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第15講 総集編 これまでのまとめ

14回にわたって、基礎編としての相場に臨む前の姿勢、応用編としての銘柄選択、そして、実際の売買のための戦略編として、説明を続けてきた。すでに、投資家の方々は基本的な知識や用語はご存知として説明したので、はじめの経験の方々には難しい内容であったかも、知れない。この講座の特色は過去、投資家の方々が自分の投資方針では間違いなく損をしていることに対して、なんとか、利益を出せる投資家になってほしいために開設した。この講座で学んだことを実行すれば、それでは「確実に成果を挙げられるのか?」と言われると「絶対です」とは答えられない。しかし、過去の投資家の方々の投資作戦よりはより確実な成果を得られるとは断言できる。

この講義は筆者が業界紙の記者として30年間にわたって有望銘柄を探し続ける過程で得たノウハウを投資家の皆様に公開したものである。業界紙の記者といえば、なんとなくガラが悪く(実際にそうかもしれない)、仕手株ばかり推奨しているとみられがちであった。しかし、筆者は誰でも市場の流れを的確に捉える銘柄の選択方法は必ずあるという信念のもとに銘柄研究し、このような銘柄発掘方法が相場を乗り切る上で適切ではないか、という結論になり、この講座にまとめてみた。筆者はこの方法によって実際、銘柄発掘をしている。おおむね、そこから発掘した銘柄は市場全体が下降局面にあっても、それに引きずられることなく、上値を追いかけるケースが多くみられており、基本的には正しい銘柄の発掘方法だと思っている。

さて、もう一度復習してみたい。

 まず、基本姿勢。投資に臨む前に是非、実行しなければならないことはまず、資金の性格がどうかという点だ。資金の額をいっているのではない。基本的には資金はいくらでもよい。多ければ多いなりの投資作戦をすればよい。少なければ、それに応じて対処すればよいのだ。問題は絶対に使ってはならないお金で投資してはいけないこと。退職金、結婚資金、住宅資金、学資金、教育資金、生活費、などを投資に回してはいけない。失敗した場合には取り返しがつかないためだ。投資資金はあくまでも余裕の資金ですることである。「株式投資で良い銘柄があるから・・・」とおいしそうな話を聞いたからその資金の一部一時的に回そうなどと決して考えてはならぬ。

 余裕資金での運用を決めても、投資はその全額を使ってはならない。常に、その3割とかを現金に置いた状態で投資をすること。それと銘柄をむやみやたらに多くもたない。せいぜい3~5銘柄まで。そして、重要なことは買うと同時に目標設定をすること。どこで売りをするかを決めるのである。それは利食いの売り目標だけでなく、損きりをする価格も同時に決めてそれを確実に実行するのである。ナンピン買いも三度までが限度。

 以上のような基本的な姿勢を明確にして、初めて銘柄を探すのである。銘柄の探す最初の注目点は市場の支配者は誰かを特定することである。外国人、個人、法人などの主体を確認する。そして、彼らの好みの銘柄の中から銘柄を選択するのである。その際、絶対的に業績を重視すること。そして、その業績がどのくらいの変化するのかをみる。前期が赤字で今期が大幅黒字になっていれば、赤字を気にしない。ただし、繰越損や債務超過などの銘柄は避ける。また、好業績がヒット商品なのか、新製品、新技術なのかをみる。それらは新しい風を企業に呼び込むために、株価を刺激するのである。つれて、積極的な設備投資をしているかどうかも重要なポイントになる。

 また、株主優遇が期待できるのかどうかも基準のひとつになる。それと会社側の姿勢が意欲的かどうか。それらを総合して、最後に、タイミングを計るために、チャートをみる。これは需給面も計れる。そのような準備を十分に調査して銘柄に臨むことを決して、忘れてはならない。

 このセオリーに固執することも好ましくない。自分の常識で判断して、これはちょっとおかしいとの疑問をもてば、躊躇なく処分することも覚えておくことだ。

 このようにして、銘柄を選択し買いを敢行することで過去の自分の投資作戦の失敗から抜け出すことが可能になる。

 それと仕手株に関していえば、どんなにおいしい話であっても乗ってはいけない。何の材料もない銘柄を高値にまで上昇しても所詮は腕力が力尽きるのがオチで後は惨めな暴落が待っているだけである。

 銘柄は万人が納得する材料があってこそ、上昇が持続するものだ。すべては東洋機械金属、日本医薬品工業、ハリマ化成などが証明している。

第14講 投資戦略5 売りサインのチャート

下落基調を確認して対処を

買いのサインを前回、説明した。底入れ形成にしばしば現れるチャートを中心に説明したが、上昇過程に現れる買いのサインも古来からいろいろなパターンがみられる。しかし、それが確実に上値を追うものかどうか判断がつかないケースも多くみられるために、今回は削除した。底入れ形成後に現れる場合の方が高い確率とみて説明したわけだ。

株式投資で利益を確保していくことはそれこそ、至難の技であり、投資家の皆様にお伝えしようとする場合にはあいまいなものはすべて削除しなければならない。特にチャートは買いのサインとみれば、逆に、売りだったということが多々ある。しょっちゅう、買いのサインがでて、そのたびに買い注文を出していたのでは切りがない。成果も不確定である。上値を確実に狙える場合のチャートだけを追えば、良いのである。その可能性の高いのが底入れ形成後の買いのサインとみたわけだ。

もちろん、何回もいうが、チャートだけでの株式投資の売買はご法度である。あくまでも、その銘柄のもつ収益性とか、材料、需給関係などを考慮して、最後にチャートで判断するのである。いわば、チャートはすべての準備を終えた後の出動のタイミングとみるべきなのである。

演劇の練習を重ねて、いざ、公演をしようと決めても、公演場所が遠かったり、雨が続く梅雨時にしてもお客さんがこない。やはり、晴れの日、駅に近い場所を選ぶだろう。準備万端でも最後のツメが甘かったりすると何にもならないのである。

そうして買い出動する。では、売りはどうするのか。一応、売りは買った時点で目標設定をするが、その前でも売りのサインがでれば、売却も考えてもければならないが、その銘柄の上昇位置とか、材料の大きさ次第では、そのサインを無視してもよい場合がある。日足の場合、売りのサインがでても1週間程度で調整が終わり、逆に、買いサインが現れるケースも多々ある。その銘柄のもつ材料によって、それは決まってくるためだ。

それでは売りサインのチャートについ主なパターンを取り上げて説明していく。

大黒線

大黒線とは上昇局面で一気に大陰線で叩き込む。大天井形成を意味する。それまで、相当上昇ピッチが早かった場合にこの線が現れると躊躇なく即刻売り。戻るだろうと考えてしばらく待っても無駄で、大陰線の寄り付き値までの戻りはありえない。1ヶ月や3ヶ月では戻らない。底入れまで下落幅も相当大きくなることが予想され、「しまった」と思えば手仕舞えの格言を即刻実行する以外に逃げ道はない。(図B1)

こういう線がでる場合は好材料をしたから織り込み、2倍とか3倍まで買われて、最後に人気が沸騰した後に、突然、大黒線が現れるケースと上昇過程で突然、悪材料が飛び出し一気に下落局面を迎えたというケースが考えられる。業績や材料面で魅力のある銘柄でそういうチャートがでた場合には大きく下落しても、調整期間が短く、改めて出直ることもありうる。しかし、仕手戦で空売りと空買いの取り組みが拮抗した状態で上昇してきた銘柄でこのチャートがでるととりあえず、即刻退却することである。問答無用の売りということになる。

図B2のソフトバンクのチャートを見ていただきたい。5000円台に乗せた後、一気に急騰しアッという間に7000円台に乗せた後、今度は900円の長い大陰線が現れた。これが大黒線である。その翌日には高く寄り付き、7000円に届こうかとする寸前で改めて売られ、一気に下落し6120円で引けた。更に、その翌日は売り物から始まり、マドを空けて急落し、ストップ安の5120円で引けた。その後もわずかに戻す場面があるものの、3000円台まで下落が続く。大黒線の寄り付きまで戻ることなど夢のまた、夢という急落相場である。典型的な天井形成をみせたことになる。

したがって、大きく上昇した後に、大黒線が現れたときには即刻売りを敢行することが望ましいと言えるだろう。

カブセ

カブセは相当上昇した局面で前日の陽線よりも高く寄り付いて、大引けにかけて、一気に前日の陽線の中で引けた状態。上から叩き込むような形で大陰線がカブセてくる格好になる。これをカブセと呼ぶ。図B3

カブセが現れると確かにその後、下落局面に入る。しかし、そのまま、反発らしい反発もなく、下落状態を続けるケースがある一方で、一旦下落してもしばらくして、反発しはじめ、ついには、このカブセを抜いてくるケースもある。その場合には買いサイン(カブセを大きく抜く形になった強力な買いサインになる)になる。つまり、上昇余力を残した銘柄となり、一時的な調整にすきなかったことになる。このように2つのケースが考えられる。概ね、前者の下落パターンが続くケースが多いと考えられ、やはり、こパターンが現れると売りを敢行することが無難であろう。さきほどのソフトバンクのチャートに現れているが、このケースは調整した後に、カブセをとる買いチャートがでたことで、逆に、上値を大きく上回る展開へと大転換したケース。

三羽烏

三羽烏は上昇過程において、陽線の後、翌日に陽線の引け値とほぼ同じ値で寄り付いた後、陰線で引ける。それに続いて、2本連続して陰線で小幅下落した状態。すなわち、3本の連続陰線を指す。三羽の烏が不吉な予感を呼びそうないかにも下落を暗示する名前だ。図B4

 このチャートはその後の下落局面が続いても、それほど長くない。大幅な上昇をみた後や更に、追い討ちをかけるように大黒線や陰線が続くというパターンでもない限り、大きな下落を意識することはない。上昇初期

波動で三羽烏がでたとしても、押し幅が深い程度と考えても良いだろう。その後、買いのパターンが現れたときには素直に買い転換してもよい。

図B5のNTTドコモの三羽烏は天井形成の直後に現れたことで、その後の展開は反落傾向に支配され続けている。典型的な三羽烏後の下落相場になった。しがって、このチャートはとりあえず、退却してみることが重要である。ここでの売りは買っていたとしても、大きなケガが少ないというものであり、決断も早くとれるのが救いであろう。

はらみ十字

長い陽線の翌日にトンボが陽線に止まっているようなチャート。それがはらみ十字と呼び、一旦、退却のパターンになる。図B6

このチャートは売り形成になるものの、決定的な売りとは決め付けられないこともある。当面、売り訪印だが、大陽線の中で株価が推移するようであれば、売りを待つことも悪くはない。決定的な売りは大陽線の寄付き値を下回った時だろう。陽線の線の中で数日、小動きして、陽線の引け値を上回ると場合がある。これは買いパターンになる。すなわち、上値遊びの形になり、逆に買いとなる。したがって、はらみ十字は大陽線の下値を切るかどうかで売りを決める作戦でも良い。

大林組のチャート図B7のようにあっさり陽線の寄り付き値を下回ったケースは下落パターンになっている。チャートは売りのサインであっても、展開次第では必ずしも、そうなるとは限らない。それだけに、判断が難しく、チャートの判断だけではその株価の動きは読みきれない。それを常に、頭に入れて売り買いの判断を機敏にするべきである。

下放れ2本黒

下落過程が続く中で、更に、下に放れて、2本の陰線が連続の形で現れたケース。これは、更に、大幅な下落が続くことを暗示する。「ここまで、下落したのに、まだ、下落するの?」と非常に厳しい判断を迫らされる売りのサインである。売りのチャンスを失い、戻りわ待っている段階でこのケースは引導を渡された幹事で、死刑宣告にも等しい。それがこの下放れ2本黒であり、残酷なサインである。しかし、それを無視すると、更に、ケガが大きくなると思われるので、従うことが賢明のようだ。図B8

 このチャートもソフトバンクのチャート図B2にハッキリと表れている。7000円台から下落傾向が続き、4000円でこのチャートが現れたのである。すでに、売りのチャンスを失っている状況にあり、さすがに、この局面で売れというのはまさに死刑宣告に等しい。しかし、その後、3000円割れまで下落が続くことになり、売りは正解になっている。もうここまで下落しているのに、という判断は避けたほうがよさそうだ。

反逆線

下落局面が続いてる途中で、寄り付きから売られて、下放れた後、引けにかけて戻し、前日の陰線の中まで入って、陽線になる形。比較的長い陽線になる。図B9

 このチャートも注意して判断しなければならない。下落の日数が浅い場合には、このチャートが現れると戻り売りの作戦でよかろう。しかし、3ヶ月以上の下落が続いた場合には必ずしも当てはまらない。相当下落した後に現れる差込線と解釈できるためだ。差込線は前日の陰線の翌日に、寄り付きから大きく売られて、安寄付き値をつけた後に猛然と戻り、前日の陰線に差し込む形。反逆線と同じだが、相当下落し、日数も経っている場合には底入れ形成を意味する。このケースの買いは前日の陰線の寄り付き(頭)を抜いて、翌日に陽線が入れば確認したことになる。その判断が難しいが、基本的には戻りを売る姿勢でよかろう。ソフトバンクの図B2にでたのは反逆線のケース。

陽の陽はらみ

上昇過程で伸びきったところで大陽線にもうひとつ陽線がはらむ形。いかにも、翌日から高いと思わせる形だが、これは天井が近いことを暗示する。即刻売りという火急さはないが、まもなく、大きな下落がありますよと警告してくれる。ありがたいご託宣のようなチャート。素直に売りをすれば、ケガもなくてすむ。このパターンは是非、記憶してほしい。少しくらい上昇した後に現れた場合には天井暗示ではないので、選別すること。図B10

これも典型例がソフトバンクによく表れている。何だか、ソフトバンクは売りのチャートのバンク(銀行)みたいになっている。大きな陽線がでてそして小さな陽線がはらんだ。その翌日も高値を保ったのだが、その更に翌日には大黒線がでて、一気に急落を演じた。陽の陽はらみがまさに、天井を暗示したことになる。
これをみて、即刻売っておれば難を逃れた。伸びきった相場の場合にはこのチャートには注意することである。

最後の抱き線

相当上昇相場が続いた後に、陰陽の小さな線の翌日に大陽線が抱き込む形で現れたケース。いかにも、ここから大きく上昇するようにみられるが、それがクセもので、翌日の陰線をみて、退却を決める。これも天井を知らせるチャート。素直に天井とみて速やかに売却することが望ましい。少しぐらい上昇して現われた形は本物ではなく、むしろ、買いになる。相当、上昇して伸びきったところで現われたものが本物。図B11

 図B5のドコモに表れているが、このケースは上昇幅がそれほどでもなく、判断が難しい。しかし、その後に、三羽烏によって天井が確認されている。事実上、三羽烏で知らされたケースといえよう。大幅な上昇したケースに限って、売りが知らされることを覚えておくこと。ドコモの場合で、もしも、大陽線の中で小さい陰陽線が6本程度続き、上値をとってくると上値遊びになり、買いとなる。やはり、大陽線の寄付き値を下回った状態で売りと判断すべきであろう。

上放れ十字

 これは別名、天井形成の捨て子十字と呼ばれる。大きく上昇してきた展開の後、いきなり、寄り付きから買い物を集めて高く値がつきその後、もみ合いになって、結局、寄り付きと同値で引けた場合。翌日の陰線を確認して売りと決める。その十字線だけをみて、売りと決め付けてはならない。必ず、翌日の陰線を確認して売りを決めることが望ましい。翌日、陽線がでた場合には一段高のケースもあり、あわてて判断しないことである。図B12

 実例では図B5のドコモにも現れているが、より、ハッキリした形は図B13の積水ハウスにみられる。相当下落した後の下放れでの十字は買いのサインになるため、この捨て子線は天底の兆しと呼ばれている。通常、しばしば現れる十字線は転換線とよばれており、大天井、大底のサインではないにしろ、それまでの動きが逆になるというサインとして知られている。また、小動きしていた時に十字線が現れると大きな動きに変化する意味もあり、それまでの逆の動きになるだけの意味ではないも知っておくこと。

以上、売りサインのチャートについて、主なのを説明した。説明の途中で何回か指摘したが、チャートが売りサインを示したからといって、必ずしも、そうなるとは限らないことを常に、心がけておくことである。日足の場合には売りとでても、大黒線のように決定的な売りなど、暴落を暗示するチャートを別にして、売られてもそれほどの日数を置かずして、買いサインが現れることもある。

そうした区別は銘柄のもつ業績や材料がどのくらい株価に織り込んだのか、また、投資価値で判断して、一旦、売られたものの、調整して新たに買われることもあるように、銘柄のもつ実力と関係が深い。長期上昇波動での調整安のケースなのか、短期急騰後の大幅な反落で相場が終焉したのかの判断はすべて業績、材料の大小できまる。その意味で売りを仕掛ける場合には銘柄を良く知ることが大切なのである。チャートだけで判断すると危険というのはそういうことを意味するのである。

カラ売りについて

売りについて説明しているが、勘違いしてほしくはない。カラ売りを仕掛けろという意味ではない。カラ売りとは売買のはじめを売りから入って、後で買い戻すことをいう。株券をもっていないで売るので空(カラ)売り、すなわち信用取引新規売りという。株価の3分の1の担保売ることができる。もっていない株券を売るために、どこかで株券を借りてこなくてはいけない。証券会社を通じて日本証券金融や大阪証券金融から借りてきて売るのである。金利を支払うのでなく、金利をもらえる。

カラ売りは筆者は禁じ手と決めている。売りは株価が下落すれば儲かる仕組みだ。しかし、見通しが狂って株価が値上がりすればどうなるのか。損失となる。出世株とは知らないで、値下がりを見込んで売るとどうなるのか。200円の株価が400円になったり、600円になったりする。場合によっては1000円まで上がったりする。最長6か月でカラ売りは決済しなくてはならない。(松井証券では無期限というものもある)決済時に600円にもなっていると泣く泣く400円の損失で決済しなくてはならない。うまく、下落したとしても、最大で200円幅だが、それは倒産したときだけであり、実際上は100円幅を取れるかどうかというもの。上げる材料を無視して相対的に高いと判断してカラ売りを敢行すると大やけどをすることになる。

一方の買いは信用取引(カラ買い)で買って6か月の決済期日が到来しても現金で株券を引き取るという手があり、持ち続けることができる。このように、カラ売りは失敗すると実損を出す以外にないのに対して、カラ買いは逃げ道が残されている。そのような意味からカラ売りは禁じ手としている。事実、かつて、カラ売りを専門にしていたプロの投資家は「買いよりも神経をすり減らす」と語っており、あまり、体によくないようだ。

