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3 仕手株に手を出すな

目次

①「チョッとだけよ」は怪我の元

 仕手株(してかぶ)と呼ばれる銘柄が時々、市場で話題を集める。これは特定の投機資金が特定の銘柄に集中させて短期的(時には長期)に急騰、急落を繰り返す銘柄のことを言う。時代によって特定の投機資金の性格は変化していく。1970年代以前は投機資金も材料の解釈によって、対立し仕手戦を演じたものだ。例えば、ある会社が新製品を発売するとしよう。一部の大手投資家は「それは売れる」とみて、大量にその銘柄を買う。しかし、別の投資家は「そのためには過大な設備投資が必要でその資金回収できずに収益確保は難しく失敗に終わる」とみて、そこそこ上昇したところでカラ売りを仕掛ける。特定の投資家がまったく違う解釈によって、売りと買いの戦いを繰り広げる。これを仕手戦と呼ぶ。今でこそ、優良大企業になっているが、ソニー、オムロン、シャープ、小野薬品、大和ハウスなどはその代表銘柄だった。企業が成長していく過程でその洗礼を必ず受ける。既存のイメージがどうしても投資の判断基準になるためで、「あんな会社がそんなことをできるはずがない」という考え方から抜け出せないために、急成長しはじめたときには仕手戦が繰り広げられるものである。

 1970年代後半から1980年代に入ると仕手株は業績の悪い赤字の小型銘柄を狙った銘柄の代名詞になる。赤字や業績が悪いために上昇するとカラ売りが入りやすくなり、しかも、小型株のために市場に出回る株数が少ないために買い方は需給をコントロールしやすい。100円台の低い位置からはじまり、1000円以上に化けさせるケースもいくつか表れた。有名な誠備グループの加藤氏一派、関西の不動産事業主の資金を中心に関西の有名仕手が結集した千里豊中グループなどは代表的な存在。そうしたグループに灰色、黒い色の資金がチョウチン筋としてむらがり、とんでもない相場を形成する銘柄が続出した。しかし、そういう銘柄は例外なく、もとの木阿弥となって高値をつけてから何分の一になっている。

 1990年代になると、バブルの崩壊によって、仕手集団も大打撃を受けるが、新手の仕手筋が現れる。バブル時に高値でつかんだままの銘柄を法人が大量に所有したが、その中には出来高が日頃ほとんどできない銘柄もある。処分しづらいことに目をつけて、その株の処分を引き受ける仕手の登場だ。例えば、時価500円で100万株持っていたとする。それを「市場で売却してあげましょう」と話し合いし、解体料として1株100円で引き受ける。仕手は手数料として1億円を手にする。その仕手はグループに450円で例えば10万株単位で分けてやる。時価の50円引きである。条件として分けた分の資金の何割かを市場を通じて買うことを約束させて引き取らせる。もともと、売り物の薄い銘柄であり、グループが集中的に買い上がると急騰する。上昇すれば買った分だけカラ売りをして売り抜けていく。いわゆる「解体」と呼ばれる売り抜け目的の仕手である。これ以外の解体方法はいくつもあるが、かくて、勧進元は5000万円が濡れ手に粟で儲かることになる。仕手グループも時価よりも安い価格で引き受けているために、損はない。

 2000年に入ると銀行融資を受けられない会社に海外の金融機関と組んで仕手筋は外債を発行させて、巧妙に投資家を巻き込んで転換促進による売り抜けをすることが流行する。所詮は銀行からみはなされた会社が苦し紛れに外債を発行して仕手筋のいいなりになって食い物にされる。その結果、倒産する銘柄もいくつかでている。

