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第11講 投資戦略2 売り姿勢の対応は?

2020 3/28
目次

売り戦略の重要性

投資戦略上、買いを決断させることはある意味においてそれほど難しいものではない。しかし、売り(ただし、空売りは対象外)は難しい。買いはそれを実行した時点でとにかく損得が発生しない。しかし、売りはそれを実行した時点で損得のいずれかが発生する。利食いの売りでも、その後で急騰でもすれば、投資家によっては損をしたような気持ちになるという。損切りするにしても、その後で急反発すれば、その晩は眠れない。売却は完璧な場合以外は常に何らかのストレスが残ることが多い。完璧な売りというものはほとんどゼロに等しいことが分かっていてもそれが実現しないことには売りは満足できないのである。売った後に急に下落するようなことが起きない限り満足はないというのである。

要するに売りを難しくしているのは個々人の心理的な側面が強く働くことになる。その心理は売りに対して明確な論理をもたない限りない欲への追求にある。例えば、こうだ。300円の銘柄を買った。最初は330円と「一割上がればいいや」という気持ちで臨む。無事、何日かしてその目標が達成できた。売るのかと思えば、「いやいや、もっと上がるのでないか」と考え直して持続する。350円、360円と上がっていく。それにつれて、だんだん売ることを忘れて、「もっともっと」と思うだけになり、逆に、買い乗せをする心理が働くようになった時に、ドカンと急落する。しかし、買値を下回らなければ、安心するだけで、「そのうち、戻る」と勝手に都合よく考えてしまう。そして、彼の期待通り戻るが元の高値には届かないで反落に転じる。(本来はそこで売りを敢行する)しかし、今度下落すると、買値を下回る下落になっていく。そこで初めて、「しまった、やはり戻りで売っておけばよかった」(遅い判断だが、その時点でも売れば、傷も軽い)と後悔する。 そして、再度、戻りをみせるが、買値までは戻らない。その後、一進二退の状態が続いて、「今度、戻れば全部売ろう」とひたすら戻りを祈る毎日になる。そして、いつしか、株価は買値の半値辺りで落ち着きをみせて、長い底這い状態が続く。いつしか売ることも、買った頃の情熱も消えて、関心も薄れて、ついには、塩づけという形で落ち着いてしまう。

以上のパターンはほとんどの個人投資家が経験していることである。この失敗の原因はどこにあるのか。第3講義で説明した計画性の欠如に尽きる。どこで利食いするのか、どこで損切りするのかについて、冷静に判断ができずに、ひたすら、儲けたときの計算ばかりしていた結果なのである。すなわち、自分の欲を抑制できなかった結末といえよう。欲がいけないという意味ではない。人間、欲を失うとおしまいであり、前進がなくなる。適度な欲は望ましいことである。ただ、「過ぎたるは及ばざるがごとし」というように何事も行き過ぎは弊害を生む意外の何者でもない。それが株式投資での売りでの失敗になって現れるといっても良い。

今後の投資において、成功、失敗の分岐点はその欲をどれだけ自制し、冷静に処理できるかにかかっている。特に、買い戦略よりも売り戦略がより重要になってくるのである。

業績悪は躊躇なく即、売り

 売り戦略の重要な基本姿勢は買いの時にも指摘したように、一番大事なことは業績である。これは買い、売りともに同じである。ただ、買いは業績の好転の変化率やどのくらい好業績が予想されるのかという業績好調の面を重視して、その時にどうするかを決める。それに対して、売りは業績がどのくらい悪化するか、ヒット商品の翳りが見え始めたか、また、悪化したことで配当がどのくらい減らされるか、など業績にまつわる中で悪い面がでた場合にどのように退却するかという戦略と利食いの場合の戦略になる。

 図5の大日本スクリーンを見て頂きたい。この銘柄は02年12月に底入れして、03年年初から反騰体勢に入り、3月中旬に天井をつけた後、急落している。その後、4月中旬まで下落を続けたが、反発に転じ、決算発表をキッカケに急伸する展開になり、6月はじめにはほぼ3月の高値近辺まで戻している。この上げ下げの理由はこの銘柄の業績の方向性が最も大きな要素になっている点である。このグラフには載せていないが、02年の2月から5月にかけて、345円から728円まで大幅に上昇している。      

