

 1~3ヶ月程度での無風状態はそこそこ上昇し、あるいは下落の途中での一服状態にある中段保ち合いの状態の時にみられる。その後、更に、上昇か、また、反落するのか分岐点になるケース。一例を挙げると02年9月中旬から03年1月中旬までの近畿車輛(図1)。180~230円のもみ合った後、3月はじめに280円まで上昇を続けた。その後、4月末まで250円前後のもみ合いを5月に入って抜けて327円の高値までつけている。逆の例では三共生興(図2)。02年8~9月(370~385円)と10~11月中旬(350~370円)まで保ちあいが続いた後、下放れている。大勢的には7~11月中旬まで約5か月350~385円の保ち合いから下放れたことになる。また、保ち合いから下に放れた後、すぐに、急反発し保ち合いのゾーンを突破して高値を更新することもある。いわゆる、弾みがついた相場である。大日本製薬(図3)の02年12月の下放れ960円をつけた後、急伸してそれまでのゾーンの1000~1100円を突破し1159円をつけている。

 中段保ち合いから上や下に放れることも含めて、それまでの動きと違った動きをするターニングポイントはどうしてつくられるのであろうか。それを解明できれば、相場に負けることがなくなり、どれだけ、楽しいことか。そういう研究は大手証券、投資顧問、運用マネージャー、一般投資家に至るまで、研究に研究を重ねているが、確実な答えがだすことができない。コンピュターがどれだけ発達しても、である。

しかし、概ね、その時々の相場全体の環境と需給動向とその銘柄に影響する材料や需給関係で決まる、と言ってもよいだろう。相場全体の環境とは日経平均が上昇か下降パターンなのか、その時の主体は誰(第5講)なのか。その環境下でこの銘柄の影響度はどうか。主体が売りや買いなどで関心をもっているかどうか、全体での影響を考える。そして、この銘柄に材料が飛び出したが、需給関係はまずどうかを考えて、材料の影響度は新鮮なものか既存のものか(織り込みぐあい)、その材料の影響度は大きいか、小さいか、強いのか弱いのか、長期か短期か、など個別の材料を考える。そして、どこまで、上がるのか、下がるのかの目標のメドを決める。

近畿車輛の例はまず、全体の環境はどうだったのか。02年8~12月までは金融機関の株式持合い解消の売りを中心に法人売りが続き、日経平均は1万円から8500円まで下落の一途を辿っていた。また、個人投資家も証券税制改正前でタンス株券を売却するなど11~12月には売りが集中していた。

近畿車輛は発行株数6900万株と小型株の仲間に入り、売りの主体だった法人売りが集中することがなかった。そのために市場全体の影響を受けることが薄かった。そのような市場環境に近畿車輛のもつ個別の材料が株価を刺激する。02年5月に同社の03年3月期の業績見通しが発表された。連結経常利益が23倍の30億円(実際、決算では30億4300万円となった)と発表。香港や米国向けの車両が一気に売上げに立つことが大幅増益の要因だった。それが5月から7月にかけてほぼ倍にまで上昇する相場に発展した。その後、もみ合いに入るが、03年1月からの再騰は02年7月の信用買い残の高値期日終了接近と台湾での新幹線計画が日本の企業連合が総額5000億円(車両360両など)の受注を1月22日に決めたことが新たな材料になって、もみ合いゾーンを突破した。実際には近畿車輛への発注はほとんどなく、川崎重工に大部分舞い込むものであった。それでも、株価を大いに刺激したのは大幅な好業績に加えて、市場環境が03年1月に入って、小型低位株に矛先が向かいやすい環境にあったことが背景にあった。個人投資家はタンス株券を前年末で処分売りし、03年には今度は損金参入も認められる新税制を好感し、改めて新規買いに入りやすくなっていた時期に個人投資家好みの同社株のような低位株で材料が飛び出したことが上値を追う形になって表れた。

03年1~3月という時期は金融機関は相変わらず持ち合い解消売りに加えて、法人の年金基金の代行部分の返上のための売り、外国人は日本の金融危機の対応の不透明さを理由に売り傾向を強め、買い支えは公的年金資金、法人の自社株買いであるが、これらは積極的に上値を買う資金ではなく、結果として個人だけが上値を買える主体であった。したがって、個人好みの低位で小型株が好まれる。そのタイミングに近畿車輛は需給面、材料面、業績の面でうまく相場に発展したのである。