 仕手株は1980年代以降、時代を反映させるような新しい手を使って現れては消えることを繰り返している。しかも、タチが悪くなっていく一方である。

 投資家にとって短期で急騰する場面があるだけに、ついつい勧められると最小単位だけで乗ってみようとする。それこそが地獄の一丁目の入り口に踏み込んだようなものだ。最小単位のつもりが、つい、短期で儲かると次はもっと多く買おうと欲がでて、ついついのめりこんでいく。気がつけば全部の資金を投入して、そして、急落を経験しそれまで儲けた分が全部飛んでしまい、なお、追加資金(信用取引で買った場合、下落によって担保不足が生じた時に入れる資金)の追い討ちがかかり、更に、下落が続くことでついには投資資金すべてを失う結果になる。仕手株だけにちょっとだけよ、は絶対に通じない。さけるべしである。

 仕手株かどうかは業績も良くない上に、自然体の動きとはちがった不自然な動きをしている銘柄は怪しいとみるべきだ。上がる理由もどう考えてもこじつけくさいと判断できるものはそうした銘柄と判断してよい。

➁ カラ買いとカラ売りについて

下落相場が長期に渡って続いていると買いで利益を上げることは難しくなる。2002年の6月以降はまさに、それを象徴する典型例であった。日経平均は5月20日に1万1979円をつけて以後、米国の2001年9月に起きたテロの下落後の戻り相場が続いた後、不正会計の続出や情報通信不況が続くことで米国市場が下落傾向を強め、それに引きずられるように、日本市場も下げ足を強めていった。日本市場は米国市場の下落要因の上に金融機関の不良債権問題の処理の遅れからくる金融危機懸念が加わって外国人が金融株、ハイテク中心に売り続けた結果、日経平均は10月10日の8197円までほぼ一本調子に下落した。

 ハイテク株の業績見通しは2003年3月期には前期の赤字や低収益から回復を見込む銘柄が続出したために、投資家は下落途中に売る発想はなかなかできずに6月ころの下落した場面で逆に買って所有する人が多数を占めた。ズルズル下げる相場でも損切りのラインをしっかり決めて厳格に守る人は大きな難を逃れることができたはず。

 この6月から10月まで日経平均は32%の下落幅だが、ハイテク銘柄は半値や3分の1になる銘柄が続出し予想以上に被害は大きかった。そんな時にカラ売りをし続けていた投資家は笑いが止まらなかったと思われる。

 確かに、わずか4か月でそうした下落を演じたのだから、6月にカラ売りしてじっとみていれば、大きな利益と単純に思われるだろう。しかし、カラ売りは買いよりも3倍くらいのストレスが溜まるといわれる。ましてや好業績のハイテクをカラ売りすれば、毎日、ニューヨーク(NY)市場がどうなるか気が気でなく、毎朝、NYのダウを確認するまで緊張の連続だったと推察できる。そのために、カラ売りすると少しでも利食いになれば買い戻しをすることになり、一回の利食い幅は小さいのが特色である。そういう小幅の利益を何回も積み重ねていくが、株価が上昇すると売り上がりを仕掛ける。最小単位のカラ売りがナンピン売りあがり状態になる。結果として下落してくれると売りあがった分は余計に儲かることになる。

そういうことを繰り返していると、相場の底入れ後の本格上昇とそれまでの戻り高との区別ができなくなる。底入れした銘柄が反発すると上昇幅は大きい。もう一度下落しても底入れした株価は安値を下回ることがなく、改めて上値を追うことになる。カラ売りをしているとそれに気がつかない。上がってはカラ売りを続けることになり、売り株数が膨らみ、含み損が増大し、担保不足に陥り、ついには、カラ売りの強制的な決済を迫られ、すべてを失うことになる。カラ買いは失敗しても株券を現金で引き取ることができる逃げ道がある。カラ売りは株券をもっていないで売るために、決済以外に逃げる手立てがない。そういう意味で失敗した時のリスクは買いよりもはるかに高い。カラ売りは現物の株券をもっている人がそれを担保でお金を借りている時には売りたくても売れない。そんな時にカラ売りをする程度に使えといっている。一般の投資家はいくら儲かると思っても「禁じ手」としてどんな時でも実行してはならない。そう割り切ってほしい。

