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1 どれだけ損切りできるか

目次

① しまったら仕舞え

 基礎編で再三にわたって損きりの水準を決めて必ず実行することを訴えてきた。「もう分かった」とおっしゃられるが、もう一度、応用編の一番はじめで是非説明させていただく。分かっているようで分かっていないのが損きりなのである。実行する段階ではついつい、官僚のクセではないが、先送りしてしまう。これができれば、後から説明していく実戦行動は非常に楽になる。いわば、損切りさえできれば、実戦では80%勝利したのと同じくらい極意を習得したことになる。

 個人投資家の方々は金額に関係なく、多くの銘柄をもっておられる。さながら、銘柄の百貨店のようだ。その全部は売却のタイミングを逸したもので、売るに売れずに持ち続けた集まりといえる。買い値の半値はまだましで、中には10分の1になったものもある。そうした銘柄をもっている関係で本来、1000万円の資金があるにもかかわらず、実働資金は2割や3割に過ぎない状況に陥っている。しかも、その残りの資金もいずれ同じような状況に追い込まれ、結果、ダルマ状態になって、

やむを得ず、新しい資金を投入し、改めてやり直す。しかし、新規投資資金を投入してもまた同じことの繰り返しになり、含み損を増やすだけのことであり、やめたほうがよい。それよりも、妥協できる損失をいかに早く処分する決断をするかが、大事なのである。しかし、「どこで切ればよいのか分からない」という声が実際の損切りの場合に問題になってくる。選んだ銘柄や所有期間によっても変わってくる。いずれの場合でも「切る」という決断を起こすときというのは、苦しみを味わうことになるのでどうしても気持ちが萎えてしまう。そんなことを考えているうちに、損きりができないほどの損失になってお決まりの塩漬けになる。

どんな銘柄を買っても、はじめは目標を立てて買うものだ。「50円上がれば売ろう」とか「チャートが買い支持になり、10%くらい上で売れそう」とか、「人気を集める材料があり、1か月くらい持って売ろう」などの動機で買う。利食いの目標はそのように楽しみをもって立てられる。ところが、その後、自分の見通しとは違った動きをすることが多々ある。ある程度は様子をみるものだが、どうも、その後の動きもよくない。「どうしようか」と躊躇し迷う。そういう時に最初から「ここまでくれば、処分売りをしよう」決め手おけば、悩む必要もない。損きりの目標値というものだ。それはそれぞれ個人差がある。5%ならば我慢できるとか、10%までならなんとか次の勝負でとりかえせそうだ。というように自分の資金の能力度合いに応じて実行することである。

なぜ、損きりするかという理由だが、損をできるだけ少なくすることで次の勝負で埋めることがたやすいことがひとつ。塩漬けにしてしまうと大きな資金が眠ることになり、戦力が大幅にダウンする。それを常に生かすことができる。そういうことを防ぐことが目的である。1000万円の投資家がほとんど100%近い資金を常に、運用できる状態であれば、非常に投資効率がよいことになる。持っているのは生きている銘柄とピカピカの現金のみという状況になる。そうすることで大きな成果を得られるチャンスも広がることになる。だから、できる限り損きりは果敢に実行すべきなのである。

損きりの実行パターン

 下値の目標を定めて損きりをすることが通常の損きりになるが、思わぬことで株価は急落するものだ。そういう場合にどう損きり対処するかについて説明しておく。

 業績が見通しとは違って、減額修正された時。売り気配から始まっても処分すべし。同様なことは減配、業務・資本などの提携破棄、長期にわたって業績を悪化させる事件、低収益状態での分割や公募増資発表なども「しまった」と思われるであろう。そういう場合に「もどってから売ろう」と考えずに、即刻売ること。それを総称してしまったら仕舞えと覚えておくこと。