したがって、売りの説明はあくまでも利食い売りか、損きりのときの対処として使うことを強く訴えておきたい。

第13講 投資戦略4 買いサインのチャート

チャートは何をみる

 ここで説明をするチャートとはロウソク足で毎日、記録した日足をみて買いのサインが現れた場合に、とりあえず、買ってみる。日足を使う理由はその日だけの動きを記録するために、その時々の強弱を正確に表している。週足、月足などは何日間の動きをまとめてひとつのチャートに記録されるために、必ずしも、正しい判断がしづらく、即効性に欠ける。中期的な傾向としてみる以外にない。「今日、買い線が出た」と判断すれば、翌日に行動できる。週足だと月曜日にならなければ行動が取れない。日々の動きで的確に売り、買いができるのは日足を置いてほかにない。半日足などいうものがあるが、そこまで、追求すれば切りがない。もちろん、株価だけの記録だけでなく、出来高も丹念に記録していなくてはならない。出来高は人気のバロメーターであり、出来高が少ない時に買いのサインが表れた場合よりも多い場合のほうがより信憑性が高い。出来高を必ず、記録することによって精度が高められることをよく知っておくことが大事だ。

 日足を重視するのはもともと、このチャートの始まりが週というものがなかった江戸時代の米相場の動きを記録したことと関係する。毎日の動きを研究して、これが出れば買い、売りという判断をしたのである。したがって、日足によってチャートは判断すべきと考える。

 日足であるが故に、買い信号は短期勝負になる。売りのサインがでても、悲観することがない。売りはせいぜい一週間で終わり、次には買いのサインがでる場合も多い。短期勝負に向いているのである。

 買いとみられるサインはいくつもある。必ずしも買いとはいえないケースも多々あり、いちいちそれに従って買いを続けているとお金はいくらあっても足りない。そこで、買いサインの中からポピュラーに良くチャート上に現れ、しかも、比較的確立の高いサインを10パターンを選んで説明することにした。


図10

 チャートの見方を図10に表してみた。陰線、陽線によって組み合わされたものがローソク足のため、始値、高値、安値、終値の4つの株価によって構成される。時には4つの株価が同じ場合や、始値、終値が同じものなどもある。それらもローソク足として記録されていく。その集合体の具合によって、買いのパターンがいくつか表れていく。その中から比較的その後の上昇率の高いパターンから順番に説明していく。

カブセを一気に抜く

このチャートの形がでた場合には積極的に買いにでてもかなりの確率で勝利できる。

図11がそのパターン。上昇した後に、大陰線によってカブセる形で大陽線に襲い掛かり、それまでの相場は終わったと思わせる。そして、しばらく調整に入り、下落展開になる。ところが、その後、改めて上値を取り始め、このカブセの水準まで戻した後に、一気に大陽線によって、カブセを突破する。それまでの展開がカブセをとるパターンとなる。非常に強いチャートでその後の展開はほぼ100%上昇している。15%程度の値幅ならば一週間以内で勝利が可能である。実例をみてみよう。

図12のNECは6月にカブセがでて、一旦、反落する。しかし、6月末には一気に、それを抜いてからはアッという間に800円台まで突っ走る。このように抜ければ、ハンパでない上げが期待できるのが、カブセを一気に抜くチャートの醍醐味である。これは本来、大陰線のカブセが現れることは売りサインになる。それを一気に覆す買いのパワーが現れたことは相当強い腰の入った買いが現れたことになる。それゆえ、売りが逆に買い転換しなければならないのだ。同じようなパターンは03年の7月に日本精工、JFEにも表れており、その後の相場で大きく値上がりしている。私はカブセを一気に抜くチャートが買いサインの中では最強ではないかと思っている。なかなか、そうはいうものの、簡単には買いを実行できないが、もしもしのときのために、期待はずれになった場合には損きりする下値の目標をあらかじめ決めていけば、悩むことはない。すでに、目標設定をしてから相場に臨めとは何回も指摘しているはずだ。

上値遊び

上値遊びは図13のようにある程度上昇し、大きな陽線がでた後にその陽線

の中で小さな陰線、陽線が混じって6~12本続く。そして、大陽線を突破する新たな陽線が現れた状態を上値遊びという。筆者は自分が記録をつけている120銘柄の中で過去2年間(03年7月まで)の上値遊びのものを調べてみると12パターンがあった。その後、1か月以内にすべてが上昇しでいる。最低10%幅で最大100%幅(つまり、2倍)であった。「上値遊びは大相場の前兆なり」と古来からいわれているのは的外れではない。

 14は合同製鐵の典型的な上値遊びのチャートである。今年5月に現れたものだ。その伏線は決算発表によって、今期の業績が前期の2倍半になると予想がでて86円から103円まで急騰した。その翌日も引け値111円と続伸した。それから6本小さく動き、7本目から113円と111円の終値を抜いて上値遊びを突破する展開になった。それ以後、ほぼ一貫して上昇トレンドを続け、7月には270円を越すまで買われた。

 このほかでも上値遊びから抜け出すと大相場に発展したケースがいくつかみられる。遊びの小さな動きが少ないよりも、7~10本程度のものが後の相場が大きいケースがしばしばみられる。これは遊んでいる間にエネルギーが蓄えられ、一気に爆発することが要因として考えられる。しかも、比較的相場が若い時期ほど上値遊びは相場を大きくする。したがって、このパターンがチャート上で現れた場合にはとりあえず、買う姿勢を高めると有効である。

底値離脱を暗示の赤三兵

この赤三兵は底練り段階が終了し、次の相場の展開を暗示してくれるチャートとして知られている。赤とは陽線を意味し、陽線3本がじり高の形で並ぶ形をいう。図15

実例は2003年4月末に富士通の株価に現れている。(図16)見事な赤三兵である。4月中旬に300円で底入れした後、反発し、改めて下落して、赤三兵が形成された。それからアレヨアレヨという間に上値を追っかける展開になり、1か月後には400円台に乗せている。短期で30%の上昇のケースは少ない。2003年の3月までは18%の上昇率になっている。特に、02年12月に多くこのチャートが現れている。相場全体が下落基調にある中で、早くも先行きの相場が高いことを暗示していたことになる。つまり、赤三兵は底入れのサインと同時に、先行きの明るさをも知らせてくれる吉報でもある。その意味で赤三兵は大いに参考になる買いサインとしてみて頂いてよい。

捨て子十字線

捨て子十字線。何やら物騒な名前のついた線である。捨て子とは穏やかではない。図17のように下落基調が続く

過程で急に大幅な陰線がでた翌日に、ポーンと下に離れたところで十字線がでた場合、捨て子線と呼ぶ。いかにも、その十字は遠いところにポツンと置いてきぼりを食らったような格好になっており、寂しい思いをさせられている捨て子のような感じを受ける。そういうことから名前がつけられたのであろう。この十字は上下の幅か大きく、結果として寄り付きと終値が同じで引けた格好になっている。すなわち、下落に続く下落の後で、ついに買い方はしんぼうしきれず、どっと投げた。それを待っていたように新たな買い方が投げ玉をさらうと言う展開になった。下値での売り買いが激しい攻防の結果、がっぷり四つで終えた形がそのようなチャートになったといえるだろう。つまり、下落一本調子だった相場が転機を向かえたことを意味して、底入れの兆しとされる買いサインのチャートの代表といわれる。

図18の住友不動産はその後、見事な上昇波動を演じている。ただ、底入れの兆しといっても、すべてがその後、大きな上昇展開になるとは限らない。単なる自律反発で終えるケースも多々ある。その意味で、このチャートでの買いは深追いをしてはいけない。短期で10%高で退く姿勢で対処することが扶南であろう。

並び赤

 並び赤。赤とは赤三兵でいったように、陽線を意味する。上昇過程の中で陽線が小さく、ピッタリ同じような値幅で並んだ状態を指す。図19.。

このチャートはしばしば現れるが確率論から言えば、その後の上昇は市場全体の流れ、その銘柄のもつを無視できない。03年の5月以降に現れた並び赤は概ね、その後の上昇幅は満足できる成果を得られることができている。しかし、02年に現れたケースは失敗に終るケースもみられる。全体の相場が弱い面が影響しているものとみられる。しかし、よほど、その銘柄に強い材料があったケースは上値を追っているようだ。もちろん、並び赤に限らず、強い材料のもつ銘柄はどんな買いサインがでても上値を追うものであり、並び赤が現れた意味は改めてその銘柄を買おうという動機づけの役割を果たすものになりうる。したがって、並び赤がでた場合にはケースバイケースとして割り切ることが重要で、完全に信じて入れ込まないで冷静に対処することが大事であることは当然なことである。図20の森精機は並び赤の一例としてあげてみた。

やぐら

やぐら。これは上値遊びが上昇過程で現れて買いのサインになると説明したが、やぐらは相当下落した後に現れるいわば、「下値遊び」と呼んでも良い底値圏で表れる買いのサイン。大幅に下落し、大陰線が現れて、その翌日から大陰線の下値近くで小さい陰陽の線がいくつも続く、その後で一気に大陰線の寄り付き値を上回る陽線が現れた場合を「やぐら」という。いかにも、大陰線と大陽線の二本の柱がやぐらの形を成す格好にみえる。底値形成の代表的なパターンである。図21

過去2年の間に筆者の引っ張る120銘柄の中で10パターンがみられた。それによると「やぐら」の買いの成功率は50%となっている。つまり、半分は失敗というよりも利食いできるほどの上昇につながっていないことを意味する。少し、上昇しても、また、反落の憂き目に合って、結果として利益がでないケースがあるということだ。そのため、このチャートはよくよく、慎重に対処することが望ましい。成功例としては03年4月に現れたNECを挙げてみた。図22

陰の陰はらみ

 これは下落過程が続き、更に、大陰線が出た後にその陰線の中でもうひとつ陰線がはらむケース。図23

そして、その翌日に陽線が現れて、陰線を抜いた場合に買いを断行する。買いサインのチャートのひとつとして数えられる。

 このパターンは下落基調、上昇過程の調整場面などを問わず、しばしば現れる。下落基調では一旦、反発するものの、上昇時間が短くなり、すぐに反落するケースも多々みられる。むしろ、上昇過程に入っている銘柄の調整場面でのケースのほうがその後、上昇するケースが多くみられる。そのため、陰の陰はらみは下落基調での買いサインとしてみるべきではない。上昇トレンドを維持している銘柄の調整期に絞って、買いを考えるべきチャートのサインとしてみておれば、それほど大きな失敗もあるまい。また、買った後も短期決戦が望ましい。概ね、10%程度の上昇での売りを狙うには最適といえそうだ。図24のダイセルのチャートは典型例。

W底形成

これはこれまでのチャートのように数日間で形成されるパターンと違って、1ヶ月、3ヶ月というよにしばらく時間をかけて形成されていくチャート。大きく下落した後に2度底値を確認した後に、そのW底の頭の部分を突破して上値を追う形になったケースをいう。図25

1度目の底値に対して、2度目の底値もほぼ同じ株価をつけることが平均的なW底であるが、2度目が1度目よりも少しは安いとか、高いことでもかまわない。また、三尊型の底値形成といって、3度同じような底値をつけた後に、本格的な上値を追うケースもみられる。この場合には3ヶ月くらいの時間をかけて形成される。この場合には中期的な上昇をみせる。1ヶ月程度のW底形成よりも上昇期間が長いとされ、値幅も大きい。

図26トクヤマのチャートで例を挙げてみた。比較的、買いで参戦した場合には利食いが可能となるもので、カブセを抜くチャートと並んで買い戦略の成功の確率の高いチャートである。ただ、短期よりも中期狙いで対処することが望ましい。

2つ星、3つ星

上昇過程で大陽線が現れ、その翌日に小さな陰陽線が大陽線よりも上値で現れる。それが2~3個でて、その翌日に上値追いとなった場合に買い出動する。図27

この買いサインは良くでそうでなかなか出ない。しかし、必ず、そのあとの上昇というものについて確実とは言い切れない。上昇だと思っても、その直後カブセなどがでたりして、逆に、売りといこともありうる。したがって、このサインは後の展開が大きな意味をもち、あまり、このサインに左右されないで投資することが望ましい。TOWAのチャートで実例を挙げてみた。図28

以上買いのチャートについて説明してきた。これはすべて材料も業績もすべて無視して、チャートの形だけについて買いで利食いできる可能性のあるものを中心に解説したのである。

以前から何回もいうが、チャートだけみていたのでは当て物のような買い方である。しかし、それをより確実にするのは企業の業績、材料を加味した企業価値、すなわち、投資価値というものである。それを確認した上で、タイミングを計るためやどこで売却するのかが望ましいのか、などの判断ためにチャートを最後に参考にするのである。それを決して忘れずに投資を考えれば、より、チャートは投資作戦を成功に導いてくれる。

第12講 投資戦略3 指標の有効的な使い方

日経平均の意味するものは

銘柄選択をして、「さあ、買おう」という最後の意思決定はロウソク足のチャート(以後、チャートと呼ぶ)などでタイミングを計ることで、見送りや買いなどの決断を下すことになる。チャートについては次の13講から簡単に説明することになるが、それ以外のチャートや指標、指数についても売り買いなどの判断には重要な役割をしている。そうした指標、指数について基礎的な知識をもっていることも投資成果を上げるためには欠かせない。いくつかの指標、指数について説明をしていく。

 ただ、挙げていくそれらの指標、指数にあまり、こだわりすぎて、それらを主体にした投資戦略を立てることは危険である。日経平均の上げ下げを気にする余り、個別の業績の変化を無視して売り買いを見送るようなことはすベきではない。総合的な事柄を判断して決めるのである。業績や材料、時の流れを重要視することによって個別銘柄を選ぶのである。日経平均の上げ下げ見通しもその判断に含まれるのであって、日経平均だけで売りや買いを見るものではない。

最近では日経平均連動型の投資信託が普及したことで、業績の良い銘柄も悪い銘柄も日経平均と連動するケースが目立ってきている。そういう投資信託は無責任な運用をすることを語ったようなもので、それならば、投資信託の運用者は必要なくなる。誰でも運用ができるわけで、投資信託を買う必要もない。自分で日経平均に採用されている銘柄で時価総額の大きい銘柄を数銘柄選んで売ったり買ったりすればこと足りる。最近になって、こうした連動型には批判が集まっており、評判も良くない。やはり、企業業績の良し悪しを判断することによって株価は上下するものでなくては不自然といえるだろう。

余談だったが、指標だけで銘柄選択は左右されるものであってはいけない。チャートについても同じことが言える。それだけで株が儲かるということを豪語するチャーチストがいるが、これは詭弁以外の何ものでもない。「ケイセン屋、線を引き引き、足をだし」という川柳が昔から言われているとおりである。業績などのファンダメンタルズをあくまでに銘柄選びの絶対的な基準を外してはならない。そういうことを頭に入れながら、指標や指数の特色などを参考にしてチャートをみて売り買いを決めることを知ることである。

 まず、日経平均について説明する。正式には日経平均225種平均と呼ぶ。一部上場の225種類の銘柄の株価を対象に指数化したものである。一般に、株価が高いとか安いなどと言われるのはこの指数をみて言う。歴史的に取引所が開設されて以来の指数のため、連続性があるために、使用されている。しかし、2000年4月に大幅な入れ替えが行われ、それまでの動きとそれ以後の動きが大変化を起こし、連続性が途切れてしまった。すなわち、水産、鉱業、建設、繊維、石油、窯業、非鉄などの銘柄を大幅に削って、電機、自動車、小売、銀行、通信、サービスなどの業種を多く採用するという大改革を敢行した。低位株を減らして、値嵩株を多く入れたことになる。特に、電機は19銘柄から28銘柄に大幅に増加させた。これは、前年にIT相場を演じて、大幅に上昇した銘柄を多く採用したことになり、そのあと、下落の一途を辿ったものばかりであり、これ以前の日経平均よりも下落ピッチが早まるという皮肉な結果を招いた。

TDK    17200円→3810円

アドテスト  27940円→3710円

太陽誘電   9100円→ 875円

アルプス   3500円→ 1154円

セコム    22150円→2655円

以上は新規採用された銘柄の99年~00年の高値と03年の安値である。わずか、3年で5分の1や10分の1にまで下落している。一方の削除された銘柄は青木建設など倒産銘柄があるものの、そのような極端な下落を示した銘柄は少ない。それまで、日経平均は年に数銘柄の入れ替えをしていただけに止まり、自然な連続性を維持していた。したがって、大幅な入れ替え以後、ハイテク銘柄の当落時には大きく反応する特色をもつ指数に変わってしまった。

 日経平均が大きく下落したといっても、必ずしも全体の相場が下落したとはいえなくなり、指数としては正しく市場の動きを示すものではない。むしろ、TOPIX(東証株価指数)や単純平均が全体の相場の流れを良くあらわすものとして注目を浴びるようになっている。TOPIⅩは時価総額の加重平均を加味して表したもので単純平均は全銘柄の単純平均。この2つの指標を加えて相場をみることによって、全体の相場は正しくみることができる。

 例えば、日経平均が高くてTOPIXが小幅高に止まった場合、値嵩株が高くて大型株はそれほど買われていないことを意味する。逆に、TOPIXが高くて日経平均が安い場合には、金融株、大型株などが高くて、ハイテク銘柄は物色されていないことを意味する。また、単純平均が高くて、日経平均やTOPIXが安い場合には日経平均に採用されていない小型株や材料株の人気が高いことを意味する。このように、それぞれの指標のもつ意味を理解してみることによって、何が今の相場で買われているのかが分かる。

 今年の3つの指標をみると相場の展開を良く表している。

 日経平均、TOPIXともにほぼ同じ動きをしている。これは金融株、大型株、ハイテク銘柄などのメジャークラスの銘柄が年初から軒並み国内外の投資家から売り対象になったために、同じ展開になったものと思われる。それに対して、単純平均は02年12月24日を底にして、戻り歩調をみせている。再度、3月17日に底入れの後、一貫して上昇を続けている。これは新税制を前にタンス株券を個人投資家が昨年内に売却をした後、新年から買いに転じたためである。そして、イラク戦争前に手仕舞い売りをした後、再度、買いに転じた。いわゆる低位小型株が全体の相場低迷を尻目に買われる相場が年初以来続いていたことを表している。