02年3月期は42億円の連結経常赤字であった。その予想を発表した時点、すなわち、01年5月の株価600円台から業績予想の悪化を理由に一貫して売られ、01年9月には305円の安値をつける。決算発表後、5か月連続で売られていたことになる。本来はその悪材料は3ヶ月程度で織り込み、多少の反発をみせるものだが、長く下落が続いた理由は市場環境の悪化が業績悪の同社には余計に厳しく影響を与えたことが考えられる。そして、02年2月まで下値で鍛錬した後に、03年3月期には黒字転換するとの観測が出されるようになり、戻り相場に転じて、02年5月には728円まで買われたのであるが、実際の決算発表でそれが確認されると材料で尽くしになって、下落相場に転じたのである。下落が長く続いたのは2003年新証券税制前の個人投資家のタンス株券の売却が一貫して続いたことによる市場環境の悪化が影響している。

図7はそれ以後下落状態が続いた後、底入れした02年12月からの動きを表したものである。半導体製造装置の受注が大幅に回復していることを好感して上げ始めたのだ。それが確認される(2月28日の記事)と上げも一服する。

以上のようにスクリーンの2年間の業績悪化、回復という過程で株価がどのように反応したかについて、解説したように、業績が株価に与える影響は上げる場合も下げる場合も大きい。

特に、予想していた業績が一転して変化する場合には強烈である。図7の03年3月15日の記事では03年3月期は黒字予想していたのが、最終赤字になることを報じたものだが、株価は一気にストップ安まで売られている。その後も更に100円安まで下落が続いて反発に転じた。

このように、業績悪化、特に、大幅な場合にはその時に大きく売られるが、投資戦略としては「戻ってから売ろう」とは思ってはいけない。その後のチャートが示すように元には戻ることはない。すんなり、あきらめて即、値段にかまわず売却を決めることである。

下落傾向が続いていても、03年5月に04年3月の業績見通しが一転して、大幅黒字転換する予想がでれば、大きく相場は戻していくのである。その時には素直に買い戦略でいく。

急落寸前の動きは大抵、前触れという動きがでる。下落近しという暗示がでるケースがチャート上にはしばしば表れる。それをすばやく読み取るノウハウを身に着ければ、鬼に金棒である。チャートの見方(第13講、第14講)で説明していきたい。

ヒット商品で業績を挙げてきた銘柄が下落相場に転じると長々と下落傾向を続ける。一気に、下落初期は激しく下げるが、その後は、二退一進の展開が続く。その流れが変化する場合には、それまでにはなかった材料が飛び出すか、市場の環境が変化するかのどちらかである。しかし、業績悪が完全に織り込まれない状況下では戻り相場は売り姿勢を貫くことが望ましい。

例えば、01年9月に米国で高層ビルに飛行機突入によるテロが発生した。これによって、米国の景気が低迷するではないかと悪材料視された。丁度、その年の5月から      ITバブル後の景気低迷で軒並み関連銘柄が下落を続けていた。そこへ、米国景気だけが国内の景気低迷をカバーする唯一の期待だったが、テロによってその期待も裏切られるということで、テロ後数日は大きく売られた。ところが、9月下旬には逆に半導体はじめITが猛然と反発しはじめ、12月まで大きく戻す相場が続いた。

これは、5月からダラダラ下落していた相場がテロによって、総弱気になり、それまでガマンしていた投資家が一斉に投げてしまった。つまり、売るべき投資家は全部売ってしまったということになる。需給関係が大転換したことを意味する。そこへ、米国での半導体受注の環境が好転しはじめたとの情報が入り、ハイテク銘柄中心に12月まで戻す展開になったのである。しかし、その後は個々の業績が良くないために、02年2月まで大きく売られている。

下落傾向が続いていた場合に、それに輪をかけるような悪材料が飛び出すと一気に整理が進み、買い転換になることが多い。逆に、上昇相場が続いていた場合の大きな好材料が飛び出すと吹き値売りということになる

さきほど、業績面で魅力がなくなった銘柄は下落するといったが、独自のヒット商品でそれまで好業績を続けて、その神通力が消えようとしている場合には下落は長期にわたる。

図8の任天堂はそれに当たる。この銘柄はヒット商品をもつ銘柄は大きく化ける(第6講)で説明した。ファミコンで業績を20年余りで100倍にも伸ばした銘柄だが、ここにきて、さすがに、ゲームの勢いも薄れ、業績は完全に頭打ちになっている。再起をかけた「キューブ」も02年に1500万台の目標を掲げたが、結果的には700万台と半分の実績しか残せなかった。ソニーのPS2が世界で4000万台の実績を残したことと比べれば惨敗である。好調は携帯ゲームの「ゲームアドバンス」という状況。しかし、それに追い討ちをかけるようにソニーは携帯ゲームに進出を決めている。すでに、任天堂は1998年以後、売上げの伸びは止まったままであり、安定収益型の企業になっている。すでに、株価はITバブル時期に24900円まで買われた後、下落傾向を続けている。