 ただし、分割でも高い成長を見込める銘柄の場合には買い材料であり、公募増資も大きな新製品のためだとか前向きな材料のある場合には売りにはならない。また、事件でも短期的に業績に影響を与える程度であれば、一時的に売られるだけで、戻るケースが多いのでその場合には売られた場面は買いになる。次の項で説明するナンピン態勢をとることである。減配の場合でも記念配当や特別配当の部分を減配する場合には売り材料にならないこともある。

 チャート面からの売りだが、大陰線を描き、更に下落した時、移動平均線を大きく割り込んだ時、中段もち合いを下に離れたときなどは躊躇なく売ることでよかろう。それ以外にも売りパターンは数多くあるが、分かりやすい売り判断だけでよい。

 また、心理面での損きりも実行すべきである。後で説明する。

このように損きりの覚悟ができていると相場への参加は非常に楽になる。どんな銘柄でも極端にいえば、買うことができるのである。大きく上値を追っている銘柄でも、突っ込んだ銘柄でも自在になる。そういう意味で投資対象銘柄は非常に幅が広くなり、どんな場面も投資に参加することができる。

➁ 難平(ナンピン)は3度まで

ナンピンとは難を平らにする。すなわち、株価の平均コストを下げることである。はじめに、狙いをつけて買ったところが、予想に反して値下がりした。しかし、タイミングが悪かっただけで、株価がいずれ上値を追うことは間違いないと判断しているときに下落した場面で買い増しする。それをナンピンするという。上昇過程にある銘柄が一時的に調整期に入ったときには非常に有効な投資方法である。しかし、一度、天井をつけた銘柄でそれをすれば、損の上塗りという事態を招き、大ヤケドをしかねない。その見極めが非常に重要になってくる。しかし、天井か上昇過程かを極めるのは後でチャートをみて初めて分かるもので、その区別は難しい。

そこで、ナンピンははじめに買った水準を含めて3度で止めるというように限度を決めておく。そして、3度目のナンピンをかけた後にも、損切りをする株価水準を同時に設定することが欠かせない。そして、それを厳格に守ることだ。

はじめに選んだ銘柄が軽い気持ちで買った場合はナンピンをかけるまでもなく、5%も下落すれば損きりをしようとか考えて対処できるが、相当、自分で銘柄の選択にこだわった銘柄とか、信頼できる人から強く勧められた銘柄となれば、少しぐらい下落しても売却することはしないだろう。そういう場合にははじめから株数を多く買うために、なおさら、すぐには売却できない。そのため、株価が下落傾向に入ったにもかかわらず、トコトン追いかけてナンピンの回数も3回は愚か、5回、時にはそれ以上も仕掛けることもする。資金も当初の投資資金を使いきり、更に、貯金を下ろしても追撃する。そうなれば、何もみえなくなり、気がついたときには資金も尽きても株価はあざ笑うように更に、下落を続け、最後のナンピン価格よりも2割も3割も下でようやく止まる。そして、チャートをみれば見事な下落相場だったことを初めて知る。そうなれば、処分することも叶わず、結果的に塩漬け状態で泣くことになる。

どんなに自信のある銘柄でも心を鬼にしてトータルで3回以上のナンピンは絶対に避けること。そして、初回の買いも思い切った株数を買ってはならない。百歩譲っても資金の半分以下で初回の買いは止めることが望ましい。3回目のナンピンをかけた後には損切りする水準を必ず設定し、どんなことがあってもそこに到達すると問答無用の損切りを敢行すること。

筆者もそれは非常によく理解していながらなまじ銘柄の分析に自信があるが故に、ついつい下落して損切り価格を設定しても切れないことがある。投資家諸氏にそれを絶対に守れといっても100%できる方は達人であろう。しかし、それがどれだけ大切なものかを知ってほしい。銘柄選択よりもはるかに重要な投資行動なのである。