 しかし、5月20日からハイテク株が急伸しはじめて、追随するように大型株も上値を追い始めると日経平均、TOPIXの上昇ピッチが早まる。5月20日から6月9日までの上昇率は日経平均11.5%、TOPIX8.9%、単純平均5.0%となっている。明らかにハイテク株が買われて、大型株が追随する展開になって、その他の銘柄は一服ないしは上げピッチが鈍ったことを表している。

 このように、指標の特色をよくつかんで、何が買われて、何が売られているのかを把握するためにはこの3つの指標は注意深く見る必要がある。

 また、NT倍率というものがある。これは日経平均をTOPIXで割ったものである。6月10日のNT倍率は10.11倍になっている。これは倍率が開くことによって、日経平均の加熱度を計る目安になっている。倍率が高くなれば実態よりも株価は買われすぎていることを表し、低いと日経平均が割安に放置されているとの判断になる。基準となる倍率は相場の時々によって、変化するため、12倍だからどうだとか、14倍だからどうだとはハッキリいえない。ただ、先物相場の世界ではこれをひとつの物差しとして割高、割安の判断にしているため、重要な指標ではある。個人投資家にとってはそれほど意識してみることもない。

PER、PBRは重要な指標か

しばしば、PER(レシオ)が何倍、PBRが低いなどという。現在の株価をみて、割安なのか、割高なのかを判断する指標である。PERとは株価収益率。一株当たり最終利益(EPS)に対して株価は何倍買われているのかを表したもの。PBRは純資産倍率と呼ばれる。最近では株主資本倍率と言われる。企業のもつ資産から負債を差し引いた純資産を発行株数で割ったものが1株純資産。それを株価で割ったものが純資産倍率である。一般に解散価値と呼ばれるもので、最低株価価値になる。1倍で解散価値と等しく、それ以下だと株価は大幅に割安となる。下値のメドに使われるのだが、最近の株価では1倍以下の銘柄が非常に多く、割安ではなくなっている。その原因は表面の資産状況では純資産がどれだけあるのか分からないことが理由だ。例えば、棚卸資産を正しく評価しているのか、不動産の評価は本当は含み損になっているのではないか、などデフレ不況下では資産の本当の中身に疑問が持たれている。それが、純資産1倍以下でも買われない理由である。中には0.2倍とか、0.3倍などという異常な低水準の銘柄もごろごろころがっている。その意味では現在の相場ではこの指標を基準に銘柄を選ぶことはできないことになる。経済状況が好転して本当の中身が正しくみられる状態になるまではPBRは参考にする程度でよい。

 一方、PERはどうだろうか。株価は企業の収益力に応じて決まっていくものであるが、それは過去、つまり、実績の収益ではなく、これからの一年の収益見通しや未来の収益見通しについて評価されるものである。したがって、前期の決算で1株利益が30円あっても、今期の見通しが10円になるのであれば、株価は売られる。逆に、前期が10円で今期見通しが30円であれば大きく買われる。将来、株主にどれくらい利益配分されるかという期待が高い銘柄ほど高く株価は買われるのである。

 一部市場の平均PERは24倍(12月4日現在)になっている。前期、今期ともに1株利益が30円あって、株価が300円ならば、PERが10倍になる。平均PERよりも低いことになる。そうすると割安だから、買い余地があるということになるはずだ。日経の投資相談の欄ではしばしばそれを理由に割安で買い余地があるという判断をする。

これは、一見、納得できるような判断であるが、正しくない。一般的にいつも安定した高収益会社のPERは低い。万年、割安株という表現が使われる。

次の成長商品がない場合にはいくらPERが低くても買えないのである。この辺りを勘違いしないで投資判断をすることだ。あくまでも、近未来の収益見通しを株価は評価していくのである。

前期が赤字、もしくは1株利益が10円と低いが、今期には30円にも跳ね上がる見通しにある企業は同じだろうか。株価が200円だとする。前期ではPERは20倍、今期見通しでは6倍台になっている。しかも、大幅な増益を見込んでいる。

また、現在の収益が低くても、収益の拡大が大幅に見込まれる製品や技術を開発した銘柄は現状のPERが高くても、平均PERよりもはるかに高く買われる場合がある。そういう時にはPERにこだわらないで、その製品の価値で判断することである。過去の低収益はその際、無視される。

つまり、新製品の開発に成功して来期から収益が大幅にでることが分れば、将来の利益と比較してPERは判断されるものである。現状の収益が低くて、PERが平均より高くてその際、無視してもよい。特に、万年低PERに甘んじていた銘柄が次の有力新製品を開発した場合には相当高い水準まで買われ、高PERまで評価されることがある。

このように、PERは現在の状態で論じるのではなく、将来の収益がどうかということで高い、安いという判断をすることである。

その他の指標も参考程度に

その他の指標として、よく使われるものとして、新値3本足、サイコロジカルライン、移動平均線、ストキャスティク、一目均衡表などが一般化されて、パソコンによる株価の売り買いのタイミングの判断材料として重宝がられている。これらの指標は右肩上がりの上昇傾向の場合には比較的参考になるが、保ち合い圏に入ったり、下落相場が続いたりすると判断を狂わせることもしばしば起きる。参考にはなりにくい。そのため、宗教信者のようにのめりこまないことが肝心である。また、これらの指標を常に、全部参考にするのではなく、ひとつかふたつに決めて徹底的に参考にすることが望ましい。そうすることによって、その指標のクセなどが理解できるようになり、買い信号がでても逆に売られる「だまし」などについて対応できるようになる。

筆者はこのような指標はみる程度で買いや売りの決定にはあまりとらわれない。すなわち、買いのサインが出る前までに判断を決めなければ意味がないと思っているためである。大抵、買いサインが出た時には、一旦目先的な天井を形成することが多く、しばらく利食いは難しい結果になる。また、このような指標で投資成果が上がるのであれば、大手証券会社、大手ファンド各社などは損失などでるはずがない。個人の小さなパソコンとは比較にならないコンピューターを持っており、複雑な投資指標などもいとも簡単に算出できる。それでも、投資成果が上げられずに苦戦するのは指標というものがいかに頼りにならないかを示すものであろう。先ほども言ったように「ケイセン屋、線を引き引き足を出し」の川柳の通りなのである。

指標やこれから説明に入るチャートは決して株価の先行きを決定的に導いていくものではなく、あくまでも過去のデーターをもとに流れを表して、それを元にして今後もそうなるであろうということを予想するだけのものである。株価は過去と同じ動きを決してしない。上昇がしばらく続けば、今度は保ち合いが続いたり、下落に転じたりして、それまでの動きとは全くのうごきになるケースがほとんどである。それに、今後の予想についてはチャートではなくて、個々の企業の業績や製品の動向などが決めることと良く理解することを何回も繰り返して言うが、忘れてはならない。

さて、指標の説明に入る前にやかましくこれまでの投資戦略の基本について言った。それではこれらの指標について説明をしてみる。

新値3本足とは株価の大引け値が高値を更新するたびに行を変えて記録していく。高値が止まっても抜くまでは記録しない。また、反落した場合には3本前の高値を割り込んだ場合には陰転となって、安値を更新するたびに記録していく。そして、3本前の安値を上回った時には陽転となって、また、高値を更新していけば記録していく。これを新値3本足という。

(図8)。これは天井とか大底などを見る場合に役立つとされているが、しばしば陽転とおもったら、すぐに陰転したりする、いわゆる「だまし」が多い。これをカバーするために、5本足とか10本足などを記録することがあるが、あまり、長いと結局は売りチャンス、や買いチャンスを失うことになりかねない。個別銘柄の投資には余り役に立たない。日経平均などの指標に応用する程度。

サイコロジカルラインは直近の12日間をとって、値上がり日は白(勝ち)、値下がり日は黒(負け)というようにして、12日間で白がいくつ、クロがいくつかとみて、相場の過熱感をみるための指標。過熱感のあるときには10勝2敗などになり、陰の極には1勝11敗というようになる。9勝以上を加熱、3勝以下を安値圏というようにみる。

相場の格言では上昇の芽は総弱気の中で生まれ、迷い続きの中でつぼみとなり、安心の時に花が咲き、総強気の時には枯れていくと言われる。その心理をサイコロジカルラインは短期的に表しており、ひとつの参考になる。

移動平均線とストキャステックは一目均衡表で集約できるので、一目均衡表で説明する。(図9)この表は①、26日間の高値安値の中値を表す基準線、②、9日間の高値安値の中値を表す転換線、③、終値を26日間遅らせた遅行スパン、④基準線と転換線の中値を26日先行させた先行スパン上限、⑤過去52日間の日々高値安値の中値を26日先行させた抵抗帯下限、⑥、④と⑤の間のゾーンの抵抗帯、⑦、毎日の実線の⑦つで構成される。

この表によって、買い転換は3つの原則で表される。転換線が基準線を上に抜く、26日遅行スパンが実線を上に抜く、株価が抵抗帯を突破する。

比較的的中率が高いことで投資家の間では信者が多い。上昇相場での判断材料では役に立つ。

このような指標をうまく使いこなすことによって、投資成果を上手に挙げて頂きたい。

第11講 投資戦略2 売り姿勢の対応は?

売り戦略の重要性

投資戦略上、買いを決断させることはある意味においてそれほど難しいものではない。しかし、売り(ただし、空売りは対象外)は難しい。買いはそれを実行した時点でとにかく損得が発生しない。しかし、売りはそれを実行した時点で損得のいずれかが発生する。利食いの売りでも、その後で急騰でもすれば、投資家によっては損をしたような気持ちになるという。損切りするにしても、その後で急反発すれば、その晩は眠れない。売却は完璧な場合以外は常に何らかのストレスが残ることが多い。完璧な売りというものはほとんどゼロに等しいことが分かっていてもそれが実現しないことには売りは満足できないのである。売った後に急に下落するようなことが起きない限り満足はないというのである。

要するに売りを難しくしているのは個々人の心理的な側面が強く働くことになる。その心理は売りに対して明確な論理をもたない限りない欲への追求にある。例えば、こうだ。300円の銘柄を買った。最初は330円と「一割上がればいいや」という気持ちで臨む。無事、何日かしてその目標が達成できた。売るのかと思えば、「いやいや、もっと上がるのでないか」と考え直して持続する。350円、360円と上がっていく。それにつれて、だんだん売ることを忘れて、「もっともっと」と思うだけになり、逆に、買い乗せをする心理が働くようになった時に、ドカンと急落する。しかし、買値を下回らなければ、安心するだけで、「そのうち、戻る」と勝手に都合よく考えてしまう。そして、彼の期待通り戻るが元の高値には届かないで反落に転じる。(本来はそこで売りを敢行する)しかし、今度下落すると、買値を下回る下落になっていく。そこで初めて、「しまった、やはり戻りで売っておけばよかった」(遅い判断だが、その時点でも売れば、傷も軽い)と後悔する。 そして、再度、戻りをみせるが、買値までは戻らない。その後、一進二退の状態が続いて、「今度、戻れば全部売ろう」とひたすら戻りを祈る毎日になる。そして、いつしか、株価は買値の半値辺りで落ち着きをみせて、長い底這い状態が続く。いつしか売ることも、買った頃の情熱も消えて、関心も薄れて、ついには、塩づけという形で落ち着いてしまう。

以上のパターンはほとんどの個人投資家が経験していることである。この失敗の原因はどこにあるのか。第3講義で説明した計画性の欠如に尽きる。どこで利食いするのか、どこで損切りするのかについて、冷静に判断ができずに、ひたすら、儲けたときの計算ばかりしていた結果なのである。すなわち、自分の欲を抑制できなかった結末といえよう。欲がいけないという意味ではない。人間、欲を失うとおしまいであり、前進がなくなる。適度な欲は望ましいことである。ただ、「過ぎたるは及ばざるがごとし」というように何事も行き過ぎは弊害を生む意外の何者でもない。それが株式投資での売りでの失敗になって現れるといっても良い。

今後の投資において、成功、失敗の分岐点はその欲をどれだけ自制し、冷静に処理できるかにかかっている。特に、買い戦略よりも売り戦略がより重要になってくるのである。

業績悪は躊躇なく即、売り

 売り戦略の重要な基本姿勢は買いの時にも指摘したように、一番大事なことは業績である。これは買い、売りともに同じである。ただ、買いは業績の好転の変化率やどのくらい好業績が予想されるのかという業績好調の面を重視して、その時にどうするかを決める。それに対して、売りは業績がどのくらい悪化するか、ヒット商品の翳りが見え始めたか、また、悪化したことで配当がどのくらい減らされるか、など業績にまつわる中で悪い面がでた場合にどのように退却するかという戦略と利食いの場合の戦略になる。

 図5の大日本スクリーンを見て頂きたい。この銘柄は02年12月に底入れして、03年年初から反騰体勢に入り、3月中旬に天井をつけた後、急落している。その後、4月中旬まで下落を続けたが、反発に転じ、決算発表をキッカケに急伸する展開になり、6月はじめにはほぼ3月の高値近辺まで戻している。この上げ下げの理由はこの銘柄の業績の方向性が最も大きな要素になっている点である。このグラフには載せていないが、02年の2月から5月にかけて、345円から728円まで大幅に上昇している。      

02年3月期は42億円の連結経常赤字であった。その予想を発表した時点、すなわち、01年5月の株価600円台から業績予想の悪化を理由に一貫して売られ、01年9月には305円の安値をつける。決算発表後、5か月連続で売られていたことになる。本来はその悪材料は3ヶ月程度で織り込み、多少の反発をみせるものだが、長く下落が続いた理由は市場環境の悪化が業績悪の同社には余計に厳しく影響を与えたことが考えられる。そして、02年2月まで下値で鍛錬した後に、03年3月期には黒字転換するとの観測が出されるようになり、戻り相場に転じて、02年5月には728円まで買われたのであるが、実際の決算発表でそれが確認されると材料で尽くしになって、下落相場に転じたのである。下落が長く続いたのは2003年新証券税制前の個人投資家のタンス株券の売却が一貫して続いたことによる市場環境の悪化が影響している。

図7はそれ以後下落状態が続いた後、底入れした02年12月からの動きを表したものである。半導体製造装置の受注が大幅に回復していることを好感して上げ始めたのだ。それが確認される(2月28日の記事)と上げも一服する。

以上のようにスクリーンの2年間の業績悪化、回復という過程で株価がどのように反応したかについて、解説したように、業績が株価に与える影響は上げる場合も下げる場合も大きい。

特に、予想していた業績が一転して変化する場合には強烈である。図7の03年3月15日の記事では03年3月期は黒字予想していたのが、最終赤字になることを報じたものだが、株価は一気にストップ安まで売られている。その後も更に100円安まで下落が続いて反発に転じた。

このように、業績悪化、特に、大幅な場合にはその時に大きく売られるが、投資戦略としては「戻ってから売ろう」とは思ってはいけない。その後のチャートが示すように元には戻ることはない。すんなり、あきらめて即、値段にかまわず売却を決めることである。

下落傾向が続いていても、03年5月に04年3月の業績見通しが一転して、大幅黒字転換する予想がでれば、大きく相場は戻していくのである。その時には素直に買い戦略でいく。

急落寸前の動きは大抵、前触れという動きがでる。下落近しという暗示がでるケースがチャート上にはしばしば表れる。それをすばやく読み取るノウハウを身に着ければ、鬼に金棒である。チャートの見方(第13講、第14講)で説明していきたい。

ヒット商品で業績を挙げてきた銘柄が下落相場に転じると長々と下落傾向を続ける。一気に、下落初期は激しく下げるが、その後は、二退一進の展開が続く。その流れが変化する場合には、それまでにはなかった材料が飛び出すか、市場の環境が変化するかのどちらかである。しかし、業績悪が完全に織り込まれない状況下では戻り相場は売り姿勢を貫くことが望ましい。

例えば、01年9月に米国で高層ビルに飛行機突入によるテロが発生した。これによって、米国の景気が低迷するではないかと悪材料視された。丁度、その年の5月から      ITバブル後の景気低迷で軒並み関連銘柄が下落を続けていた。そこへ、米国景気だけが国内の景気低迷をカバーする唯一の期待だったが、テロによってその期待も裏切られるということで、テロ後数日は大きく売られた。ところが、9月下旬には逆に半導体はじめITが猛然と反発しはじめ、12月まで大きく戻す相場が続いた。

これは、5月からダラダラ下落していた相場がテロによって、総弱気になり、それまでガマンしていた投資家が一斉に投げてしまった。つまり、売るべき投資家は全部売ってしまったということになる。需給関係が大転換したことを意味する。そこへ、米国での半導体受注の環境が好転しはじめたとの情報が入り、ハイテク銘柄中心に12月まで戻す展開になったのである。しかし、その後は個々の業績が良くないために、02年2月まで大きく売られている。

下落傾向が続いていた場合に、それに輪をかけるような悪材料が飛び出すと一気に整理が進み、買い転換になることが多い。逆に、上昇相場が続いていた場合の大きな好材料が飛び出すと吹き値売りということになる

さきほど、業績面で魅力がなくなった銘柄は下落するといったが、独自のヒット商品でそれまで好業績を続けて、その神通力が消えようとしている場合には下落は長期にわたる。

図8の任天堂はそれに当たる。この銘柄はヒット商品をもつ銘柄は大きく化ける(第6講)で説明した。ファミコンで業績を20年余りで100倍にも伸ばした銘柄だが、ここにきて、さすがに、ゲームの勢いも薄れ、業績は完全に頭打ちになっている。再起をかけた「キューブ」も02年に1500万台の目標を掲げたが、結果的には700万台と半分の実績しか残せなかった。ソニーのPS2が世界で4000万台の実績を残したことと比べれば惨敗である。好調は携帯ゲームの「ゲームアドバンス」という状況。しかし、それに追い討ちをかけるようにソニーは携帯ゲームに進出を決めている。すでに、任天堂は1998年以後、売上げの伸びは止まったままであり、安定収益型の企業になっている。すでに、株価はITバブル時期に24900円まで買われた後、下落傾向を続けている。

こういう銘柄は決して、値ごろ感で買ってはならない。現在8000円台から中国市場への参入を評価して戻して9000円台にあるが、だからと言って、安値圏という発想は通用しない。買い材料は独自の製品が大ヒットを続けていたことに魅力があって買われたことを忘れてはならない。ましてや、ライバルが次々と追い討ちをかけるように任天堂の事業を侵食する段階に入っていることを考慮すれば、業績が今後、過去の最高決算を上回ることは期待できない。そういう背景のもとでの下落であり、戻り場面は一貫して売り姿勢を続ける。実際に、下降トレンドは崩れていない状況にある。緩やかに下落しているか、急激に下落するかの違いだけである。