このように大きく居所を変える銘柄はいくつもの好条件が重なった場合に実現する。

下に放れる場合にはその逆である。三共生興は02年5月に03年3月期の業績予想が連結経常利益を倍増の30億円(実際の決算は30億6900万円)と予想し、5月13日の241円から7月29日の390円まで買われた後、先ほどの水準でもみ合いに入っていた。しかし、その材料をこれで織り込んだ後、それ以上に上値を追う材料に乏しく、息切れ状態にあった。更に、比較的好調だった高級ブランドも夏場を過ぎる頃には一巡感が出始めて、デフレ圧力による消費の低迷が消費関連株の頭を抑える。そこへ、個人投資家のタンス株券の売り圧力が同社にも11月に及び、下放れ、12月にかけて売られる展開になった。しかし、その一巡後には個人好みの銘柄と配当利回りのよさが見直されて、保ちあいの水準まで戻すことになる。

このように、好業績だけではそれを織り込むと市場環境の影響を受けることによって、修正安を余儀なくさせられる。近畿車輛や三共生興のように大幅な好業績を織り込む場合にはほぼ3ヶ月かかったことはお分かりのように刺激材料を織り込む場合には3ヶ月というケースが多くみられているためとみられる。その辺りをよく頭に入れておくことが重要。その後、保ち合いゾーンに入った後、上か下かは市場環境、需給も影響するが、次の材料が出現するかどうかで決まる。

さて、大日本製薬のケース。一旦、下放れすかさず急反発した場合。これは業績が偶然増額修正したり、何か新しい新薬研究が飛び出すなどの材料が出た場合にはそのような動きをするが、そうそうタイミングよく出るものではない。このケースは一貫して注力している買い主体が下落場面でテコ入れする場合にみられる。いわゆるボールを床に落とすと弾んで大きく跳ね返ることと同じで弾みがつくことになる。そのまま、上値を追い続けることもあるが、無理した上げであり、力尽きて時間を置かずに反落に転じるケースがみられる。その後、同株は下値を切り下げる展開が続き、5月には700円を割り込んだ。健康保険の個人負担が3割まで高められ、医薬品各社が業績見通しを厳しくする傾向が強まったことが売られた理由である。

以上のように高値をつけた後の中断保ち合い後の展開はその時々の条件によって次の展開が決まる。日頃からいろんな角度からものをみる訓練を続けることでどちらに動くのかをその前から察知できるのである。

何ヶ月以上も底に這う状態の無風状態の銘柄でも動きがでる条件は同じである。市場環境、業績、材料、需給がそれまでと違った状況に変化したときには動くのである。

大倉工業は3年間も350円中心の動きで推移していた。それが03年4月から動きはじめ、あれよあれよという間に1か月で5割高を演じてしまった。従来のフィルム生産の事業から液晶フィルムへの進出が当たり、収益拡大を03年12月期に見込めるようになった。それが眠りから覚めて大きく動いたのである。似たような銘柄として大陽東洋酸素(図4)がある。1年にわたって、250円中心の動きに終始していたが、04年3月期には40%の連結経常利益と2期ぶりに増益に転じる予想を発表した。半導体、液晶業界の積極的な設備投資によってガス機器の売上げが挽回することやガス需要のアジア向けの伸びが背景だ。

5月中旬に260円を突破して、1か月ほど280円前後でもみ合った後、7月から9月にかけて上昇を続け、380円をつけている。長期的なボックス展開から抜け出すと上値に弾みがつく好例である。

買いのタイミングはいくつものパターンがある。はじめに、無風状態の銘柄の買いを説明したのは動意づくと上昇期間が長くて、スタートから買っておけば、何回も売買できる。しかも、長期低迷期にあるため、それがしばらく動かなくて売却しても大きな損にならない。動きがないのだから損が少ないのは当然である。リスクという面において軽い。その意味で、初めて株式投資をする方やいままで大きな成果の経験のない方に向いた投資戦略である。

しかし、どんな相場でも安全ということはないので、買うと同時に利食いと損きりの目標を同時に設定することを絶対に忘れてはならない。

株式投資で大事なのは常に余裕と安全圏に自分の資金を置いておくことである。しばしば、それを忘れて無謀な投資をする方が多いのには驚かされる。例えば、500万円の資金で投資をされている方で十分に銘柄研究をした結果、成功し短期で50万円でも利食いをした後、有頂天になり、即座に次の銘柄を買おうとする。こういうことは最も危険な投資方法である。次々にそんなおいしい銘柄が落ち             

ているわけがないのに、始末が悪いことに資金を目一杯投入する。折角、短期で得られた利益をその繰り返しで失ってしまう。そればかりか、その際に買った銘柄が売れずに塩漬けに加わるという愚を繰り返すのである。株式投資で必要なことは良い銘柄を選択することは大事なことであるが、むやみやたらに銘柄をあさることで、余裕を失い、危険な投資行動に突き進むことを避けることも非常に大切な行動である。勝てる確率が低い銘柄だと思ったり、何か自分で悪い予感のするような銘柄だと思えば、絶対に買わない。買った後でもそういういやなイメージが湧いたときには即刻売却し退却することを心がけておくことである。「お金が余っているから何かもっておきたい」などという行動は是非慎むことである。「これだ」と思うものがなければ、現金としておいておけばよい。