かつて、1999年にIT(情報通信)の大相場があった。その時に大きく化けた銘柄の中に光通信という銘柄があった。99年の1万円そこそこの株価が2000年2月には24万1000円の高値までつけた。その天井をつける前に買った投資家はものすごく大きな成果を挙げたのだが、儲けた投資家ほどその高値の後の下落場面ではもっと買おうとか、一旦、利食った後、チャンスとばかりその場面を狙う。もしも、下落に転じて20万円を割り込んだところを100株買ったとすれば、2000万円の資金が必要になる。個人投資家にすれば大変な金額である。その株価が3月にかけて急落することになる。アッという間に10万円を割り込むのだが、そこで売却よりもナンピンをかけた投資家がかなりみられた。20万円の半値になったのだから買いチャンスと思い込むのは無理からぬ判断ではあるが、その後も株価は戻ることもなく、5月には1万円を切るところまで暴落。下落傾向は止まらず、2002年の7月には895円の安値をつけてようやく底を入れる。実に、99.6%の下落率になる。ナンピンをかける資金のある人でも10万円を割るところでの資金は続かなかっただろう。この場合、99年からわずか1年の間に株価が20倍以上に買われたことを重視して1~3割下落は損切りという設定をして投げるべきで、18~14万円が損切りの分岐点になったはずだ。

こういうケースはめったにないのだが、ナンピン、損切りという場合には常に、処分する場合の株価水準を厳格に守らないと取り返しのつかない事態になることを知る上では強烈な光通信の例は大きな教訓となった。

ナンピンで成果を挙げられるか、損切りで処分するかというのは上昇局面か下降局面かの判断を見極めることが大事。損切りの姿勢のときに指摘したように「しまった」と思ったならば手仕舞え、の判断が結果的に重要になってくる。

③ 迷えば売れ

 投資家というよりも人間、自信のない時の決断は散々迷って、結果はたいがい良くない。買い物に行った時でも、あれも良い、これも良いといろいろ物色したあげく、店員の一言で乗せられて決めた商品はウチに帰ってまじまじみるとたいしたものではなく、「やっぱりあれが良かった」と初めにみた商品が一番良かった、などと後悔する経験があるだろう。

 株式投資も同じ。特に、二連敗とか、三連敗のように投資成果が続けて悪いときには、次の銘柄は失敗できないという強迫観念が強まるために、迷いに迷う。取り返さなくてはという意識が強くなるためだが、そういう場合には、「ダメでもともと」と軽い気持ちで挑戦してみることだ。ただし、株数をいつもよりも半分とか、三分の一とか

目標の株価も1割や2割の幅ではなくて、「5%程度でいいや」などとハードルを低く設定する。または、自分の好みの業種や銘柄とは全く違う銘柄や業種に挑戦してみる。もちろん、株数や目標も低くすることだ。要するに、負け癖を断ち切ることが目的の投資にする。それでも、迷う場合にはしばらく、投資を休むか、仮想売買などで遊んでみる。リズムが戻ってくれば、改めて挑戦する。

 買うだけでなく、売る時も迷う。買うよりも売りの方が通常迷うものだ。筆者は常に、売る場合でも目標をしっかり設定して、そこまでくれば、迷わず売れと口をすっぱくして言い続けている。もちろん、目標まで到達すれば厳格にその株価で売却することはいうまでもない。しかし、目標までにいくまでに、「どうも嫌な動きをしており、どうしようか」と考え込む時がある。そういう場合にも、迷わず売ってしまうことだ。

 株式投資に限らず世の中、自分の思い通りに行くことは少なく、うまくいかない方が多い。株式投資もまったく同じで目標どおりに常に、動くことは少ない。すべて思い通りならば、株式投資だけで生活が成り立ってしまう。何が何でも目標にこだわったり、銘柄にほれ込み目標を見失うことはロクな結果を招かない。たまに、結果オーライなどということもあるが、それは期待しないことだ。それよりも、「どうも動きがおかしい」と感じると即刻行動することが自分の身を守る最善の方法だということを知っておくことだ。冷静さを保ち、いわゆる、「しまったら仕舞え」の精神である。実戦する上で決して忘れないでほしい。「しまったら仕舞え」という言葉を常に、復唱しながら投資に向かってほしい。 

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