ナンピンと損きり

 以上のように株価は業績の盛衰で刺激されることが実際のチャートをみれば良く分かったと思う。その業績を左右する材料の大小でも刺激度合いが違う。そして需給関係である。そして、売り買いの決断はタイミングを合わせて実行するのである。

 そのタイミングであるが、基本的には業績が大幅に伸びることが早い段階で分かれば、ストップ高になってもそこで買えば後で利食いは可能になるもので微妙なタイミングは考えなくてもよさそうなものだが、やはり、短期決戦で投資をする際にはタイミングを計ることは欠かせない。細かいタイミングはチャートの見方のところで説明(第13~14講)するとして、ナンピン買いと損切りのことについて、説明をしたい。

 ナンピンとは難を平らにすると言う漢字でかく。難平と書いてナンピンと読む。書いて字のごとしで、300円で買った株を下がったところ、260円でもう一度買う。そうすると平均株価は280円になる。株数は2倍になったが、元の買値の300円で売れば、損がなく、逆に利益がでるという投資作戦である。上昇相場の過程で調整場面の時には非常に有効な投資方法である

が、下落傾向が続くと大きな損になる恐れがあり、全体の相場だけでなく、買った銘柄の流れを正しく読めないと失敗する。

それに対して、損切りは初めは上がると考えて買ったが、どうもその後の展開が違う展開になった。そこで、今のうちならば、大きな損が出ないと判断して売却を敢行することである。すなわち、先行きの大きな下落を予想して、早い目に処分することを損切りという。大きく下落した後で止むに止まれず売却することを投げという。投げと損切りとでは意味が大きく違ってくる。損きりは残った資金が豊富であり、再度、銘柄に挑戦できる。投げは下手すれば、資金がなくなり最悪の場合には再起不能の事態に陥る。しかし、損切りの後、株価上昇ということも多々ある。そのため、決断には相当の勇気が必要なばかりか、相場を読みきる高い能力も欠かせない。その意味で損切りができる投資家は一人前であり、プロ的な投資家とみられ、投資家仲間から尊敬される。

ナンピンも損切りも下落場面での実行になる。方や買い、方や売りであり、全く反対の投資行動になり、判断を悩ませる。

ナンピンは先ほどから何回も説明しているように、業績見通しが相当に良い銘柄の初期の段階において、急騰した後の下落場面で第一弾の買いを入れた後、更に、下落場面でナンピンをかけることが、最も有効である。それと、上昇トレンドに入っている銘柄の場合にのみ、ナンピンをかけることである。大きな相場が何ヶ月も続いた後に買いを仕掛けて下落した場合にはナンピンをしかけてはいけない。下落とも、上昇とも判断が難しくなるためだ。難しくなった場合には逆に、損切りをすることだ。このようにナンピンは上昇トレンドの過程の銘柄か、それまでの株価展開を大きく変化させる大きな業績変化、材料が飛び出した後でのみ、仕掛けることに徹することが成功する秘訣である。もちろん、その過程でも3回を越えるナンピンをかけてはいけない。また、予想とは違う展開になれば、躊躇なく損切りを敢行することを守ることである。

損切りは買いをはじめていれた場合に、損切りの目標設定をする。その値段に達した場合には即刻実行する。保ち合い圏にある場合、下放れをした場合にも実行。下降トレンドにあって、前の安値を切った場合にも即、実行。そのほか、自分の考えた展開とは違う方法になった場合には迷わず実行である。悪材料が飛び出した場合にも、「しまった」と思えば即、実行である。以前から申しているように、自分の常識と照らし合わせて、これは「おかしいぞ」と思った時には即、実行するのである。筆者は損切りの極意を「しまったらしまえ」ということを呪文のようにして覚えろと指導している。すでに、損切りについては第3講で説明しているが、売りの姿勢で非常に重要なことが損切りである。このことは肝に銘じてほしい。それが自分の財産を守る最大の防御であることを知るべし。

第10講 投資戦略1 買い姿勢のツボは?

投資価値の揃うことは

これまで説明してきたのは主にファンダメンタルズ(企業のもつ基本的な要因)の面からの売り買いの選択方法であった。第10講からはそれにチャートと需給を加えた場合での売り買いのタイミングに重点を置いて説明する投資戦略編に入る。チャートだけの説明は前後するが、12~13講で集中的に解説することにする。

 何回も言うが、銘柄の選択をする場合に重要なことは銘柄の投資価値を計ることが第一で、それから、需給やタイミングを考えて決める。そのどれが欠けても投資作戦は成功したとはいえないのである。チャートだけで銘柄推奨する評論家が大勢いるが、いかにも、急騰につぐ急騰を明日からでもするようにもっともらしく説明しているが、「画竜点晴を欠く」を正に地

で行ったようなものである。何といっても、投資価値が現時点でどの程度あるのかをまず、知ることである。業績の伸び率、材料、会社の意識などを知るのである。

 一例を挙げるならば、筆者は来年(2004年)前半にかけて「アーク」という銘柄が大幅高するとみている。

先ほどの上昇条件をすべて備えているばかりだけでなく、1万円銘柄の条件をも兼ね備えていることが理由である。それはこうだ。

 まず、業績。今3月期の連結経常利益は当初55億円と予想していたが、9月中間決算時に63億円へと前年比44%増に修正し、1株利益も207円から232円に修正された。更に、来期も100億円を予想し、連続大幅増益を見込んでいる。1株利益も415円に躍進する見通しである。低成長期にそれだけの増益を見込めるのは事業内容が市場拡大を見込める分野で独占的な存在にある。すなわち、新製品の試作品を大手自動車メーカー、IT、家電、パソコンなどの大手各社からアウトソーシングされる。近年、そうした業界は新製品ラッシュが続いており、絶え間なく同社に試作品の依頼が舞い込む。04年3月期の業績は63億円と44%増益を見込む。それだけの数字をみれば平凡な伸び率だが、01年21%増、02年57%増、03年42%増と続いた後の44%増である。更に、05年の予想では58%増の100億円を予想している。これだけ連続的に高い成長を続ける銘柄は稀である。そして、05年には1株利益は400円を超える。こうした業績好調に加えて、会社側は金型企業の買収を05年に狙っているようで、その資金を資本市場から調達を考えているとみられる。そうすると、高株価は欠かせない戦略になり、1万円以上でのファイナンスが実現する可能性が高い。したがって、6000円台の水準は魅力がある。業績、会社側の姿勢では投資価値は申し分ない。後は需給関係とタイミングということになる。需給も03年11月に外国人とみられる売りが約100万株でて、7450円から5540円まで下落した。その売りが切れた後に、別の機関投資家の買いが舞い込みはじめており、需給は好転している。タイミングを計るチャートも売られた5540円の水準でも一目均衡表の雲に入り寸前で止まり、それから急反発し、25日移動平均線を11月28日に上回り、同時に新値3本足が陽転した。そして、12月2にはゴールデンクロスを示現している。

 このようにアークは典型的な上値を追う材料が揃っており、投資価値の大きな銘柄として挙げられるわけだ。なかなか、そういう銘柄はザラに見当たらないが、それ以外の買いのシグナルを暗示するパターンを紹介していく。

無風状態の買いは

買いの姿勢を高めるケースは多々ある。2つの対象的なケースでの買いを説明してみる。全く、無風状態、すなわち、同じ株価の位置に長く停滞しているケースと突然、大きく放れた急騰した場合での買いをどのようにするのか、について説明する。どちらの場合も買いと判断を決めるのには比較的勇気がいるものだ。

無風状態というのは一定の幅で小さく何日も何ヶ月もその間で行ったり来たりしている相場のことを指す。いわゆる、往来相場と呼ばれる展開を続ける銘柄のことである。1ヶ月や3か月などの場合、1年や3年という長期間にわたる場合もある。1年以上の状態の特色は①業績に大きな変化がなく、市場人気からも見放されている、②大相場がかつてあって、その後、下落に転じて落ち着いた状況になりながら需給の調整が続いている③市場性が薄く株価形成の形を成していない・・・などの場合だ。これらは底値にへばりついている場合が多く、時には更に下放れることもある。

 1~3ヶ月程度での無風状態はそこそこ上昇し、あるいは下落の途中での一服状態にある中段保ち合いの状態の時にみられる。その後、更に、上昇か、また、反落するのか分岐点になるケース。一例を挙げると02年9月中旬から03年1月中旬までの近畿車輛(図1)。180~230円のもみ合った後、3月はじめに280円まで上昇を続けた。その後、4月末まで250円前後のもみ合いを5月に入って抜けて327円の高値までつけている。逆の例では三共生興(図2)。02年8~9月(370~385円)と10~11月中旬(350~370円)まで保ちあいが続いた後、下放れている。大勢的には7~11月中旬まで約5か月350~385円の保ち合いから下放れたことになる。また、保ち合いから下に放れた後、すぐに、急反発し保ち合いのゾーンを突破して高値を更新することもある。いわゆる、弾みがついた相場である。大日本製薬(図3)の02年12月の下放れ960円をつけた後、急伸してそれまでのゾーンの1000~1100円を突破し1159円をつけている。

 中段保ち合いから上や下に放れることも含めて、それまでの動きと違った動きをするターニングポイントはどうしてつくられるのであろうか。それを解明できれば、相場に負けることがなくなり、どれだけ、楽しいことか。そういう研究は大手証券、投資顧問、運用マネージャー、一般投資家に至るまで、研究に研究を重ねているが、確実な答えがだすことができない。コンピュターがどれだけ発達しても、である。

しかし、概ね、その時々の相場全体の環境と需給動向とその銘柄に影響する材料や需給関係で決まる、と言ってもよいだろう。相場全体の環境とは日経平均が上昇か下降パターンなのか、その時の主体は誰(第5講)なのか。その環境下でこの銘柄の影響度はどうか。主体が売りや買いなどで関心をもっているかどうか、全体での影響を考える。そして、この銘柄に材料が飛び出したが、需給関係はまずどうかを考えて、材料の影響度は新鮮なものか既存のものか(織り込みぐあい)、その材料の影響度は大きいか、小さいか、強いのか弱いのか、長期か短期か、など個別の材料を考える。そして、どこまで、上がるのか、下がるのかの目標のメドを決める。

近畿車輛の例はまず、全体の環境はどうだったのか。02年8~12月までは金融機関の株式持合い解消の売りを中心に法人売りが続き、日経平均は1万円から8500円まで下落の一途を辿っていた。また、個人投資家も証券税制改正前でタンス株券を売却するなど11~12月には売りが集中していた。

近畿車輛は発行株数6900万株と小型株の仲間に入り、売りの主体だった法人売りが集中することがなかった。そのために市場全体の影響を受けることが薄かった。そのような市場環境に近畿車輛のもつ個別の材料が株価を刺激する。02年5月に同社の03年3月期の業績見通しが発表された。連結経常利益が23倍の30億円(実際、決算では30億4300万円となった)と発表。香港や米国向けの車両が一気に売上げに立つことが大幅増益の要因だった。それが5月から7月にかけてほぼ倍にまで上昇する相場に発展した。その後、もみ合いに入るが、03年1月からの再騰は02年7月の信用買い残の高値期日終了接近と台湾での新幹線計画が日本の企業連合が総額5000億円(車両360両など)の受注を1月22日に決めたことが新たな材料になって、もみ合いゾーンを突破した。実際には近畿車輛への発注はほとんどなく、川崎重工に大部分舞い込むものであった。それでも、株価を大いに刺激したのは大幅な好業績に加えて、市場環境が03年1月に入って、小型低位株に矛先が向かいやすい環境にあったことが背景にあった。個人投資家はタンス株券を前年末で処分売りし、03年には今度は損金参入も認められる新税制を好感し、改めて新規買いに入りやすくなっていた時期に個人投資家好みの同社株のような低位株で材料が飛び出したことが上値を追う形になって表れた。

03年1~3月という時期は金融機関は相変わらず持ち合い解消売りに加えて、法人の年金基金の代行部分の返上のための売り、外国人は日本の金融危機の対応の不透明さを理由に売り傾向を強め、買い支えは公的年金資金、法人の自社株買いであるが、これらは積極的に上値を買う資金ではなく、結果として個人だけが上値を買える主体であった。したがって、個人好みの低位で小型株が好まれる。そのタイミングに近畿車輛は需給面、材料面、業績の面でうまく相場に発展したのである。

このように大きく居所を変える銘柄はいくつもの好条件が重なった場合に実現する。

下に放れる場合にはその逆である。三共生興は02年5月に03年3月期の業績予想が連結経常利益を倍増の30億円(実際の決算は30億6900万円)と予想し、5月13日の241円から7月29日の390円まで買われた後、先ほどの水準でもみ合いに入っていた。しかし、その材料をこれで織り込んだ後、それ以上に上値を追う材料に乏しく、息切れ状態にあった。更に、比較的好調だった高級ブランドも夏場を過ぎる頃には一巡感が出始めて、デフレ圧力による消費の低迷が消費関連株の頭を抑える。そこへ、個人投資家のタンス株券の売り圧力が同社にも11月に及び、下放れ、12月にかけて売られる展開になった。しかし、その一巡後には個人好みの銘柄と配当利回りのよさが見直されて、保ちあいの水準まで戻すことになる。

このように、好業績だけではそれを織り込むと市場環境の影響を受けることによって、修正安を余儀なくさせられる。近畿車輛や三共生興のように大幅な好業績を織り込む場合にはほぼ3ヶ月かかったことはお分かりのように刺激材料を織り込む場合には3ヶ月というケースが多くみられているためとみられる。その辺りをよく頭に入れておくことが重要。その後、保ち合いゾーンに入った後、上か下かは市場環境、需給も影響するが、次の材料が出現するかどうかで決まる。

さて、大日本製薬のケース。一旦、下放れすかさず急反発した場合。これは業績が偶然増額修正したり、何か新しい新薬研究が飛び出すなどの材料が出た場合にはそのような動きをするが、そうそうタイミングよく出るものではない。このケースは一貫して注力している買い主体が下落場面でテコ入れする場合にみられる。いわゆるボールを床に落とすと弾んで大きく跳ね返ることと同じで弾みがつくことになる。そのまま、上値を追い続けることもあるが、無理した上げであり、力尽きて時間を置かずに反落に転じるケースがみられる。その後、同株は下値を切り下げる展開が続き、5月には700円を割り込んだ。健康保険の個人負担が3割まで高められ、医薬品各社が業績見通しを厳しくする傾向が強まったことが売られた理由である。

以上のように高値をつけた後の中断保ち合い後の展開はその時々の条件によって次の展開が決まる。日頃からいろんな角度からものをみる訓練を続けることでどちらに動くのかをその前から察知できるのである。

何ヶ月以上も底に這う状態の無風状態の銘柄でも動きがでる条件は同じである。市場環境、業績、材料、需給がそれまでと違った状況に変化したときには動くのである。

大倉工業は3年間も350円中心の動きで推移していた。それが03年4月から動きはじめ、あれよあれよという間に1か月で5割高を演じてしまった。従来のフィルム生産の事業から液晶フィルムへの進出が当たり、収益拡大を03年12月期に見込めるようになった。それが眠りから覚めて大きく動いたのである。似たような銘柄として大陽東洋酸素(図4)がある。1年にわたって、250円中心の動きに終始していたが、04年3月期には40%の連結経常利益と2期ぶりに増益に転じる予想を発表した。半導体、液晶業界の積極的な設備投資によってガス機器の売上げが挽回することやガス需要のアジア向けの伸びが背景だ。

5月中旬に260円を突破して、1か月ほど280円前後でもみ合った後、7月から9月にかけて上昇を続け、380円をつけている。長期的なボックス展開から抜け出すと上値に弾みがつく好例である。

買いのタイミングはいくつものパターンがある。はじめに、無風状態の銘柄の買いを説明したのは動意づくと上昇期間が長くて、スタートから買っておけば、何回も売買できる。しかも、長期低迷期にあるため、それがしばらく動かなくて売却しても大きな損にならない。動きがないのだから損が少ないのは当然である。リスクという面において軽い。その意味で、初めて株式投資をする方やいままで大きな成果の経験のない方に向いた投資戦略である。

しかし、どんな相場でも安全ということはないので、買うと同時に利食いと損きりの目標を同時に設定することを絶対に忘れてはならない。

株式投資で大事なのは常に余裕と安全圏に自分の資金を置いておくことである。しばしば、それを忘れて無謀な投資をする方が多いのには驚かされる。例えば、500万円の資金で投資をされている方で十分に銘柄研究をした結果、成功し短期で50万円でも利食いをした後、有頂天になり、即座に次の銘柄を買おうとする。こういうことは最も危険な投資方法である。次々にそんなおいしい銘柄が落ち             

ているわけがないのに、始末が悪いことに資金を目一杯投入する。折角、短期で得られた利益をその繰り返しで失ってしまう。そればかりか、その際に買った銘柄が売れずに塩漬けに加わるという愚を繰り返すのである。株式投資で必要なことは良い銘柄を選択することは大事なことであるが、むやみやたらに銘柄をあさることで、余裕を失い、危険な投資行動に突き進むことを避けることも非常に大切な行動である。勝てる確率が低い銘柄だと思ったり、何か自分で悪い予感のするような銘柄だと思えば、絶対に買わない。買った後でもそういういやなイメージが湧いたときには即刻売却し退却することを心がけておくことである。「お金が余っているから何かもっておきたい」などという行動は是非慎むことである。「これだ」と思うものがなければ、現金としておいておけばよい。

 すでに、第3講で説明したように資金は全部使わないで、余力を常に残して計画性をもって行動すべしと説いている。相場に熱くなっていくとそれが頭から消えてしまって、急落した時にはじめて思い出すという始末の悪い投資家がほとんどである。そんなことを繰り返すとここで学ぶ投資戦略は意味をなさなくなり、過去の自分の失敗の投資に戻ってしまうのである。余裕と安全圏をぜひ、守っていただきたい。

急騰銘柄の投資作戦は

突然、大きく買われる銘柄がある。「しまった、以前から眼をつけていたのに」というご経験はおありだろう。しかし、そういう銘柄は落ち着いてどういう理由で上昇したのだろうかということを考えてから作戦を練ることで十分に買うチャンスはある。