 すでに、第3講で説明したように資金は全部使わないで、余力を常に残して計画性をもって行動すべしと説いている。相場に熱くなっていくとそれが頭から消えてしまって、急落した時にはじめて思い出すという始末の悪い投資家がほとんどである。そんなことを繰り返すとここで学ぶ投資戦略は意味をなさなくなり、過去の自分の失敗の投資に戻ってしまうのである。余裕と安全圏をぜひ、守っていただきたい。

急騰銘柄の投資作戦は

突然、大きく買われる銘柄がある。「しまった、以前から眼をつけていたのに」というご経験はおありだろう。しかし、そういう銘柄は落ち着いてどういう理由で上昇したのだろうかということを考えてから作戦を練ることで十分に買うチャンスはある。

突然の上放れは急激な業績の変化や新技術の確立の材料が飛び出した時などに主に分けられる。

まず、業績の急激な変化の時(大幅な増額修正銘柄)。これは、発表前の株価の動きが相当上昇していた場合を除いて、とりあえず、買ってみる。相場のテーマに乗る銘柄の場合には比較的長期にわたって上昇が続く。普通の大幅増額の場合でも3か月程度は続くとみられる。ただし、3000株買う資金があっても、1,000株に止めること。2~3日上値を追い続けることがあっても、急激な上昇は一旦、調整期に入る。調整パターンははじめの急騰場面のスタート近くまでは戻らないために、その上げ幅の半分くらいのところで1000株を買ってみる。そして、最大3週間も待てば改めて上値を追うパターンに入るケースが多い。調整しないでそのまま、上昇した場合には一旦、利食いをしてから待つ。上放れは業績の大幅な変化が要因の場合には追いかけても良い。その時に、上昇前の株価をこだわってはいけない。

一方、新技術の確立の場合。これは①今期の業績見通しがたいしたことがない場合には、急騰場面は続かないとみる(第8講)。ましてや、異常な出来高となった場合には動きがとれなくなり、上値を追うことはむずかしくなる。それはこのケースに止まらない。②市場のテーマに乗っている新技術の場合にはその後も上値を追うこともある。③逆に、テーマに乗らない場合には短命に終わり、買いは見送る④好業績でありながら株価が緩慢な展開にあったときには継続して買われることがある。⑤信用の売り残、買い残が拮抗している場合には①、③の場合でも上値を追うケースもありうる。特に、全体が上昇相場の場合。全体が下落相場の場合には短命に終わる。

例を挙げてみる。東洋機械金属(図5)。02年10月18日に突然、ストップ高し、284円をつけた。中間決算の経常利益1億2000万円を3億4000万円に増額修正したことがキッカケ。その後、10月25日に334円までつけた後、反落に転じて、11月20日には203円まで下落した。その後、猛反発し、11月29日には368円をつける。後は、一進一退を繰り返した後、03年1月末には492円まで上昇している。それが好業績銘柄でかつ、流れに乗った製品を持った銘柄のパターンである。4月23日の決算発表では当初予想の連結経常利益4億2000万円を大幅に上回り5億8300万円まで利益を伸ばした。そのため、株価も524円までつけている。ファイナンスを決算発表と同時に発表したために、5月は調整に入ったが、6月、7月には新たな展開へと発展し、8月には1000円を突破した。

新技術だけが一人歩きの場合。宝ホールディングの02年10月8日の遺伝子治療薬を米国、韓国で臨床実験に入ったというニュース。将来の有力な治療方法として時々、材料視される。発表当日は買われなかったが、15日にいきなり急騰し、わずか5日で150円高を演じた。550円から694円まで上昇した。しかし、それで終わり、後は11月19日の500円割れまで売られる始末。業績面では特に、みるものがなく、法人や外国人売りを浴びるキッカケをつくっただけの材料であった。

資本提携や業務提携などのニュースも一時的に急騰する場合がある。その判断は増額や新技術の場合よりも判断が難しい。最近の例では日本信販をUFJ銀行が子会社化をすることを03年11月21日に決めた。その結果、日本信販の株価は21日に急騰。前日の163円から一気に瞬間210円まで買われた。その後、12月2日現在で268円まで買われている。それは子会社化によって、経営が好転するとの判断が素直に株価に表されたことになる。必ずしもそのケースに当てはまるとは限らない。状況を深く読み行動することが大切である。

以上のように株価は材料だけで買うには限界がある。業績の大幅な好調という場合に更に、好材料が加わっているがどうかも重ねてみて判断することが要求される。

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次
閉じる