カラ買いもいきなり利用することは感心できない。やはり、基本は現物株でできる限り売買することである。現物株での売買も投資金額全部をいきなり投入しないで、基本編でも説明したように半分くらい、大きく譲っても70%くらいの資金の範囲内で売買する。

1000万円の投資資金であれば、常には500万円~700万円の投資金額で売買する。もちろん、銘柄の選択とタイミングをみて、その金額のうち最初は3分の1だけで買う。下値がくれば更に、3分の1買うというようにナンピンを入れる。というように値段を分散させて買う。その範囲に達してなお、ナンピンをかける場合に一部カラ買いを利用する。そこまで下落すると損きりの設定に達することが多く、判断が難しくなるが、銘柄の選択によって判断を決めるしかない。時流に乗る製品で大幅な業績好調見通しのある銘柄はナンピンも良いがそれほどの銘柄でない場合には損きりを考えるべきであろう。損きりもすべて売却せずに、とりあえず、半分程度を処分し戻りを待って残りを処分する覚悟で対処すればよい。

ナンピンと判断して最後の下値でカラ買いしたのであるからカラ買いが一番安いということになる。そうして戻りはじめるとカラ買いがすぐに利食いになるので、まず、それから利食いをする。そして、元の現物だけもっておくのである。

カラ買いはめったに利用することは好ましくない。利用する場合にはもっとも安い株価のときにやむを得ずに利用することである。利食いになった時点ですばやく外すことである。それさえ、心がけておけば2004年の4月26日から立会い日数がわずか12日で13.6%も日経平均が急落した際でも大きな被害がなく乗り切ることができたのである。この急落で信用取引をしている投資家のほとんどが追い証を経験したといわれる。某ネット証券では店内信用買い残があっという間に20%も減ったという。常々、信用買い(カラ買い)ばかりをしているとそうした悲劇から逃げることができずに、泣かされることになるのだ。

信用の期限が無制限ということを売り物にしているネット証券があるが、この利用はなるべく控えることが好ましい。6ヶ月超えて利食いにならないということは勝負に負けたと判断すべきであって、6ヶ月決済の通常の信用買いよりも高い金利を払ってまで粘るべきでないと思う。

カラ売りの利用は論外だが、カラ買いも安易に利用すべきではない。基本はなんといっても現物である。

投資家の中には両建てといって同じ銘柄を買いと売りを同時にする人がいる。上がるかもしれないが、下がるかもしれないというどっちつかずの判断でするため、両建てする。株式先物ではしばしばみられる。これは振幅の激しい銘柄には有効な作戦にはなるが、大抵はスカタンな結果で終わるのがオチである。買いか売りかわからない時にはその銘柄は敬遠するのが一番なのである。

③ すばやく決断を

仕手株は手を出さないことが基本であるが、連日、急騰を続けるとついつい買いたい衝動にかられてしまう。投資仲間が仕手株で儲けた自慢話を聞かされてしまうと買わなければ損したような気持ちになるから不思議だ。フラフラと買ってしまったとしよう。自分が買うまでは勢いのよい動きをしていたのに、買った瞬間にピタリと動きが止まってしまうことを経験したことがあるだろう。そんな時には「しまった」という心理になり、急に、暴落するのではないかと不安になる。今までの自分の勢いはどこかへ吹っ飛んでしまう心理になる。そう思ったときにはちゅうちょなく、勝負から降りることだ。それを思い起こして、「いやいや、これからまた上がってくるからここはガマン」と自分に言い聞かせる。そこには冷静な判断は存在しない。目的もなくただ上がることだけを信じているみじめな自分の姿があるだけだ。すばやく、「しまったら仕舞え」を思い出して処分をすることである。

④ うわさ話や手口を信じるな

 仕手株につきものはうわさ話である。「どこそこの有力筋が明日ストップ高させる」とか「有力材料が大引け後に発表される」などといういかにもありそうな話がどこからともなく舞い込んでくる。現在ではインターネットでその銘柄の掲示板にそうした類のうわさ話が載っている場合がある。大抵の場合にはうわさ話が本当になった場合はない。カラ売りしている投資家を狼狽させるためとか、その逆の買っている投資家を投げさせるための悪材料を流す場合がほとんどである。