突然の上放れは急激な業績の変化や新技術の確立の材料が飛び出した時などに主に分けられる。

まず、業績の急激な変化の時(大幅な増額修正銘柄)。これは、発表前の株価の動きが相当上昇していた場合を除いて、とりあえず、買ってみる。相場のテーマに乗る銘柄の場合には比較的長期にわたって上昇が続く。普通の大幅増額の場合でも3か月程度は続くとみられる。ただし、3000株買う資金があっても、1,000株に止めること。2~3日上値を追い続けることがあっても、急激な上昇は一旦、調整期に入る。調整パターンははじめの急騰場面のスタート近くまでは戻らないために、その上げ幅の半分くらいのところで1000株を買ってみる。そして、最大3週間も待てば改めて上値を追うパターンに入るケースが多い。調整しないでそのまま、上昇した場合には一旦、利食いをしてから待つ。上放れは業績の大幅な変化が要因の場合には追いかけても良い。その時に、上昇前の株価をこだわってはいけない。

一方、新技術の確立の場合。これは①今期の業績見通しがたいしたことがない場合には、急騰場面は続かないとみる(第8講)。ましてや、異常な出来高となった場合には動きがとれなくなり、上値を追うことはむずかしくなる。それはこのケースに止まらない。②市場のテーマに乗っている新技術の場合にはその後も上値を追うこともある。③逆に、テーマに乗らない場合には短命に終わり、買いは見送る④好業績でありながら株価が緩慢な展開にあったときには継続して買われることがある。⑤信用の売り残、買い残が拮抗している場合には①、③の場合でも上値を追うケースもありうる。特に、全体が上昇相場の場合。全体が下落相場の場合には短命に終わる。

例を挙げてみる。東洋機械金属(図5)。02年10月18日に突然、ストップ高し、284円をつけた。中間決算の経常利益1億2000万円を3億4000万円に増額修正したことがキッカケ。その後、10月25日に334円までつけた後、反落に転じて、11月20日には203円まで下落した。その後、猛反発し、11月29日には368円をつける。後は、一進一退を繰り返した後、03年1月末には492円まで上昇している。それが好業績銘柄でかつ、流れに乗った製品を持った銘柄のパターンである。4月23日の決算発表では当初予想の連結経常利益4億2000万円を大幅に上回り5億8300万円まで利益を伸ばした。そのため、株価も524円までつけている。ファイナンスを決算発表と同時に発表したために、5月は調整に入ったが、6月、7月には新たな展開へと発展し、8月には1000円を突破した。

新技術だけが一人歩きの場合。宝ホールディングの02年10月8日の遺伝子治療薬を米国、韓国で臨床実験に入ったというニュース。将来の有力な治療方法として時々、材料視される。発表当日は買われなかったが、15日にいきなり急騰し、わずか5日で150円高を演じた。550円から694円まで上昇した。しかし、それで終わり、後は11月19日の500円割れまで売られる始末。業績面では特に、みるものがなく、法人や外国人売りを浴びるキッカケをつくっただけの材料であった。

資本提携や業務提携などのニュースも一時的に急騰する場合がある。その判断は増額や新技術の場合よりも判断が難しい。最近の例では日本信販をUFJ銀行が子会社化をすることを03年11月21日に決めた。その結果、日本信販の株価は21日に急騰。前日の163円から一気に瞬間210円まで買われた。その後、12月2日現在で268円まで買われている。それは子会社化によって、経営が好転するとの判断が素直に株価に表されたことになる。必ずしもそのケースに当てはまるとは限らない。状況を深く読み行動することが大切である。

以上のように株価は材料だけで買うには限界がある。業績の大幅な好調という場合に更に、好材料が加わっているがどうかも重ねてみて判断することが要求される。

第9講 銘柄選択5 会社側の姿勢はどうか

株価はそもそも企業(会社)が資金を集めるために発行した株式の価値を指す。その価値を決めていくのは業績である。利益を挙げなければ、株式を保有している出資者に利益の分配ができない。そのため、企業は収益を挙げるために事業に全力投球し利益追求に猛烈にこだわる。低コストで高品質な製品を生産する一方で、新商品、新技術を開発し、それを販売するために営業網を整備し、販売促進に資金や人的資源を投入する。そのようにして、収益を挙げるために涙ぐましい努力を重ねて利益を追求するのである。

収益を得ることは株式の価値が上がることになり、株主にとって利益配分がより高く見込めるために、その会社の価値が上がる。つまり、株価が上がることになる。投資家にとっては利益から得られる配当(インカムゲイン)の増加に加えて、株価上昇によって発生する差益が発生(キャピタルゲイン)する。まさに、業績の向上は投資家には笑いが止まらないことになる。では、企業にとって株価の上昇はどういうメリットがあるのか。

以前に説明したように(第2講)、会社は株式の発行によって不特定多数の投資家から資金を集める。その際、高い株価で発行すれば、少ない株式の発行で大きな資金を集めることが可能になる。それは調達資金に必要な費用の低減、すなわち、財務コストを下げることになる。ゼロ金利状態の場合には間接金融(銀行借入や社債)のほうが一時的に有利な場合があるが、間接金融はいつか返済をしなくてはならない。借金は借金なのである。それに対して、株式の発行は自己資金、つまり、会社の財産になり、もちろん、返済の必要はない。したがって、高株価は企業が資金調達する上で有利になる。しかも、それだけでなく、自社の製品の競争力に大きな影響を及ぼすことにもなり、ライバル会社との株価差は経営者としては放置できない問題になる。

それについて説明する。同じような製品を作る会社がトップ争いをしているとしよう。

A社   B社

売上げ  100億円 120億円

経常利益  10億円 12億円

株価   500円  800円

 借入金  70億円  70億円 

 配当    5円   5円

以上のような会社の状況と仮定する。

B社がA社よりも300円株価が高いことになる。借入金は同じで、製造コストも同じとすれば、販売する商品の利益率はほとんど同じとなる。わずかにB社のシェアが高いことになる。要するに株価の差だけが、両者の差ということになる。

 ここでB社が高株価策を実行し、株価が1000円まで上がったとしよう。そして、100万株の株式を発行し資金調達をした。10億円の資金を手にすることになる。一方、A社も高株価策を意識せずに500円で200万株の資金調達を実行したとしよう。10億円と調達額は同じである。増資後の配当を考えるとA社はコストが1000万円高くついたことになる。

株価無視は倒産の危機も

この差は小さく大きな問題がない、とみられがちであるが、将来、両社に大きく影響することになる。両者とも激烈なシェア争いを日ごろ、演じており、製造コストも差がない。そんな両社に資金調達の面でコスト差がついたことになる。

顧客からの値引き要請があれば、B社は10円下げることができても、A社は8円までしかできない事態が生じてくる。その差は増資の際に起きた調達コストでの差がそうさせる。このことによって、競り合っていた両社の力関係が崩れる。顧客は少しでも安いB社の製品を買うことになり、B社のシェアが少しづつアップしはじめる。そうすると、量産化が進み更に、低コストが可能になり、もっと顧客の値引きに応じられることになる。逆に、A社はシェアを落とし、量産効果が発揮できずに、顧客を失う。その結果、収益も低下し、500円の株価も下落する。2~3年すると次のような差になって現れる。

A社    B社

売上げ  100億円   150億円

利益    7億円   17億円

株価    350円   1200円

借入金  80億円   30億円   

配当     5円    10円

というような変化になって大きな差がつくことになる。 高株価策を積極化させたことによって、シェア争いを演じていたライバル会社との差が決

定的な結果によってそうなったのである。こうなるとA社は事業縮小するためのリストラをせざるを得ないか、別の新製品開発によって出直しするか、はたまた、B社にギブアップして吸収合併の軍門に下るかなどのいずれかの選択が迫られる。株価を無視しているとこのような恐ろしいことが起きる。株価に対して無頓着な経営者と積極的な経営者では会社そのものの存亡にまで影響をもたらすのである。このことは経営者であれば、十分理解しておかなければならない。

 筆者は昭和50年頃に住友電工の当時、経理部長だった川上哲郎氏(その後、社長を経て関経連会長を歴任)に高株価策を訴えたことがある。今日では光ファイバー網が全国に張り巡らされ、ブロードバンド時代を迎えており、光ファイバーは珍しくもなんともない。しかし、当時は光ファイバーの全国網はまだ先のころであったが、将来、光ファイバーによる通信を築き上げる本命企業として注目されようとしていた。光ファイバー生産のために、積極的な設備投資が欠かせないことは明らかであり、筆者はしばしば住友電工への取材を怠らなかった。当時の株価は120円程度でウロウロしており、イメージは銅市況と連動する電線銘柄の域を出なかった。「そのような株価で設備資金をどうするのか」と川上氏に高株価策を積極化することを再三説得していたが、「必要は理解しているが、どのような方法ですべきなのか」と具体的な方法については分からなかったのである。

筆者は電線のイメージから光ファイバーへのイメージを変えること、将来の業績についてのビジョンを描き自信もって投資家や証券会社に説明することを提案した。川上氏はそれを聞き入れたのかどうかは知らないが、後に、そうした行動をとり、広報部を設置することでそれを実現し、積極的に会社のPR活動を進めた。現在でいうIR活動である。当時、事業会社が証券会社に出向いて、自社の説明をすることはほとんどなかった時代であり、住友電工は幻燈(VTRはまだ普及していなかった)を使って自社のPRを積極化したのである。画期的なことであった。その努力が実りだして第一回の転換社債を確か、220円で発行したと思う。その後もPRの効果が加速し、60年(1985年)には2000円の株価をつけるまでに高株価は成功した。その年の新年の人気株第一位に輝いた。川上氏が専務を経て社長にまで出世したのは高株価政策の成功の功労者であったからだ。

住友グループにこの快進撃は少なからず衝撃を与えた。住友化学が構造改革を終えた後、高株価策を積極化させる作戦に転じたのは59年    (1984年)ごろであった。やはり、熱心に株価対策を筆者に聞き、実行部隊をつくり、積極的に証券会社にPR活動を展開。「住友化学のような大型株は500円の株価が実現できれば大成功」とみていたのに、220円そこそこの株価がわずかの間に500円をつけた。1985年3月のことだ。それからわずか一ヶ月で1000円をつけてど肝を抜かされたものだ。タイミングもちょうどバブルの起きる初めの年であり、大型株に集中人気が浴びやすいときであった。これによって、バブル期の大型株人気の第一号が住友化学になった。高株価策の実行部隊は大成功で大喜びし、誘われて大いに騒いだものだ。それ以後、大型株が一斉に高株価に走っていったものだ。

バブル崩壊後、高株価策は株価の低迷の影響もあってなかなか実行できず、小型株だけの世界になっている。このように、高株価のもつ意味が理解されて今日ではIRという名の下で会社の株価意識の高まりは一般化されるようになりだしている。

内容も外国人や大手証券会社のアナリスト向けから直接個人投資家向けの説明会が盛んになっている。

機関投資家の株式離れ減少が起きて、直接個人投資家への説明会が自然と増えている。また、ストックオプション制度を導入する企業が増えており、好業績な企業ほど高株価策を積極化する傾向が強まっている。

証券会社の利用方法で差

高株価は新規の設備資金などまとまった資金を確保する必要に迫まられる場合には威力を発揮するが、最近のように有利子負債を削減する目的のためにも高株価策に走るケースもみられる。いずれにしても、間接金融を減らして、直接金融に重点をおくことによって財務体質の強固な安定と収益力をつけることには変わりはない。

このように高株価策は「銀行よさようなら、証券よこんにちは」の世界になるが、問題は高株価の用事のある時だけ、投資家にPRに積極的でそれが終われば投資家へのサービスは分割も配当も増やさないというその場限りの株価対策をする企業。それと証券会社の姿勢である。

証券会社は資金調達の引き受けをする。引き受けは一社の場合もあるが、数社でするのが普通である。引き受けシェアは主幹事証券が大体50%以上で残りを数社で分け合う。したがって、証券会社はシェアを少しでも高めようと水面下では激烈なシェア争いを演じている。特に、メジャークラスの企業の場合には激しい。NTTとか日立などの大物では凄まじい。また、成長著しい企業でも同じように争奪戦が繰り広げられている。

企業側ではどういう基準で主幹事証券を決めるのかだが、それぞれマチマチ。主取引銀行の系列証券とか、オーナーが創業以来から付き合っていたとかなどで幹事証券を決める場合もあるが、最近ではどれだけ高株価に貢献したのかを基準にして主幹事を決めるケースが増えている。そのため、主幹事は未来永劫変わらないという保証がなくなっている。

企業はそうした基準で決めた後、公募増資で資金調達が行われたとしよう。例えば、公募価格1000円としよう。無事払い込みも済んだ後、株価が公募価格を割り込んだ。企業側は「何とか公募価格を込み800円になった。払い込んだ投資家から企業側に苦情の抗議が舞い込むことになる。それにたまりかねて、企業側は証券会社に「何とか公募価格を上回るように株価対策をしてください」と証券会社に頼む。証券会社はとりあえず、「何とか努力してみます」と返事をする。ところが、一向に株価が戻らない。相変わらず、投資家から苦情が企業側に続く。これには企業側は弱い。そして、証券会社に更に、催促する。ところが「頑張ります」の一点張りでやはり動こうとはしない。高い引き受け料を支払った企業にしてみれば、株価を維持するのが当然と考えているだけに、積極策をとらないで動かない証券会社には裏切られた思いで一杯になり、その行動に理解に苦しむことになる。

なぜ、証券会社は動かないのか。証券会社にしてみれば、引き受け手数料はあくまでも公募増資を引き受けたことに対する報酬であって、株価維持のための費用は含まれていない。だから、株価を維持するためには改めて、その費用に見合う資金を企業側から出してもらわなくては株価維持はできない。そういう事情が理由になっている。それでは証券会社もそこをハッキリ言わないで、実行する予定もないのに「努力します」などというのか。証券会社の立場として顧客の事業会社に対してなかなか言えるものではないらしい。証券会社の「頑張ります」などという言葉は「しません」の意味が多分に含まれていることを企業側が知ることであろう。

株価を維持したり、更に、高株価にするには投資顧問先や機関投資家向けに企業の中身を理解してもらうためのIR活動を通じて買ってもらう以外にない。そのために新たな資金を用意するとか、集めた資金の一部を証券会社の別の金融商品を買うとか、運用資金として提供するなどの証券会社にメリットのあることをしないことには証券会社は動かない。企業はその点について理解できていないケースが多分にみられる。

公募増資で集めた資金が仮に、10億円あるとする。すぐに、その資金が必要というわけではないはずだ。3ヶ月や半年ほど猶予があれば、その間、国債や外債、投資信託などを買うとか、また、10%分を運用を任せるなどの
なんらかのメリットを与えることで証券会社は行動をとるのである。集めた資金をすぐに預金にまわすようであれば、公募価格が割れてもやむをえないと考えるべきであろう。そういう証券会社の要請を常に、応えられる企業の公募増資は後もうまく行くのである。京セラはそうした証券会社の行動をよく知っており、主幹事証券へのサービスはハンパでなかった。そのため、京セラの株価はいつでもファイナンスできるように高株価を維持している。新規公開会社ならば、認知度がゼロに近い企業がほとんどであり、そうした努力を上場直後から実行しなければ、年がら年中株価が安いとボヤイいいなければならなくなる。上場前は証券会社がチヤホヤするのは当たり前であり、本当の企業努力は上場後だということを知ることであろう。それが投資家への真の優遇となるのである。

償却を超える投資の銘柄を狙え

資金調達は先ほども説明したが、設備資金や運転資金、M&A資金、借金返済などが必要になって実施する。通常の設備資金はもともと、毎期、工場の投資資金を償却する金額や内部留保によってまかなうことができるのであるが、たまたま、新製品を発売することになり、新工場を建設すると償却の範囲を超える大きな資金が必要になってくる。例を挙げれば、毎年、10億円の償却資金、内部留保5億円あって、新工場の設備資金が20億円必要となれば、不足分5億円を外部から調達しなければならない。その際に借金(間接金融)にするのか、増資(直接金融)にするのかの選択に迫られる。借金だと金利負担がその後かかってくる。新製品がうまく売れればその負担も軽減されるが、もしも、失敗すれば一気に重圧となって経営を圧迫しかねない。直接金融は金利負担がかからないが、配当負担がかかる。しかし、失敗して収益低下を招いた場合には減配するなどの処置がとれるために、負担額の調整ができる。上場企業であれば、増資は高株価で実施すれば調達コストは大きく軽減される。したがって、償却額を大きく超える設備投資をする企業は高株価策を積極化させるとみることができる。

最近の例をみれば、楽天が高株価にした後、10万株の公募増資を発表した。資金調達額は推定で400億円を優に超える。その資金でDLJディレクトSGF証券の買収(M&A)を予定している。ザッと300億円が必要というもの。

買収でなくても、設備投資額が大きく膨らむ場合にも増資はしばしば実施されるので設備投資計画についてはよく注目しておくことだ。巨大企業よりも小型企業のほうが高株価策を実施しやすいケースがみられるので、特に、注目である。

株主軽視銘柄を無視せよ

また、銘柄を選ぶ上で参考にしてほしいのは社会的な責任をまっとうしない企業は選択肢から外すことが望ましい。

創業者は創業当時から常に企業は自分のものという感覚をもっている。確かに、出資も自分の分が圧倒的に多く、従業員の顔と名前も全部覚えられる規模であり、自分そのものとの意識をもつのは無理もない。そのために、必死になって企業を大きくしようと寝食も忘れて働くのである。その努力がだんだん実って、規模が大きくなっていくと創業者の出資比率も低下し、従業員の顔も名前も覚えることができなくなる。概ね、50人を超える従業員を抱えるようになった時には創業者も自分の持ち物ではないと認識すべきで、社会の責任を果たすことに努力すべきなのである。

地域住民としてその地区に貢献するとか、マスコミに対しての配慮、業界への貢献などに前向きに対処していくことを考えるべきなのだ。公開企業になれば、なおさらで企業は個人の所有物ではないと意識変換をしなくてはならない。

昔、松下電器はその認識に欠けることがあった。規模がどんどん大きくなるにしたがって、天下の公器としての認識が強まり、社会への貢献、マスコミへの対応なども前向きに対応できるようになった。我がさえよければという感覚をもつ企業は今でも多い。しかし、松下電器と同様に大きくなるにつれて、公器としての認識が確立されていくと、巨大企業らしい振る舞いができるようになる。