こういう銘柄は決して、値ごろ感で買ってはならない。現在8000円台から中国市場への参入を評価して戻して9000円台にあるが、だからと言って、安値圏という発想は通用しない。買い材料は独自の製品が大ヒットを続けていたことに魅力があって買われたことを忘れてはならない。ましてや、ライバルが次々と追い討ちをかけるように任天堂の事業を侵食する段階に入っていることを考慮すれば、業績が今後、過去の最高決算を上回ることは期待できない。そういう背景のもとでの下落であり、戻り場面は一貫して売り姿勢を続ける。実際に、下降トレンドは崩れていない状況にある。緩やかに下落しているか、急激に下落するかの違いだけである。

ナンピンと損きり

 以上のように株価は業績の盛衰で刺激されることが実際のチャートをみれば良く分かったと思う。その業績を左右する材料の大小でも刺激度合いが違う。そして需給関係である。そして、売り買いの決断はタイミングを合わせて実行するのである。

 そのタイミングであるが、基本的には業績が大幅に伸びることが早い段階で分かれば、ストップ高になってもそこで買えば後で利食いは可能になるもので微妙なタイミングは考えなくてもよさそうなものだが、やはり、短期決戦で投資をする際にはタイミングを計ることは欠かせない。細かいタイミングはチャートの見方のところで説明(第13~14講)するとして、ナンピン買いと損切りのことについて、説明をしたい。

 ナンピンとは難を平らにすると言う漢字でかく。難平と書いてナンピンと読む。書いて字のごとしで、300円で買った株を下がったところ、260円でもう一度買う。そうすると平均株価は280円になる。株数は2倍になったが、元の買値の300円で売れば、損がなく、逆に利益がでるという投資作戦である。上昇相場の過程で調整場面の時には非常に有効な投資方法である

が、下落傾向が続くと大きな損になる恐れがあり、全体の相場だけでなく、買った銘柄の流れを正しく読めないと失敗する。

それに対して、損切りは初めは上がると考えて買ったが、どうもその後の展開が違う展開になった。そこで、今のうちならば、大きな損が出ないと判断して売却を敢行することである。すなわち、先行きの大きな下落を予想して、早い目に処分することを損切りという。大きく下落した後で止むに止まれず売却することを投げという。投げと損切りとでは意味が大きく違ってくる。損きりは残った資金が豊富であり、再度、銘柄に挑戦できる。投げは下手すれば、資金がなくなり最悪の場合には再起不能の事態に陥る。しかし、損切りの後、株価上昇ということも多々ある。そのため、決断には相当の勇気が必要なばかりか、相場を読みきる高い能力も欠かせない。その意味で損切りができる投資家は一人前であり、プロ的な投資家とみられ、投資家仲間から尊敬される。

ナンピンも損切りも下落場面での実行になる。方や買い、方や売りであり、全く反対の投資行動になり、判断を悩ませる。

ナンピンは先ほどから何回も説明しているように、業績見通しが相当に良い銘柄の初期の段階において、急騰した後の下落場面で第一弾の買いを入れた後、更に、下落場面でナンピンをかけることが、最も有効である。それと、上昇トレンドに入っている銘柄の場合にのみ、ナンピンをかけることである。大きな相場が何ヶ月も続いた後に買いを仕掛けて下落した場合にはナンピンをしかけてはいけない。下落とも、上昇とも判断が難しくなるためだ。難しくなった場合には逆に、損切りをすることだ。このようにナンピンは上昇トレンドの過程の銘柄か、それまでの株価展開を大きく変化させる大きな業績変化、材料が飛び出した後でのみ、仕掛けることに徹することが成功する秘訣である。もちろん、その過程でも3回を越えるナンピンをかけてはいけない。また、予想とは違う展開になれば、躊躇なく損切りを敢行することを守ることである。

損切りは買いをはじめていれた場合に、損切りの目標設定をする。その値段に達した場合には即刻実行する。保ち合い圏にある場合、下放れをした場合にも実行。下降トレンドにあって、前の安値を切った場合にも即、実行。そのほか、自分の考えた展開とは違う方法になった場合には迷わず実行である。悪材料が飛び出した場合にも、「しまった」と思えば即、実行である。以前から申しているように、自分の常識と照らし合わせて、これは「おかしいぞ」と思った時には即、実行するのである。筆者は損切りの極意を「しまったらしまえ」ということを呪文のようにして覚えろと指導している。すでに、損切りについては第3講で説明しているが、売りの姿勢で非常に重要なことが損切りである。このことは肝に銘じてほしい。それが自分の財産を守る最大の防御であることを知るべし。

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