 特に、しばしばうわさになるのが、特定の仕手筋が大量に買ったという話。これから買うならば話もおもしろいが、まだ買っていない前からわざわざ教えるアホウな仕手もいないだろう。大量に買ったという話もまるで見てきたようなことを言って吹聴する投資家もいる。数年前に活躍した投機家の西田春雄氏が介入した銘柄にはそういううわさが流れたものだ。彼は現在でも活躍中であり、数少ない仕手の生き残りである。直近では大阪2部のキムラタンの相場で成功している。  

本来、誰々が買うという話で買う動機づけにしてはいけない。いわゆるWHO(だれ)ではなくて、WHY(なぜ)で材料をたずねて投資判断とすることが絶対的な基本であることを肝に銘じるべきである。なぜ買われるのか?という理由を重視するのだ。仕手の誰かが買ったでは理由にならない。誰もできなかった新技術を開発したために買ったというような材料で判断を決めるのである。誰が買ったといううわさが流れたときにはその誰かはすでに売り抜けていると決め付けることで、それに手だしてバカをみるのは自分と思うべし。

手口についても同じだ。やたら手口を詳細に調べて投資判断にする投資家もいる。仕手筋の注文がでる特定の中小証券の手口がみられると飛びつく投資家だ。仕手筋は巧妙で特定の証券会社を使っているように見せかけては別の店でちゃっかり売却していることが多く、手口をわざとみせてチョウチンを誘うことがうまい。また、最近では外国人の手口をみてチョウチンをつけるケースもみられる。「有力アナリストがいる某外資系証券は当たり屋だ」といってその手口が出ればとにかく買う。そればかりを追っかけることである程度の成果も得られるが、振り回されるだけで、その銘柄を正しく判断できなくなる。大きな相場に発展する可能性のある材料で買っているのか、目先的な動きで買っているのか分からないために、どんな銘柄も目先の20円や30円ほど上がれば売却するパターンにはまってしまう。また、手口にこだわるととんでもない目にあうこともある。

もう、十数年になるが、筆者の友人が仕手株大好きな投資家で何回も「いつかひどい目に合うからやめろ」という忠告も聞かずに、それ専門の投資を続けていた。しかし、時代がよかったせいもあり、損もあるが短期で儲かる醍醐味を味わっているため、一向にやめることはなかった。ある製紙大手の銘柄を1500円台で買って以後、何回もその銘柄を売ったり買ったりしていたのだが、3000円近辺でこんなに上がるのならば、まとまって買おうとなって、5万株を買い大勝負にでた。5000円になったときに「よし、全部売って利食いだ」と決めたのは良かったのだが、たまたま、手口をみた。すると、なんと5000円近辺で数百万株の買い指値が入っていたのである。それをみたとたん、「売るのはやめだ。逆に買いだ」と判断して追撃買いをし、5000円で思い切って10万株を買ったのである。その銘柄は5020円という歴史的な高値をその直後につけると、一転して下落しはじめ、アッという間に3000円台まで急落し、2か月後には2000円で落ち着くことになるが、戻ることもなく、そのまま翌年には1000円も割れて、後は200円まで1年余り時間をかけてたどりつく。

「その友人はどうなったのかって?」彼はそれまでの利益をもちろん吹き飛ばし、急落になすすべもなく2000円台で全部投げた。それでも良かったのである。そこで投げたのはたまたま家を新築していたので、その資金がどうしても必要なために、売却したというのだ。もしも、新築しなかったならば、すべてを失っていたことになる。家のおかげで最悪の事態を逃れたことになる。彼はそれ以後、株式投資をすっぱりとやめた。相当懲りたのであろう。

このように手口によって判断を狂わされた例を挙げた。下値に大量の買い物が入っていても売られるときには何の意味もないのである。売られるときは売られるのである。うわさ話や手口などというのは投資判断を迷わせるだけで決して重要視しないことである。

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