上場企業になった瞬間から公器としての意識が目覚めなくては上場企業とはいえない。個人企業の時代にはそんな余裕もなく、いかに儲けるべきかを考えるだけでもよかった。上場によって、全く、会社と無関係の人が株式をもつのである。そういう人たちに常に、わが社はこういう方針で経営をしているとか、こういう事業に力を入れますなどということをアピールしておかなくてはならない。その手段としてマスコミ、特に、投資家向けのマスコミには親しい関係を結んでおく必要がある。大部分は取材などには協力的だが、より投資家に訴えるための企画などを企業にマスコミが提案してもなかなか応じないケースが多い。極端な例は我々投資家向けのマスコミを利用するだけ利用して用済みとなれば、冷淡になる。

投資家へのサービスそのものが悪い企業としてキーエンスが代表される。株価が上がればそれだけで投資家にサービスしていると割り切っているのである。いくら高収益がでても配当金を増やさない。配当性向はわずかに03.3月期では3%というどケチぶりである。たまに、分割を1割する程度。キャピタルゲイン(株価の値上がり利益)とインカムゲイン(会社の収益の分配)をごっちゃにしている。株価の値上がり利益が投資家へのサービスと考えているならば、未来永劫株価は上昇しなくてはならない。それには限界がある。天井近辺で買えば、投資家へのサービスはない。所有していても配当の期待もないのであれば、投資価値はない。会社の儲けを株主に還元しないのは背信行為である。株主に利益還元しないで従業員に儲けに応じてボーナスを増やしているのであれば、これは横領罪といわれても仕方のない行為である。株主軽視と同時にマスコミへの対応も悪く、我がさえよければの典型例である。

このような上場企業の資格のない企業は他にもある。出資者に対して冷淡な企業には投資家は無視することが望ましい。投資しても無駄というものである。

個人投資家が株式市場で大きく注目を浴びる時代が近づいている。銀行が株式をもたない。企業も必要最小限の所有に止める。外国人もかつての勢いで株式を買わなくなった。その中で唯一、株式保有比率が今後高められるのは個人なのである。法人持ち株比率の高い時代には少々株主優遇を怠っても法人が抗議することは少なかったし、自らのPRを積極化しなくても問題は生じることもなかった。しかし、個人に頼らざるを得ない時代を迎えると株主重視に転換しなければ、資金調達もうまくいかなくなり、その後の株価を維持することが難しくなる。これまで、株主無視を続けてきた企業は180度考え方を改めなければならない時期にきている。

投資家もそうした選別の眼をもって銘柄を選択しなければならない。軽視の企業は徹底的に無視することである。

新興銘柄は高リスクと認識

最近は創業間もなくしてマザーズ、ジャスダック、ヘラクレスなどの新興市場への公開が可能になっている。赤字でもかまわないという条件も公開を加速させている。かつてはそこそこ成長して十分な利益を確保できるまでは2部市場に上場は困難であった。そのため、伸び盛りの時期には投資できず、安定期に入ったところで上場することになり、投資魅力の薄い企業が目立つようになっていた。それが、新興市場によって、創業初期からの投資を可能にした。企業は創業して10年も経つと大部分は利益を出せないといわれる。その意味では新興市場は従来になかったリスクの高い市場と呼べる。米国のナスダック市場でも公開の門戸は開かれているが、毎年、数百社の企業が退場している。リスクの高い市場という認識を持たないで、1部市場と同じ感覚で株式投資をすると大やけどを負うことになりかねない。筆者は基本的に新興市場銘柄を推奨しない。一時的に大きな利益がでても、翌年には赤字計上することなどは珍しくない。特に、不況期にはその波をモロに被り、簡単に倒産する。新興市場での投資は確かに成長の楽しみということで長くもつことも欠かせない選択肢ではあるが、業績の動向には細心の注意を常に怠らないことが必須条件だろう。少しでも、これはおかしいなと思った場合には問答無用で即刻、売却を敢行することを頭においておくことだ。

以上、会社側の姿勢から銘柄を選ぶことについての注目点と注意すべき点について述べてきた。企業は投資家と常に一体と考える経営方針を貫いている銘柄を選ぶべきである。逆に、我がさえよければ、投資家などは利用するだけでよいと考える銘柄は目先的に株価が上がると思っても無視することが望ましい。買った後で保有するようなことがあると会社側の姿勢に対してストレスが溜まるだけである。

銘柄の選択方法を5回にわたって簡単に説明してきた。①市場の支配者を特定、②業績重視、③ヒット商品をもつ、④時代の流れに合う材料をもつ、⑤会社が株価に強い関心をもつか、などをそれぞれ研究してその条件にぴったりはまった銘柄を選びたすのである。後はタイミングだけである。その後はチャート、需給関係を考慮して思い切って買うのである。買うと同時に、目標の設定を実行する。利食いする位置、失敗した場合の損切りの位置を決めておくのである。

次回からはタイミングなど最後の決断に欠かせない投資戦略、チャート、指標の見方などについて説明していく。それらを総合して判断してこそ株式投資は成功していくのである。

第8講 銘柄選択4 材料の影響度をみる

海外要因を常に考える 

材料とは何か。これは企業の将来の業績や株価形成を左右する物理的、心理的な要素を指す。具体的には第7講で紹介したが、新製品・新技術、会社の経営方針、資本移動、配当政策、会社同士の提携、金融政策、経済政策、政治体制、金融庁の行政、取引所の規制、国際会合、国際市況、為替動向、各国の政策、国際紛争、天候、事件・事故などである。これらの材料は企業の業績を左右する要素を含むものと絡み合って、株価は形成されていく。

材料は大きく分けて、業績に強く影響するもの、株価の需給に影響するものに分けられる。業績に影響するものは   で表した。もちろん、すべての企業に業績に影響するものばかりではないが、業種によっては影響を強く与える。

例えば、3月から米国のイラク攻撃が始まった。国際紛争である。すでに、攻撃は数ヶ月前から予想されていたために、攻撃によって、石油価格や金などの国際商品や海運市況の上昇で石油株、金鉱株、海運株などの関連業種の株価を刺激していた。また、米国へのテロ攻撃を警戒して、米国内の消費低迷を予想してドルを売ってユーロを買う動きもみられドル安という為替変動による影響によって、輸出関連企業の株式が売られる事態を呼んでいた。

海外関連の材料や国レベルの材料が飛び出すと連鎖的に他の材料を刺激するという事態を生む場合があり、これらの材料は一つ一つ独立したものではないことも知っておく必要がある。例えば、米国がドル安政策を打ち出すと円高になる。日本の企業は構造的に海外依存型になっており、輸出関連企業は米国へ輸出すれば、売り上げが減少し、利益も薄くなる。一方で、国内産業型では食品は原料の穀物類、畜産品などが輸入に頼り、住宅も建材、木材、樹脂製品も海外、繊維も原材料の石油、羊毛、綿花も海外依存などであり、輸入コストが安くなるため、原材料面での収支は良くなる。また、日本国内がインフレ状況であれば、ドル安は歓迎され、金利低下を呼び込み買いが買いからの資金流入が促進されて、株高を招き、消費を促進させるなどの効果が見込まれる。このように産業全体が海外に依存している日本にとって外国の金融政策や経済政策は企業業績に与える影響が大きい。ここ30年間は一貫して円高傾向が続いており、輸出企業は絶えず為替差損との戦いが続いている。最近では中国への工場進出はじめ、米国、欧州などへと生産拠点を置き始めており、円高に対する対応もかなり進んでいるため、一時期のように円高要因の受ける影響は少なくはなっている。しかし、為替だけでなく、今後は中国や中東などの情勢が新たな海外要因として急速に影響力をもつようになりだしており、日本企業の国際化の進展に伴って、常に、海外の情勢は目を離せなくなっている。

イラク攻撃などはその好例だが、中国で流行の疫病のSARS(新型肺炎)は進出企業に深刻な打撃を与えようとしている。今後、北朝鮮で起きうる紛争や自衛隊のイラク派兵が原因となって日本でのテロ行為の可能性などはこれまでにない影響もでる恐れが考えられる。

為替動向について、もう少し触れてみたい。これは円高や円安によって株価が大きく左右されるために、重要な材料である。一般的に円高は輸出企業にとってマイナスであり、国内産業でも海外製品が安く入ってくるので、デフレ圧力がかかるために、好ましくないとされている。ただ、国内の景気が良くてインフレが進行しているときには歓迎されて、買われるケースがある。また、円高は金融面で緩和を意味するために低金利が促進され、為替差益を狙って海外からの資金流入が入りやすくなる。それによって、金融市場が活発化することになり、株式市場や債券市場にはプラス作用を引き起こす。逆に、デフレ下の円高はデフレ圧力を助長し、国内景気を悪化させ設備投資も萎縮させ、賃金の低下作用を引き起こすために、消費も伸びないなど景気への悪影響をもたらす。しかし、金融面では余剰効果が強まり、不況下の株高を演出することにある。その場合の物色対象は主に、国内産業の低位株、大型株が活躍する

ただ、02年、03年のように銀行の健全性に問題が続いている場合には株式市場への資金流入は限られる。銀行が低金利状態であっても融資を制限するためである。安全性を極端に重視するので、債券相場にのみ、資金が流れる構図になってしまう。この流れを断ち切り、株式市場に資金が入りやすいように金融政策や政府の対策が一刻も早く実現することが望まれるわけだ。

円安相場はどうだろうか。円安は輸出の増大を促進し、設備投資も盛り上がり、輸入品の増加も続く、賃金もアップし、消費も盛り上がる。その結果、金利上昇を招く。金融面では引き締めになるのだが、企業収益が増加しているために、業績を評価する展開になり、国内企業の資金や個人の資金で株価は上昇する。その場合の物色対象銘柄は小型株、ハイテク企業などになる。相対的に低位株や国内産業の大型株は上昇幅も小さくなる。

不況下の円安の場合にはどうか。これは国内が不況のため、円安によって、輸出が増大することになる。国内では、輸入物価の上昇などインフレ圧力がかかるが、消費は大きく落ちない。高金利で国内産業は停滞が続く。株価は輸出関連株や小型の値嵩株などが活躍する。

以上は通常の円高、円安状態の中での景気や株価の物色対象を説明したのだが、海外の要因によって、必ずしもそうした動きをするとは限らない。

例えば、円高で国内不況期のときにはデフレ圧力がかかりやすいが、アジアや米国が好況の時には国際商品の上昇がみられる。そうすると円高によって、輸入物価は抑制されるはずが、海外の原油や非鉄金属などが高騰したりすると輸入物価は大きく押し上げられ、国内でもインフレが進行する。不況下の物価高となって、金利が上昇することになり、本来の円高状態の姿を変えてしまう。そのような場合には株価は低位株物色よりも小型の材料株などが動きやすい。高金利状態になり、資金が株式市場に流入しづらくなるため、少ない資金で短期で値幅をとる動きがでやすいためである。

このように、海外要因はいくつかの要素が複雑に絡みはじめると基本的なパターンから外れることがしばしば起きる。その都度、株価がどう動くのかについて、常に、冷静に判断が要求される。

政策は大きな刺激材料に

政府が決める政策や行政指導は関連企業を大きく刺激する。例えば、03年10月に施行される東京都のディーゼル車の排気ガス規制だが、これを前に、運送業者は大型トラックの買い替え需要を積極化させている。バブル時に大型トラック(4トン車以上)の年間生産は19万台だったが、毎年ジリ貧状態が続き、01年には7万台まで減少していた。それが、02年の後半からこの特需が発生し、02年には9万台まで生産が回復している。その結果、トラック大手の三菱ふそう、いすゞ、日野、日産ディーゼルなどの業績は軒並み回復。いすゞなどはその年に生産の縮小などリストラを進めていたが、急きょ増産するという劇的な変化を呼んでいる。その結果、03年3月期の決算では日野が連結経常利益3.5倍という大幅な増益を演じ、04年3月期も74%増益を予想している。

 株価も02年9月2日の259円を底にほぼ一貫して上昇を続け、03年11月6日には659円の高値をつけている。03年1月からでも230円幅の上昇になっている。その間、特に02年後半の全体の相場は下落傾向を強めており、完全に逆行高を演じたことになる。

 トラック専業メーカーの中でも一番好内容なものが人気集中するのだが、内容の厳しいいすゞや日産ディは上げ幅も50円、100円程度と大きな差になっている。

同じ好材料の中でも、何でも良いわけではない。やはり、買う場合には一番、内容の良い銘柄を選択することが条件になる。トップ銘柄を選べということがある。市場の人気テーマによって、いくつかの銘柄の中から買う場合には必ず、業界トップの銘柄を買えという意味である。すでに、述べたが、トップ銘柄の株価が値がさだからと言って水準の低い同じ業種の銘柄を買うことはしてはいけない。自分の資金に合わせて株を買うなと第4講で説明している。相場に合わせないとしっかり値幅がとれないのである。二番手銘柄は上昇幅も小さく、下落するのは一番早いということになり、「安物買いの銭失い」になるのである

政策銘柄として、電力会社が03年4月から新エネルギーを発電の一部として採用しなければならないというエネルギー新法が施行された。これによって、新エネルギー、つまり、風力発電、太陽光発電、バイオマス発電、地熱発電などが実用化されることになる。この中で発電コストが低く、容易に設置できるのが風力発電。

1㌔㍗当たり9円で太陽光の5分の1の発電コストである。したがって、電力各社は風力発電の設置に前向き姿勢を示している。また、政府はその促進のために国立公園、港湾内での設置も可能にする法律規制の緩和を実施することを決める。これによって、風力発電の設置会社が注目されるようになっている。日本風力開発(2766、マザーズ、1株)である。03年3月に公開されたが、3月24日に安値45万円の後、6月には97万円までつけて、この政策を歓迎している。業績も全国で風力発電の設置が進むにつれて、業績も急向上し、今期は経常利益5億3000万円と前期比3・1倍を予想している。また、同じ関連の酉島製作所(6363)もその中で注目される。03年3月期は減益、04年には連結経常利益は横ばい見通しにあるが、一時的に人気を集めた。

政策によって株価は強く刺激されることはしばしばみられることであり、材料としての重みが大きいことをしっかり頭に入れておくことが大切だ。昔からの故事に「政策に売りなし」と言われており、材料の重要性を意味していることになる。

材料は必ずしも買われない

 業績に将来、大きな変動を及ぼす材料は株価を刺激するものであるが、時代のニーズに合わない材料が飛び出した場合には株価へのインパクトは全くない。材料というのは基本的に投資家に夢を与えるものでなければならない。できないことを可能にしたり、売れないと思っていたものが売れたり、ほしいと思うものを大量に供給したり・・・などのことを実現できた会社を評価するのである。

 新製品の大ヒットや新技術、更にはないものねだりを評価するのはそのためである。デジカメのヒット、制がん剤の開発などで株価が買われるのはその好例である。

 ずいぶん古い例になるが、1973年頃に石油ショックが起きた。その当時、石油を輸入に頼る日本経済は大パニックに陥った。何しろ、それまで1バレル4ドルだった原油が12ドルまで上げられたのだから、関連産業ばかりではなく、日本の製造業、サービス業を問わず、価格上昇が一気に起きるために、低価格を武器に外貨を稼いでいために「日本経済は売りだ」という見方が海外投資家に広がり、株価は急落したものだ。

しかし、その中で資源株だけが活躍した。帝国石油、日本石油、日本鉱業などの石油開発銘柄や三井鉱山、住友石炭、北炭などが賑わいをみせた。石油開発に進出した帝人、伊藤忠なども資源株として活躍している。1978年の第二次石油ショック後の1980年辺りまで、全体の相場低迷したものだが、次第に石油上昇による経済の新価格体系が浸透し、同時に、政府の不況対策が効果を発揮するにつれて、全体の株式も落ち着きを1983年ころから取り戻しはじめ、資源株人気も下火となっていき、ハイテク銘柄などが活躍をみせていくようになる。

そうした資源株が下火になった頃に石油開発を進めていた成果が現れてくる。伊藤忠が大規模油田を発見とか、日本石油や帝国石油も開発中の油田規模が大きいとか天然ガスが大量発掘したなどのニュース(材料)が飛び出す。ところが、その発見も株価に反応しない。逆に、売られることになる。その理由は石油がなくて困っている時ならば、ないものねだりで関連会社の株は買われるが、すでに、石油供給は安定状態になっており、材料にはならないのである。むしろ、需給バランスを崩すとことになり、売られることになりかねない。いわゆる、「あまりものに値なし」というわけだ

このように、好材料は常に、好材料というわけではない。その時代が要求する夢を満足にさせてくれる製品や技術、政策、対策などの材料が飛び出した場合には好反応を示すのである

したがって、材料が飛び出したときには株価に飛びつかず、時代を反映する材料かどうか見極めてから売り買いを決めること。

分割、増配で大きな変動

資本の変動や配当の増減は株価に大きな影響を与える。先に説明したように株価は会社の収益の稼ぎ具合によって、基本的に決まっていく。先ほどカラ説明している政策や為替などで企業業績に影響を与えるものほど株価の上げ下げを大きくする。資本移動や配当などはそれこそ、株主への影響は非常に大きく株価の行方を決める重要材料になるわけだ。

稼ぎの度合いが配当の増減に直接関係してくるのは当然であり、また、製品の需要が増大して設備を拡大しなくてはならない場合には通常、資本を増大させる。その際、株式を新たに増やすために株価の価値は希薄される。つまり、需給関係は悪化となり、通常、その分だけ株価は下落する。このように増資や増配は株価を大きく変動させるが、必ずしも、予想されたような結果にはならない。それが株価の不思議というか、怖いところである。

増資の場合。公募増資と株式分割の場合について説明する。1970年以前、株式は額面50円時代が中心で、額面増資が中心だった。発行済み株式の2割無償増資とか、5割有償増資などという方法で資金が集められた。1000株株主を例にすれば、2割無償は株主が資金を払い込む必要がなく、200株分をタダで貰えることを意味する。5割有償は株主は500株分に50円の額面分を掛けて25000円企業に支払うことを意味する。この場合その分だけ株式が増加したことによる株価の修正が行われる。500円の株価は単純に1.2で割り416円に修正される。5割ならば1.5で割り333円となる。額面のために集められた資金はすべて資本に組み入れられることになる。

これに対して、無額面時代の現在は発行株数と価格があらかじめ決められる。例えば、200万株、500円というようにして合計10億円資金を集める。無額面の方が額面方式よりも発行株式数が少なくて資金を多く集められる利点がある。それだけ、配当負担が少なくなったり、金融機関からの借り入れを返済することで財務コストが安くなる利点がある。そのため、収益力に自信をもつ企業は高株価策をとる。広く投資家に実態を知ってもらうために、自社の広報としてIR活動などに積極行動をとるのはそのためである。

この増資は時には買い材料、時には売り材料になる。株式市場の需給関係が悪いときには売り材料になり、資金の市場への流入が多い好需給の場合には売られず、むしろ、大きく買われる。そんな時にはその企業のもつ成長性と深く関係してくる。高い成長の場合には買われるが、低成長の場合には下落するキッカケになってしまう。市場の需給と個々のもつ成長性で増資後の展開は決まるといっても過言ではない。

昨年の相場のように銀行が持ち合い解消売りや不良債権処理で株式を売却し続けているときは株式需給は悪化の状態ということができるだろう。そのようなときに大量の増資などをすれば、必要以上に株価を下落させてしまう。そのため、企業は増資を敬遠してゼロ低金利を利用して普通債などの発行で資金調達を行ったり、ユーロ高をみて、ユーロ建ての資金調達が目立った。

今年の4~9月のように株式需給が良好な場合には公募増資などを実施しても株価は下落せず済む。このようにその時々の金融状況を見極めながら有利な資金調達(調達資金の低コスト化と株価低下のリスク軽減)を企業は常に実行しているのである。

配当の場合にはどうだろうか。かつては収益を挙げても、減益であってもいつでも1株5円の配当の時代があった。最近は配当性向(最終利益の何%が配当になっているかを表したもの)を重視するようになり、高収益を上げた企業は高配当するようになりつつある。

増配は株価を押し上げる効果を発揮する。増資のように株式の需給を左右することがなく、株式の価値を高める作用を起こすためだ。そのため、株式を増加させる株主優遇の株式分割よりも増配による優遇策を望む投資家が多い。しかし、株式需給が良い場合には分割が喜ばれ、株価を刺激する。需給環境をよく見据えて判断する必要がある。

事件・事故は売られても戻る

企業はあらゆる場所であらゆる活動をしている。したがって、トラブルを引き起こしたり、また、巻き込まれたりする。工場が爆発したり、台風で操業不能に陥ったり、欠陥商品を大量にだし回収騒ぎになったり、薬害事件を起こしたり、食中毒を起こしたり、大量の不良債権が発覚したり・・・などいろんな事件、事故がおきる。ケースにもよるが、概ね、相場の世界では「事件投げるな、事故売るな」という故事がある。一時的に業績悪が起きても企業の根幹を揺るがすことのない場合には株価は戻りも早いということだ。ただ、経営を揺るがす事件は別。最近では雪印の中毒牛乳事件や日本ハムの牛肉を政府に不正に買い取らせた事件が挙げられる。雪印は3年前に事件を起こし、その後は売上げ半減、大幅な赤字を3期連続計上し、いまだに立ち直りのメドがない。日本ハムも事件後、大幅な減益に見舞われたが、今期は50%経常増益を見せているものの、利益は01年3月期の2分の1に止まっている。高収益の日本ハムが低収益に転落した。

株価は600円台にあった雪印は一時、99円まで売られ、その後、持ち直し280円まで03年5月には戻している。日本ハムは1500円台から事件直後には741円まで売られたものの、03年2月には1250円台まで戻した。雪印は経営の屋台骨を揺るがす事件になったために、株価も業績も戻りが鈍いが、日本ハムは回復の可能性が高いとの読みで戻りが大きい。 事件は一時的に大騒ぎになるが、経営への中期的な影響を考えて冷静に対応することが望ましく、会社側の事件や事故の対応の仕方によって結果的には大きく違ってくる。投資家自身が狼狽してはならないのである。

第7講 銘柄選択3 業績も中身をみよ

好業績をまず重要視

銘柄選択をする方法は考え出せばキリがない。名前が良いからとか、コード番号がなんとなく気に入ったとか、親戚が勤めている、大きな会社だから潰れないだろう、自分の趣味の商品を作っている・・・など身近な関係を投資銘柄に挙げる人もいる。それはそれで投資家が納得して選んだ銘柄であり、別段、それはいけないということもない。しかし、資金運用として一定期間に最大の収益を上げようと考えるならば、適切な銘柄選択とはいえない。あくまでも趣味の世界であって上がる銘柄の選択としては好ましくない。

銘柄選択は1か月とか、6か月などという期間を設定して、その間に、利息よりもはるかに大きな利益、例えば、3割程度の上昇が可能で、比較的リスクも少なくして実現できるものを探しだす投資行動である。銘柄選択2で紹介したように業績の劇的な変化を創造するヒット商品をもつ銘柄などはその代表例になる。上昇幅が非常に大きく、上昇期間も長いために、投資のチャンスが何回もある。活躍銘柄の王道である。しかし、なかなかヒット商品が次々にみつかるものではない。ほんの一握りの銘柄だけがその対象になるだけで、他の銘柄は対象外になる。しかし、活躍銘柄はヒット商品をもつもの以外にもいくつもみられる。その際にも、仕手筋介入による急騰銘柄を除いて、好業績銘柄の中から銘柄を選択することが絶対条件である。

なぜ、好業績にこだわるのかだが、株主に利益配分できるかどうかが株式の基本になっているためである。それは第1講で触れている。会社は企業に出資した投資家に出資の証として株式を発行する。その出資資金で商品を製造し、販売することで利益を得る。その利益を株主に配当などの形で還元する。そのためには利益が常に得られなければ、株主への利益還元はできない。必然的に投資家は利益還元の高い会社へと投資し、投資効率を高めようとする。したがって、業績が毎期好調でしかも、高収益会社へは資金が集まりやすくなる。そういう銘柄の株価の価値は当然、高くなる。

そのような背景によって、業績が銘柄選択の際に最も重要視されるわけだ。第6講のヒット商品をもつ銘柄はその業績を大幅に向上させたために、株価の価値も急激にアップするという理屈になる。

この基本を株式投資をする場合に決して忘れてはならない。どんな銘柄を買うにせよ、絶対的な条件は業績が好調であることを外せない。ここでいう業績だが、実績を挙げた好業績ではないことである。つまり、過去の業績ではないことである。あくまでも、未来に対してである。3月決算発表が5月に行われる。発表は前3月期の内容である。その発表が50%増益であっても、株価は反応しないことがある。反応する場合には前3月期が予想以上に好調だった場合である。予想された範囲であれば株価に織り込んだ後になり、確認されただけで終える。次の業績がどうかに関心が集まっていくのである。つまり、来年3月期の業績見通しになる。すなわち、先ほどの前期50%増益の銘柄でも、次期の見通しが10%減益であれば、逆に、売られるというパターンになってしまうのである。また、前期が赤字であっても、今期の見通しが大幅黒字転換になるようであれば、株価は強く刺激されることになる。

最近では決算発表の少し前に前期の業績が予想よりも大幅に良かったり、悪かったりした場合には増額修正や減額修正という形で先に発表するケースがみられるようになった。過去の業績が株価に影響を与えるケースはそうした途中での収益の大きな変化が起きた場合にみられる。予想よりも良かった場合には株価は大きく反応を示す。逆に、減額修正の場合には売られるというパターンになる。要するに、過去の業績であっても株価に織り込まれていない時には反応を示す。例えば、日本CMKは2004年3月期の業績見通しを連結経常利益24億円と5月に発表していた。ところが、上半期を終了させた時点で一気に56億円と修正した。それを発表する前日の株価は711円だったが、翌日から3日間ストップ高を続け、一気1011円までつけた。更に、4日経つと1139円まで買われた。このように大きな増額修正があれば直ちに株価は敏感に反応する。したがって、銘柄を選択する際には、どんなことがあっても、まず、業績はどうなのか、また、それは株価に織り込まれているのかどうかを常に判断することを絶対に忘れてはならない。

変化率の大きいものを狙え

好業績であれば、すべてが大きく株価を押し上げるのかというと残念ながらそうではない。株価の位置を大きく変えるのは業績の変化の大きさが決め手になる。変化とは赤字から黒字に一気に転換する劇的な好転の場合、増益基調でも30%とか、50%増など大きく伸びるケースを指す。そういう時には株価は大幅に上昇する。例えば、大阪2部の東洋機械金属(6210)。この会社は02年3月期には連結経常欠損10億1900万円となった。しかし、03年3月期には一転して同5億8000万円の黒字転換している。更に、04年3月期には20億円と実に3・4倍増を見込んでいる。この欠損で02年10月には全体の相場の悪化をモロに受けて166円の安値をつけた。しかし、03年3月期の中間決算発表段階で収益見通しを増額してから局面が一気に変化する。

02年11月には166円を安値に368円、03年12月には455円、1月には492円の高値をつけていく。その後、382円まで調整した後に4月には524円の高値をつけている。5月には34年ぶりの公募増資を実施し、今年中には東証2部上場を目指す。公募増資のクリーン期間が明けた6月から株価の上昇に加速がつき、9月にはついに1200円まで上昇した。10ヶ月で7・2倍まで買われたのである。その後、株式分割を実施して11月現在では800~900円の間で落ち着いた動きを示している。

収益力の上昇を考慮に入れると決して高い水準まで買われたとは言えず、上値の余地を残しているようにみられる。

同じように赤字から黒字転換で大きく化けた銘柄は津田駒工業(6217)にもみられる。01年11月期には連結経常欠損9億5700万円、02年11月期には8億3200万円の黒字転換となった。それによって、01年む12月には株価54円であったが、02年5月には317円まで買われた。実に、6倍弱の上昇である。その後も中国からの織機需要の旺盛さから03年11月期には同利益は21億円を予想し、株価も300円台をキープしている。

このように、赤字から黒字転換する場合には債務超過や累積損が膨大でない場合には株価は大幅に買われる習性がある。劇的な変化を株価は評価するのである。

また、劇的でなくても景気全体が不況期でほとんどの業界が減益見通しの時に増益を見込める銘柄や業種は買われる。03年3月期では自動車、鉄鋼、紙・パルプが好業績の業種であった。日産が人気を集めたり、自動車部品株も買われた。鉄鋼では新日鉄が堅調な展開になったり、鉄鋼専門商社の阪和興業が上値を追いとなるなど逆行高を演じている。しかし、全体の低迷相場の影響を強く受けて相場を出し切れない銘柄も目立った。紙・パルプの大手、王子製紙は逆に相場は下落傾向を続けるなど好業績が反映されないケースもみられた。これはその時々の需給関係が影響したものだ。

需給状況が強く影響

好業績なのに売られる。そういうケースもある。それは業績好調にもかかわらず、①予想通りの決算が発表された場合、②突発的な事故とか、トラブルの当事者になった場合③市場の物色流れに合わない銘柄で増益率が低い銘柄④市場の需給関係が悪い時に増資を行った場合⑤大商いで天井を打って需給関係が悪化している時、などのケースが主に考えられる。

①はすでに予想された段階で株価に織り込まれるために予想通りであれば材料で尽くしになる。すでに、先に説明した通りである。②ケースはしばしば医薬品株にみられる。一例を挙げれば、02年の三菱ウェルファーマがその典型。脳保護剤「ラジカット」が脳梗塞患者に大きな効果を発揮するとして、年商300億円を超す売り上げを期待され、30%以上の連結経常増益を見込めるとされていたが、20年前の血液製剤がC型肝炎になったとして訴訟問題が話題になった。それが懸念材料になって「ラジカット」による好業績は評価されず、株価は反落し低迷が続いた。このように、増益見通しであってもトラブル、事故などが原因になって売られるケースもある。この場合には企業は社会の一員ということを抜きに考えられないことを示したもので、業績好調の前に社会規範をしっかり守らなければダメだということを教えたものといえる。しかし、その問題が一過性で済む場合には改めて増益を評価する展開へと進む。事故事件がどれくらい長引くのかを判断する必要がある。

④、⑤は需給に絡んだ問題である。

需給関係というのは株価形成の上で極めて重要な意味をもつ。株価は極端な言い方をすれば、需給関係が良好でなければ上昇幅も期待されるほどではない。さきほどの王子製紙は03年3月期の業績は連結経常利益で倍以上を計上した。ところが、株価は02年5月に692円の高値をつけた後、相場は下落を続け、03年4月には423円をつけている。その間、あや戻しはあるものの、業績が評価された形跡はない。

その理由は需給関係の悪さにあった。大手銀行が企業との持ち合い解消を進めることと不良債権処理のために保有株式の売却を一貫して続けている。王子製紙の大株主はみずほ、三井住友、新生銀行などが上位に並ぶ。

その売りを個人投資家向けに3600万株割り当てることにしたが、完全な需給好転にはつながっていない。結果的に金融機関の売り圧力が業績とは関係なく続いたことが下落の原因であった。しかし、それが峠を超すと株価は回復に向かい03年8月には700円まで上昇し業績好調を評価している。

 需給は個別銘柄の事情だけでなく、全体の相場の需給の好悪で好業績であっても、買われるものと買われないものに分かれる。03年の前半の相場を例に挙げるならば、資金の市場への流入資金は個人投資家、法人の自社株買い資金、公的資金に限られていた。資金の流出は金融機関、法人、外国人になっている。流入資金のうち、積極的に上値を買うのは個人の資金だけであり、後は、下支え資金にすぎない。

つまり、株価の上げ下げの躍動感は個人資金が主体になっている。つまり、個人好みの銘柄の需給関係が良いことになり、大型株や国際優良株など外国人、金融法人などが大量にもつ銘柄は需給関係が悪くなる。したがって、好需給の個人投資家が好む銘柄の中で業績のよい銘柄を選別していくことが投資成果を挙げられるという理屈になる。もっとも、03年の5月以降は外国人が毎月、猛烈な勢いで買いはじめ、10月には全体の相場の底上げ現象をつくった。支配者は外国人となったのである。

 この見方は第5講の銘柄選択1、「支配者を特定せよ」で説明している。その時に市場を支配、つまり、買いの主役は誰かを見つけ出して、その動きに先手をとっていく意味である。個人投資家の好みは低位株と小型株である。小口の資金を運用しているために、数をこなすには低位株、値幅を狙うのは足の速い小型株という感覚で銘柄を選択する習性がある。

 二桁銘柄がわずかの日数で何割も上昇する。短期売買ではこたえられない魅力である。しかし、中身は債務超過とか、営業利益がでていても有利子負債が過剰にあるとか、業績が赤字などの理由で二桁に甘んじている。そういう銘柄は人気の最中に倒産することも否定できない。また、高値で買ってしまうとすぐに元の水準にまで戻ってしまう。元ならば良いが、更に、下へ言ってしまうこともある。業績を無視して需給だけで売り買いすれば、そういうこともおこりうる。いくら、需給が良くても業績を無視してはならないのである。

 好業績を持続している銘柄は人気化して需給関係が悪化しても、調整期間に入った後でも元に戻らず、むしろ、正しく評価された水準まで上昇するキッカケになることもあり、短命に終わることもなく、何回も買われるチャンスが訪れる需給と業績が噛み合い、更に、材料が加われば完璧な上昇相場を形成する。すなわち、買うチャンスも利食いチャンスも何回もある。したがって、需給だけの二桁銘柄には決して手をださないことだ。

 需給に関しては業績だけにこだわらず、どんな相場のときにも良い状態なのか、悪い状態なのかを判断して投資を決める。また、悪い状態であっても、展開次第では良い状態にも変化することがある。それをある程度予想できるように状況の変化には常に、深い関心をもつことだ。

 一例を挙げてみよう。信用買い残が一方的に買い長にある場合、一般的にみて、需給関係は悪いと考えられる。しかし、将来の業績を押し上げる製品をもっている。そこに眼をつけた外国人が積極的に買いに入ったとする。現物で外国人は買い上がるため、上昇する過程で買い残はどんどん減少していく。それに対して、カラ売りはつれてドンドン増加していく。そのうち、信用の買い残と売り残は拮抗するようになり、需給の好転へと変化したことになる。

 また、上値に大量のシコリが残っている場合、なかなか上値を追っていくのは難しいとみられる場合、通常ならば買いは見送られる。しかし、業績を増額修正するなどのこれまでにない好材料が出現すると一気に局面は変化し、上値のシコリもとれてしまう。需給関係の好転を意味し、こだわりを捨てなければならない。

このように需給が悪い状態でも状況次第では好転へと変化することもがあり、その時々に応じて需給状況の変化があることを常に頭の中へ入れておかなければならない。

 需給を左右するものは業績の変化、将来の業績を押し上げる材料の出現が挙げられる。材料は新技術・新製品、資本の移動(合併、買収、提携、増減資・分割)、株主政策(増減配、優待)、国際要因(為替変動、国際商品市況、国際紛争、国際会合、各国の政策)、政治体制、国の政策、取引所・金融庁の各種規制、天候、事件・事故などが挙げられる。こうした材料はそれまでの需給関係を一気に変化させる要因になる。材料が与える影響については次の第8講で説明していく。

 業績が好調というのは基本的に株価を左右する上で重要な要素であるが、常に、好業績だからといって株価は上がるものではない。それは需給との組み合わせと市場の流れに合致する材料をどれだけもっているかで大きく上がるのか、小幅上昇で止まるのかが決まる。

 誤解してはいけないのは業績を無視して、材料だけや需給だけで銘柄選択した場合には上昇しても一時的に買われてもいつの間にか元の水準に戻ってしまう。つまり、持続性に弱いわけだ。それに対して業績面で好調という条件を満たした場合には持続した上昇を期待できる。その辺りを考慮して銘柄を選択しなければならない。

 業績、材料、需給それに時流が重なったときには株価は大相場に発展する。どれが欠けても大きな相場にはならない。強引に仕手筋が相場を押し上げようとしても、人為的なものは限界があり、仕手筋がからむ銘柄には手を出さないことである。これも是非、頭の中に焼き付けておくことだ。

高収益低成長は上げに限界

さて、業績のいろんなパターンの説明に戻ろう。好業績は株価形成の上で絶対に欠かせないものとの説明を続けてきた。高収益だが、小幅の増益を毎期繰り返している銘柄はどうだろうか。食品、医薬品、小売りの業種にはそうした銘柄がいくつかみられる。食品株を例にとれば、ヱスビー食品、キューピー、ハウス食品、カゴメ、アオハタ、加ト吉、日清食品などだ。いずれも高収益で小幅増減益を繰り返している。こういう銘柄の特色は確実に収益を上げられる強い商品をもっているが、それに代わる新製品がでていないために、高収益低成長に甘んじているわけだ。いわゆる成長時代が終わり、成熟商品となって安定期に入っている状態にある。

株価は先に指摘したように将来の利益成長を織り込んでいくものである。成熟商品で利益が構成されていることは利益がいくら確保しても株価の魅力は薄いとみるべきなのだ。ただ、現在のように不況期の真っ只中にある場合には不安要素が少ない分だけ関心が集まりやすい。そのために、株価は全体が下落を続けている中にあって、大きく値崩れすることがない。ボックス相場を維持できる。

 外国人投資家が成熟企業は新しい分野に積極投資をしないのならば、ぬくぬくと収益を内部留保せずに株主に高配当すべきだと痛烈に経営姿勢を批判する。その通りである。もしも、配当を現在の2倍以上にすれば、投資妙味も膨らむために株価は上昇することが考えられる。

したがって、高収益低成長の銘柄は割安だとして、積極投資を考えないことである。

逆に、低収益高成長の銘柄はどうだろうか。ヒットする商品が飛び出し、現在は収益が低く、高レシオに買われているが、3年先には大きな収益が出せると予想できる銘柄だ。これは現在のレシオを無視してよい。全体の平均レシオが10倍の時に、15倍とか20倍に買われても、3年後には収益が追いついてきて、10倍程度になる。その意味では決して割高とはいえないのである。

しばしば、大手の経済紙に投資相談として、高レシオの銘柄について、割高だと解説して投資行動を慎むようなことを言っている。それは大きな間違いである。成長性が限界の銘柄ならば、高レシオであるが、今後、高収益を見込めるのであれば、高く買われて当然なのである。株価は過去を評価しないのである。将来の収益増大に対して評価するのである。

第6講 銘柄の選択2 ヒット商品、新技術を重視

好奇心をもって見よ

2002年に話題を集め、ヒットした商品はデジタルカメラ(デジカメ)、DVDプレーヤーなどが挙げられる。デジカメは凄まじい勢いで伸びた。何と、世界で66%増の2455万台も出荷されている。今年の1~6月では世界で倍の伸びをみせた。この勢いで今年は3700万台と50%増に達する見方がでている。生産能力はソニー1000万台(前年550万台)、キャノン750万台(同400万台)、オリンパス750万台(同450万台)、富士フィルム700万台(同450万台)、ニコン500万台(同300万台)、ミノルタ200万台(同100万台)、カシオ280万台(同140万台)、ペンタックス160万台(70万台)とデフレ不況下での日本の各メーカーは一斉に生産量を大幅にアップさせる。この生産量を合計すると4300万台になる。

これだけの増産体勢を敷いても、レンズの供給がついていけないために、各社はレンズの争奪戦に走っているという。レンズの

供給大手はタムロン。昨年は600万台分のレンズを供給したが、今年は900万台分を供給する。デジカメ1台分には6枚程度が平均必要とされているため、今年は約5400万枚の供給になる。コニカも今年6月からガラスレンズを月270万枚と50%増産し、来年からは400万枚に増産し、プラスチックレンズをそれまでの月100万枚を220万枚に、来年には400万枚にする。

レンズは携帯電話向けのレンズの需要もあり、いくら増産をしても足りないという。

かつて、世界での一眼レフの販売ピークが3500万台であったが、すでに、1~9月で2700万台を突破しており、確実にそれを抜くことになる。すでに、国内では高機能でありながら価格が低下し、過剰生産の懸念がでているが、海外向けはほぼ倍のペースが続いており、とにかく、デジカメには勢いがついており、今年もヒット商品であることは間違いない。

その関連企業の業績も軒並み好調だ。最大手のソニーはこの商品に関しては好調だが、パソコン、ゲームの落ち込みをカバーできず、04年3月期は51%の連結経常減益を予想している。業績の寄与度の大きいオリンパス、富士フィルム、コニカミノルタ、キャノン、ニコンなどは軒並み大幅増益か、大幅黒字転換となっている。

ニコン 67億赤字→90億円

オリンパ 524→ 600

富士フィ1205→1680

コニカミノ324→ 455

キャノン12月決算3300→4400

(左数字03/3、右04/3予想)

中でもタムロンの業績は凄まじい。カメラ本業以外のデジカメへのレンズ供給が劇的な伸びを示したことでここ3年の収益の変化は倍々どころの伸びではなかった。

01/12  04億2600万円

02/12  28億5900万円

03/12  51億円(予想)

      (連結経常利益)

となっている。その株価の動きも順調そのもので02/12月時の予想が発表された時点で動意づいて以後上昇ピッチが続いている。すなわち、02/2月の330円の株価が03/10月には高値6430円をつけた。実に、20倍近い上昇である。02年の相場は夏以降全体の株価が下落に拍車をかけたにもかかわらず、同社株は上昇を続け、年末には1000円台をつけている。つまり、時の大ヒット製品の銘柄は全体の下落にも響かず、独自の展開になる。その典型となった。

一方、DVDプレーヤー(レコーダーを含む)だが、02年は97%増の337万台の出荷となり、今年は450万台を見込む。そのうち、レコーダーは昨年62万台であったが、03年は世界で5倍の300万台以上の出荷が予想され、04年には800万台以上が見込まれている。すでに、DVDの再生専用機は世界で5000万台の普及があるが、まだ、日本以外での普及はゼロに等しく、来年から販売に加速がついてくる。

て、レコーダーのシェア40%とトップの松下電器は生産台数を2.5倍の120万台までアップさせ、同20%のパイオニアも60万台と3.5倍もアップさせた。録画方式が松下とパイオニアでは違うが、ここ数年間で松下のROM方式が圧倒的なシェアを奪ったことになる。

液晶テレビ、PDP(プラズマディスプレイパネル)などの薄型TVも順調に伸びている。液晶TVが先行して普及し始めている。02年は初めて100万台に乗せており、03年は300~380万台と激増が予想されている。PDPも成長ピッチが早まっている。02年には40万台の出荷だったが、03年には80万台へと躍進する見通し。液晶に比べて価格が数十万円と高価なために、普及ピッチが遅い。DVDの普及に伴って、DVDビデオカメラも03年から増加傾向が強まりだした。02年は15万台の出荷だったが、03年には50万台へと急増する見通しにあり、05年には200万台を超えると推定される。

デジタルテレビも今後のヒット商品となりそうだ。2011年には全面的なデジタル本放送が始まるが、その前に年末から東京、大阪地区などで先行してデジタル本放送がはじまり、事実上のデジタル時代が幕を開けることになる。それに伴って、アナログ放送TVはテレビは使用できなくなり、デジタルテレビの普及は毎年普及ピッチに加速がついてくることが予想される。

03年のヒット商品のデジカメ、DVD、薄型TVはすべてデジタル製品ということになり、デジタル時代にマッチした製品になり、今年、来年にも好調を持続することが予想される。

以上のようにデフレ不況下の中でも爆発的なヒットを飛ばす新製品が見いだすことができた。そうした、製品のメーカーの中で業績へのインパクトの大きい企業の株価は必ず、大きく買われている。

すでに、紹介したデジカメの企業はタムロンばじめ、オリンパス、コニカミノルタなどは下落相場基調の中でも大きく水準訂正されていることで明らかである。

松下電器はDVD、シャープは液晶TVのシェアトップであり、ヒット商品をもつ会社として04年3月期の業績は74%連結経常増益、31%同増益と予想している。株価も今年後半にかけて上値を追っかけていくことになりそうだ。それに対して、ヒット商品のウェイトの低いソニーの業績は04年3月期には51%同減益を予想している。全体の相場が春先から押し上げる相場展開の時にはツレ高したが、その後株価は低迷したままになっており、ヒット商品をもつ銘柄と明暗を分けている。

どんな相場状態が悪くてもヒット商品をもつ銘柄は逆行高する上に、長期にわたって人気を持続できるという特徴をもっている。もちろん、市場規模の小さいものよりも、大きな市場に育つものを選ぶことを忘れてはならない。その中からヒット商品の寄与度の高い銘柄が最も大きく買われることになる。

自分の常識を大切に

ヒット商品を探すことはなかなか難しいと思われる方もおられるが、自分の常識を大切にすることで探すことは誰でも簡単にできる。それと日頃から何でも見てやろうという好奇心をもって情報を集めることである。

 例えば、デジカメ。これまでの一眼レフカメラと比べて、簡単で自分で画像編集ができる。動画も写せるようになったなどと小型で、高性能で、価格も安い。これはあなただけがほしいと思っているのではなく、皆がそう思っているのだ。そういう商品はヒットする可能性が高い。更に、ヒット商品の条件は生産する側にとってもメリットがあり、消費者も満足できるという両方に満足感が満たされなければ、大ヒットしない

 生産者側だけの都合で作った製品は消費者を無視するために、販売しても限界がある。また、消費者だけが満足しても、それが生産者の利益につながらなければ十分な供給が難しくなる。現在、普及途上の太陽光発電装置はその例であろう。

 電気代が助かるという消費者にとって欲求を満たすには十分な商品にも関わらず、価格が小型乗用車並みであり、普及スピードは遅い。一般家庭の年間電気代は概ね30万円と推定される。家族も多くて電化製品を多くしようする家庭では80万円程度かかるであろう。3㌔ワットの太陽光発電装置は150万~200万円。耐久年数が20年で、現在の年間電気代ならば、10年未満で償却できるため、残り10年以上は電気代がタダになる。その意味では普及にスピードがかかっても良いのだが、今一歩、普及が進んでいない。これは電気代がタダになるといっても、当面の資金が150万円以上もかかるために、踏み切れないようだ。そのため、2000年時点で発電量は32万㌔ワットと原子力発電所0.3基分に止まっている。しかし、05年購入に際して補助金が打ち切られるが、その時までに100万円(3㌔ワット)を切るとみられ、補助金なしでも普及に拍車がかかるとみられる。2010年には500万㌔ワットと原子力発電所5基分まで普及し、2030年には8000万㌔ワット(同90基分)まで普及するとみられる。その頃には太陽光発電装置は30万円(3㌔ワット)程度まで下落していることになる。約400万世帯までの普及だ。

 このように、便利だが、価格が高いために、普及ピッチが遅いものには株価面での人気が付きにくく、新しい技術だからといって、その関連銘柄を買うことは必ずしも成果が上げられるものではない。

 ヒット商品を見つける方法のひとつとして、テレビのコマーシャルをみるのもひとつの方法である。いつみても、コマーシャルを流している自動車、携帯電話、日用品、消費者金融、食品飲料などを別にして、最近は「このコマーシャルが目立つなあ」と思えば、その製品はヒット商品である。よく売れているからコマシャルを出す余裕があるのだ。そこで、その会社の株価をみるのだ。ジワジワ上がり始めていることが分かれば、その銘柄を買ってみようという行動を起こす。ぼけっと「このコマーシャルが面白い」とただ、笑っているだけではダメなのである。

 身近な情報源でヒットを知る方法がテレビだが、更に、簡単にヒットを知ろうと思えば、新製品が発売された時にすぐに買ってみることである。自動車やマンションなと゛の高額商品は別にして、20万円以下の製品はなるべくすぐに買って使うことである。そして、自分が良かったと思うものであれば、それはヒットにつながっていく。常識的に客観的にみて、判断すれば良い。自分が面白い、便利などという感覚をもてば、他の人たちも同じことを感じていることをよく知ることである。

 好奇心をもつことも自分の好き嫌いで判断しないで、「なんでだろう~」という漫才師の流行語ではないが、常に、どうして、なぜということを考えて、物事を判断することを心がけることである。

新技術は業績と相談

ヒット製品はズバリ業績を大きく押し上げるために、強気姿勢で買い作戦に臨んでも良いが、新技術などすぐに、業績に寄与を見込めないために技術だけをみて必ずしも、強気で対処してはいけない

 例えば、画期的な制ガン剤を開発した医薬品会社は一時的に急騰するが、その後はサッパリ動きが鈍くなることがある。将来、ガンをなくしてくれる大物薬であれば株価が高くなって当然と思い、下落過程でナンピン買いを続ける投資家がおられる。下落するたびに、「なぜだ」と叫ぶのだが、株価は一向に反応しない。

 その理由は市場の人気が医薬品銘柄に全く眼が向いていない場合、その開発会社の現状の業績が低収益で、減益見通しにある場合、すでに、別の材料で相当買われていたところでその材料が飛び出したなどの場合には持続的な上昇が難しいケースもあると考えるべきである。

 新技術は実用化されるまで、時間的なギャップがある。医薬品などは基礎実験の時には画期的であっても、臨床試験を進めている過程で期待されたほどの効果がなかったというようなことはザラにある。また、研究途中にそれを上回るような製品開発が飛び出すこともある。果たして、そうなると発売できるのかどうか判断がむずかしくなる。そのような懸念が残る場合、その材料だけで理想買いすればリスクが高くなる

 特に、業績の悪い銘柄や収益力のない銘柄であれば開発負担がモロに収益を直撃する。しかし、業績が好調で収益力のある企業であれば、その負担も株価の下値不安も薄れる。したがって、技術だけを理想買いする時には好業績銘柄の場合に絞り込んで、対応することが望ましい。

 再生医療で最近話題を集めているアンジェスエムジー。肝細胞増殖因子(HGF)というタンパクを作る遺伝子を使って下肢の末梢性血管障害を治療する遺伝子治療に取り組んでいる。米国でその臨床に入ったが、国内でも臨床試験に入る。07年に製品化を目指すというもの。会社の売上げはゼロで提携先の第一製薬から開発協力金の供与が売上げになっている。今年から臨床試験が重なるために、赤字幅は今期も拡大が続く。

 株価は03年初の40万円程度から1か月も経たずに132万円の高値をつけた。完全に理想買いだけの典型例である。筆者はかつて制がん剤などの夢の新薬開発をしていた大日本製薬、持田製薬、科研製薬などを詳細に取材し続けたことがある。しかし、結果として、ことごとく夢に終わり製品化することはなかった。アンジェスの再生医療を実現する遺伝子治療は果たして、商品化して大きな利益を生むかどうか見ものである。そう考えると理想買いだけで株価が大きく化けて現状の利益が全くない状態の銘柄は深く追うことは危険である。発売できるメドがついてから判断しても遅くない。

 余談になるが、同じ再生医療の理想買いを演じた銘柄として日本ケミカルリサーチがある。大阪市場第2部銘柄である。この会社の提携先にオサイリス社(米国)が再生医療で常識を覆すような開発に取り組んでいる。骨髄細胞の中にごく微量含まれる間葉系幹細胞(MSC)を、例えば、心筋梗塞の心筋に投与すれば、心筋細胞を増殖させて心拍数を数ヶ月後にはほぼ正常に戻すという。ブタの心筋でそれを確認しており、将来ヒトでの試験でも有望視されている。そこで、驚かされることは他人のMSC細胞を投与しても拒絶反応がないというのだ。しかも、体内には微量しかないが、大量培養が比較的容易という。応用は心筋だけに止まらず、あらゆる臓器にも応用可能という。来年から米国では試験に入る予定という。これが実際に、実用化されると提携先の日本ケミカルの株価は大きく見直されることになりそうだ。

 株式は夢を買うものである。「こういうことができればよいなあ~」とか、「あんなことができれば楽しいなあ~」という夢を実現させた銘柄は大きく買われる習性がある。しかも、独自で開発した企業ほど大きく買われるものである。

 夢を実現し、実現した製品がここまで伸びるというような現実の予想が噛み合うほど良い。典型例は任天堂である。

 すでに、任天堂と聞けばファミコンとすぐにイメージが浮かぶようにゲームの代名詞になっている。ファミコンは1983年に発売している。それまでのTVゲームはもっぱら業務用が中心で、インベーダーゲームが爆発的な人気を集めていたことで皆さんよくご存知であろう。1978~80年ころのことで任天堂もそちらに力を入れており、「ドンキーコング」「マリオブラザーズ」などの人気ゲームを出していた。

 その後、業務用から家庭用に向けて方向転換し、1980年に家庭用ゲームの「ゲームウオッチ」を発売する。これが大当たりし、そこで稼いだ資金を投入し、ファミコンを3年後の83年に登場させて、以来、20年にわたって「スーパーファミコン」「ゲームキューブ」へと発展していく。マーケットも日本国内だけから米国、欧州へと広がりをみせていく。

 その間の業績はまさにドリームと呼ぶにふさわしい展開だった。

決算期  売上げ  経常利益

1979/8  152     14

 82   575    177

 85   772    223

 88   1786    500 

  91     4509       1403※

  93     5670       1637

(単位.億円、※.決算期3月に変更)

「ゲームウオッチ」発売前の79年の業績が「スーパーファミコン」投入後の業績までの推移を表したものだが、実に、その間の売上げは37倍、経常利益で116倍という凄まじいものになった。株価も80年のゲームウオッチ発売直後が500円前後だったが、まず、そのヒットで82年に高値3530円まで買われる。そして、「ファミコン」発売後、5月4000円台に乗せた後、ほぼ一貫して上昇を続け、90年8月に34300円の史上最高値をつける。それ以後、売上げは一旦、3000億円台まで落ちるが、携帯ゲームで盛り返し5000億円台まで戻す。しかし、株価は最高値を以後、更新することがなく、現在に至っている。

 このように、自社開発製品で市場を新たに創造し、しかも、巨大な市場を作り上げた企業は長期にわたって株価は上昇を続ける。

 日頃からどんなものにも興味をもつて物事をみることを心がける

ことはお金を拾うようなものであると思うべし。

 ちなみに、任天堂だが、すでに成長は終わっており、長期低落傾向に入ったとみている。5000円台まで下落傾向が続くのではないか。

 最近の取材で1万円相場に発展する銘柄に出会った。

 ジャスダック市場に登録されている「アーク」という銘柄だ。現在は7000円前後で推移しているが、1万円に乗せる素質を有している。04年3月期は1株利益220円程度になると予想されるが、05年には370~400円に乗せる見通しをもっている。この会社売り上げが200億円に乗せた01年に05年には1000億円の計画を策定している。04年に714億円を見込むが、05年には1000億円乗せは余裕で達成できる見通しというのだ。

 自動車、ハイテク業界から試作品の製造を一手に引き受ける珍しい事業を柱にしている。デザイン→設計→成形→金型に至るまでの一貫システムを作り上げ、低コスト、迅速をモットーに大手各社に取り組んでいる。同時に金型企業を買収し日本一の金型集団を形成するまでになっている。国内だけでなく、海外のメーカーにも食い込んでおり、来期以降も高い成長に自信をもっている。1株当たり利益300円以上で20%以上の成長性、オリジナル分野で強みの条件を揃えている銘柄は1万円以上の素地があるといわれており、同社はその条件を揃えている